出口から逆算して考えるthink from exit
中長期の雇用を前提に考えたとき、社員の採用から退職までのサイクルは次の5つのフェーズに分けることができます。
(1) 採用
自社の経営理念、人事戦略、要求スペックに合う人材を社外から確保する。
(2) 育成
採用した社員に対して教育訓練を行い、事業推進に必要な能力を習得させる。
(3) 定着
習得した能力を発揮し、事業推進の中核を担う。
(4) 自律
退職後のキャリアを見据えた準備を促す。
(5) 退職
人材を社外へと送り出し、次のキャリアをスタートさせる。
人手不足が大きな経営課題となっている昨今、人材の確保や育成、定着をどのように図っていくかに注目が集まっていますが、イグジットマネジメントの観点からは(5)の退職から逆算して考えていきます。
すなわち、最後にどのようにして社員を送り出したいのかをまず考えます。もし、働く意欲がある限り自社で職業人生を全うしてもらいと考えるのであれば、(4)の自律フェーズに対する手当てはあまり必要ないでしょう。その一方で、年齢にかかわらず(3)の定着フェーズにとどまれるような仕組みや組織でなければなりませんし、状況に応じていつでも(2)の育成フェーズに戻れるようにしておくことも必要かもしれません。
これに対して社員の「若さ」を維持することが求められる企業では、より早い段階で(5)の退職フェーズを迎え、転職や独立など次のキャリアを目指してもらうことになります。したがって(4)の自律フェーズへの取り組みは必須ですし、それ以前のフェーズにおいても社外でも通用するような人材を育てていくという視点が求められます。
少子高齢化や長寿化が進む一方、終身雇用が成り立たなくなってきている日本社会においては、人生の後半戦をいかに充実させていくかが今後ますます大きな関心事になっていくことでしょう。そうした中で、退職後を見据えたキャリアプランやライフプランを見通せるようにしておくことは、人材の確保や育成、定着にも大きく関わる重要な課題だといえます。