【ウェビナーQ&A】 7月29日開催 70歳就業時代の到来で加速する退職金・企業年金の再定義と設計の見直し
2021年7月29日(木)に開催いたしましたウェビナー『70歳就業時代の到来で加速する退職金・企業年金の再定義と設計の見直し』で参加者の皆様からお寄せいただきましたご質問と回答をご紹介いたします。
セミナープログラム
テーマ:70歳就業時代の到来で加速する退職金・企業年金の再定義と設計の見直し
- 第1部:70歳就業時代にふさわしい退職金・年金制度のあり方と制度設計
70歳就業時代を迎え、定年延長や継続雇用制度拡充の検討・意思決定にあたっては、退職金や企業年金の見直しも必要不可欠です。
本セッションでは、定年延長にあたっての退職金の見直しパターンや人件費への影響のほか、キャリアの多様化を踏まえた退職金・企業年金制度設計の考え方や事例について解説します。 - 第2部:質疑応答
皆様からお寄せいただきました質問に講師がお答えするコーナーです。
ウェビナー情報詳細
- 日時 : 2021年7月29日(木)16:00~16:45(視聴開始15:55)
- 会場 : ウェブセミナー(Microsoft Teamsライブ配信)
- 講師 : 向井 洋平(クミタテル株式会社 代表取締役社長 年金数理人・AFP) 講師プロフィール
ウェビナーQ&A
No. | 質問 | 回答 |
1 | (1)65歳を起点にした場合、現在だと年金5年繰上げ受給で▲0.5%×60か月=▲30%、5年繰下げ受給で+0.7%×60か月=+42%です。年金支給開始年齢が70歳になった場合、どうなるのでしょうか。 (2)失業給付基本手当をみると、現在だと64歳11か月で退職すると150日、65歳は基本手当がなくなり、高年齢求職者給付金として基本手当の30日しかでませんが、今後はどうなるのでしょうか。 |
(1)公的年金制度では65歳を「支給開始年齢」と定めていますが、ご質問のとおり繰上げ受給(受給開始を65歳よりも早める)や繰下げ受給(受給開始を65歳よりも遅らせる)が可能であり、65歳から受給開始する場合の金額を基準として繰上げまたは繰下げの期間に応じて年金額を増減させる仕組みになっています。この基準となる年金額は、支給開始年齢を動かすことなく長期的な財政の均衡が保たれるように平均余命の延びや被保険者の減少に応じて自動的に調整される仕組みになっていることから(マクロ経済スライド)、支給開始年齢が70歳になった場合を想定すること自体があまり意味のないことだと言えます。 (2)ご質問のとおり、65歳以上か65歳未満かで失業給付の内容は異なるとともに、65歳未満は年金との併給ができない一方で65歳以上は両方受け取れるという違いがあります。65歳以降は年金が満額支給されることもあり、就業希望や就職に至る経路等も多様で65歳未満の仕組みをそのまま当てはめるのは実態にそぐわないことからこのような違いが設けられています。今後も65歳以降の就業や年金受給については個々の状況に応じて多様な機会や選択肢を用意する方向に進んでいくと考えられることから、失業給付についても基本的な枠組みは当面変わらないものと考えます。 |
2 | 定年延長を行う場合、正社員として雇用する期間が数年間(たとえば、60歳定年から65歳定年へと延長の場合、5年間)延びるため、どうしても人件費は増額する。また、定年年齢が数年(同例の場合、5年)後ろ倒しになるため、退職給付制度の見直しも求められる。 この2つの課題を同じプロセスで検討した方が良いと考えており、その理由のひとつが、増加する人件費の捻出元として退職給付制度を活用できるのではないかと考えているが、この考え方は適切であるか、お伺いしたい。 |
ご質問のとおり、定年延長時の人件費の問題は退職金の見直しもセットで考えるのが適切です。退職金の給付設計や人員構成、退職給付債務・費用の計算前提等によりケースバイケースですが、退職金の原資の一部を賃金改善に充てることができる場合があるので、退職給付制度の見直しの選択肢とそれぞれについての財務的な影響を確認しておくことが重要です。 |
3 | 継続再雇用は一旦雇用契約は清算されるので、退職金は60歳迄で再雇用者には退職金がなくても良いと思いますが、定年延長の場合、雇用関係は継続されるので、退職金も定年迄延長する必要があると思いますが、違うのでしょうか? | 定年延長後の退職金の支給時期は60歳時点(旧定年)ではなく、実際の退職時とするのが原則的な考え方です。ただし、支給時期が後倒しになるという社員の不利益を勘案して定年延長後も経過的に60歳支給のままとするケースもあります。この場合、60歳時点で支給する退職金を税制上退職所得として取り扱ってよいか、またその要件は何か、あらかじめ税務署等に確認しておくのがよいでしょう。 |
4 | 定年延長を検討しています。今のところ退職金は従来通り変更せず、60歳で固定することで議論を進めていますが、退職金について社員説明や就業規則の変更は必要でしょうか。 | 退職金の額は変わらないとしても、例えば定年延長に伴って退職金の支給時期がいつになるのかといった点については説明が必要でしょう。退職金に関しては就業規則本体とは別に退職金規程等で定めるケースが一般的ですが、60歳時点で金額を固定して定年時(退職時)に支払うこととするのであればその旨を規定する必要があり、変更が必要となります。 |
5 | 再雇用制度を設けており、今後も継続しようと思っていますが、嘱託社員のモチベーションが低下していることもあり、現役世代よりも低い水準ではありますが、退職金をつけることを考えています。 この場合、今まで嘱託期間を遡って支給する必要はあるのでしょうか。 |
必ずしも遡る必要はありませんが、その場合は「退職時の給与×嘱託社員としての勤務期間(ただし退職金制定前の期間を除く)」というような退職金額の決め方よりも、「今後、給与とは別に毎月〇〇円を退職金として積み立て、再雇用期間終了時に支給します」といった決め方、伝え方のほうが理解や納得感を得やすいかもしれませんね。 |
6 | ずばり60歳以降で退職金をつける場合、お勧めの制度があれば教えてください。 | 一概には言えませんが、DCを実施している場合は65歳まで掛金拠出を継続し、これを60歳以降の退職金と位置付けるのが有力な選択肢となるでしょう。退職給付債務の増加を抑えられることに加え、給与との選択制も取りやすいためライフプランに応じて受け取り方を選んでもらうような設計も可能です。 |
講演資料ダウンロード
講演資料はこちらのフォームからダウンロードいただけます。
出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう
労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。
シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。