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退職金とはLearn

退職金とは、退職した従業員や退任した役員等に支払われる金銭のことで、「退職手当」、「退職慰労金」、「退職年金」など、さまざまな呼び方や支給方法があります。
退職金は、退職後の生活保障や従業員の雇用確保を目的として最盛期には90%を超える企業で導入されていた賃金制度ですが、現在は約70%台まで導入数が落ち込んでいます。
退職金の導入や見直しを検討する前に、退職金の仕組みや種類、設計方法等を学んでおきましょう。

退職給付制度とは

退職給付制度とは、退職金の支払いを確実にするために定められた仕組みや決まりごとをいいます。一般的には退職金制度と呼ばれています。
日本では、退職一時金制度のほか、確定給付企業年金制度や中小企業退職金共済制度など、目的や支給形態によってさまざまな制度が存在し、会社によっては、どれか一つだけではなく、複数の制度を組合せて導入していることもあります。

退職金は、給与と異なり必ず従業員に支払わなければならないものではありません。
そのため、会社によっては退職金がないこともあります。
任意の制度なので、退職金の支払いの有無や、金額などの諸条件は、会社(事業主)の裁量に委ねられています。
しかし、いちど退職金を支払うことを決定し、労働条件として労働契約や就業規則等によって支給要件が明確に定められた場合は、賃金として法的な支払い義務が生じるため、労働基準法で定められた厳格な支払い原則が適用されることになります。
ちなみに、就業規則の定めや退職金規程がない会社でも、慣行として退職金を支払っている場合は、支払義務が生じる可能性がありますので注意が必要です。
このような、退職金の仕組みや決まりの事を「退職給付制度(退職金制度)」といいます。

一般的に退職金と聞くと退職時にまとまったお金を一括で支給する事をイメージしますが、一定の期間で(あるいは生涯にわたり)分割し年金として支給するものもあります。
前者を退職一時金制度、後者を退職年金制度(企業年金制度)と呼びます。
退職一時金制度は差別的な取扱いがなければ設計の自由度が高く、会社によって多種多様な設計がみられます。
一方、企業年金制度は税制優遇や受給権保護の観点により、法律・法令等によって設計に一定の制約がかけられています。

退職金は一時金か年金かという支払方法だけではなく、退職金に対する責任の範囲により確定給付型と確定拠出型に分類されることもあります。
詳細は下記の通りですが、確定給付型は会社が将来支払う退職金について責を負うもので、確定拠出型は会社が定期的に支払う掛金について責を負うものです。
確定給付型の場合、退職金は給与と比べて高額となることもありますので、社員の退職に際して退職金が払えないということがないように、事前に準備しておくことがとても大切です。

1確定給付型
勤続期間や給与水準等にもとづいてあらかじめ退職金の金額が定められているのが確定給付型です。会社は約束した退職金を賄うために、内部留保による積立や外部積立を行います。外部積立を行う場合、資金を積み立てると同時に資産の運用を行いますが、運用が低迷等により積み立てておくべき資産が足りなくなれば、会社は掛金を追加拠出して不足分を解消しなければなりません。
2確定拠出型
確定拠出型は拠出した掛金とその運用収益から事後的に退職金が定まる制度です。企業は掛金を払い込むところまで責任を負い、運用は自己責任のもと社員が行います。つまり確定給付型とは異なり運用リスクを加入者である社員が負います。ただし会社には投資教育など加入者への運用支援をする義務があります。 また、中小企業退職金共済制度のような共済制度も、会社が給付の責任を負わないことから、確定拠出型に分類されます。
退職給付制度の種類

退職給付制度の種類は、大きく退職一時金制度と退職年金制度の二つに分かれます。
諸説ありますが、日本の退職金は江戸中期の「のれん分け」がはじまりといわれており、今の退職金が形作られたのは戦後復興期で、当時の退職給付制度は退職一時金制度のみでした。 その後、時代のニーズにより、厚生年金基金制度、適格退職年金制度(現在は廃止)、確定給付企業年金制度などの退職年金制度が生まれ、退職金を自分で運用する確定拠出年金制度が登場するなど種類は豊富です。

退職一時金制度とは、従業員が退職する際に、規程に定められた金額を会社が直接一括して支払う制度のことをいいます。
規程は就業規則、給与規程と別に作られる事が多く、「退職金規程」、「退職一時金規程」、「退職手当金支給規程」など呼び方は会社によってさまざまです。
退職一時金制度の原資は、外部積立(会社の資産と切離されて管理される積立方法)といった事前準備はせず、退職者が発生した都度、内部留保や資金調達によりまかないます。 税制としては、退職金を支払たった際に全額を損金算入します。
そのため、例えば現預金等を計画的に積み立てても、その積立金は損金として認められず、事前準備に対する税制的なメリットはありません。
養老保険を活用しハーフタックスプラン(福利厚生)による損金算入が認められることもありますが、自社の退職金制度と合わない事もありますので、利用する際は注意が必要です。 退職金の給付設計は自由度が高く、差別的な取扱いがなければ、会社の人事戦略(出口戦略)を反映させることが可能です。
例えば、確定給付企業年金制度では最低3年以上勤続した場合は退職金を支払わなければなりませんが、退職一時金制度ではこうした制約がありません。
こうした自由度の高さから、セカンドキャリア支援や早期退職者優遇制度など、退職者の促進施策としても使われる制度です。

確定給付企業年金制度とは、確定給付企業年金法を根拠法とする企業年金制度で、略してDB(Defined Benefit)とも呼ばれます。
確定給付企業年金は、会社と契約した金融機関(受託機関)が運営・管理を行う規約型と、会社から独立した基金(企業年金基金)を設立し運営・管理を行う基金型の2種類があります。 なお、確定給付企業年金制度では、制度に加入している従業員の事を加入者、年金の受給資格を有した退職者を受給権者と呼びます。
会社は積立計画に従い掛金を金融機関等に払い込み、金融機関から加入者等への退職金が支払われます。
支払った掛金は全額損金算入され、年金資産に対しては特別法人税(税率1.173%)が課税されることになっていますが、1999年以降は凍結されており、税制的なメリットを受けながら効率的に積み立てることが可能です。
支払った掛金及び運用益は外部積立(年金資産)として会社の資産と切離されるため、たとえ会社が倒産したとしてもその資産は会社に戻されることなく、退職金の支払い原資としてしっかりと保全されます。
確定給付企業年金法制定の最大の目的は受給権の保護であり、継続基準・非継続基準による財政検証の結果、基準に抵触した場合は追加掛金を拠出するなど厳格な積立義務が課せられているほか、受託者責任や情報開示などの義務も生じます。
給付設計については、老齢給付金(年金給付)と脱退一時金の給付を行う必要があり、老齢給付金の支給要件としての加入者期間は20年を超えないこと、脱退一時金の支給要件としての加入者期間は3年を超えないことなど制約があります。なお、老齢給付は、5年以上の有期年金もしくは終身年金とすることとなっています。

制度の運営形態

確定拠出年金制度とは、確定拠出年金法を根拠と企業年金制度です。略してDC(Defined Contribution)と呼ばれたり、米国由来の名残で日本版401kとも呼ばれます。
確定拠出年金制度は、「企業型」と「個人型」の2種類に分かれ、個人型はiDeCoと呼ばれます。企業型では企業が確定拠出年金制度の実施主体となって、従業員を対象に掛金を拠出し、iDeCoでは国民年金基金連合会が実施主体となって各加入者が掛金を拠出します。
加入者は自己責任のもと年金資産の運用を行い、老齢期にその運用成果にもとづいた給付を受け取ります。
企業型の場合、企業は労使合意のもと「企業型年金規約」を定め、その規約について厚生労働大臣の承認を受けます。
掛金は企業から従業員を対象に拠出され、「資産管理機関」で企業の財産から分離・保全されます。一方、従業員はそれぞれ運用指図を「運営管理機関」に出します。
支払った掛金は全額損金算入され、税制的なメリットを受けながら効率的に積み立てることが可能です
退職金の給付設計は、自由度が低く、原則として60歳以降でなければ退職金を受取ることができません。
また、自己都合や懲戒等での退職金の減額することもできません。
60歳到達以降であれば、5年以上の有期年金または終身年金、規約で定めている場合は一時金として受取ることができます。受給は必ず70歳までに開始します。また拠出後すぐに受給できるような貯蓄に近いケースを避けるため、年齢に応じて満たさなければならない通算加入期間(運用指図期間を含む)が設けられています。

企業と関係機関とのイメージ図



確定拠出年金制度とは

中小企業退職金共済制度とは、単独では退職金制度や企業年金制度をもつことが困難な中小企業の従業員を対象にした共済制度です。略して中退共と呼ばれます。
中小企業の事業主は従業員を給付対象に掛金を拠出し、機構が積立金の運用・制度の管理・退職者への退職金支払いを行います。
支払った掛金は全額損金算入されます。
転職時においては、転職先企業に中退共があれば前の企業を退職した時点で退職金を請求せず、前の企業における納付実績を次の企業に引き継ぐこともできます。
給付設計については、共済制度のため自由度が低く、会社は掛金額を選択することぐらいで、自己都合で退職金を減額することはできません。

図 1

退職給付制度 検討

退職金は月に一度は支払わないといけない賃金と異なり、会社が任意で導入を決定するものです。しかし、一旦制度化して従業員等に周知してからは賃金としての性格を有し、会社が支払いを拒めないものになりますので、導入には慎重な検討が必要です。

既に退職金を設けている会社に導入した目的や理由ヒアリングすると、「人材の獲得(Recruit)」、「人材の定着(Retention)」、「離職の促進(Release)」という3つのRが回答としてあげられます。
また、少子高齢化・年金不安、人手不足などを背景に、「従業員の老後の生活保障」という回答も多く見られます。
導入した当時は、従業員に喜ばれ、他社との労働条件で優位に立てたこともあった退職金ですが、時間の経過と共に効果が失われつつあります。
今では採用の現場で退職金が語られることは少なく、退職金をもらえるはずの従業員も退職を意識するまでは退職金の存在を知らない事も決して珍しくありません。
こうした事態に陥らないためにも、退職金の目的や意義などを整理する事からスタートします。 そのため他の報酬制度や育成プランなどと照らし合わせ、もし、退職金が有効な手段でなければ、退職金以外のプランを検討します。

退職金の目的や意義などが整理できたら、それに見合う退職給付制度の種類を選択します。一つの制度で実現できなければ複数の制度の導入も検討します。
例えば、「技術の習得に時間やコストがかかるため10年間は勤続して欲しい」と考えた場合、勤続10年に対するインセンティブあるいは、10年未満へのペナルティを検討します。
ペナルティの代表的なものは、自己都合退職による退職金の減額です。
こうしたペナルティが効果的ということであれば、自己都合減額が可能な制度として、退職一時金制度あるいは確定給付企業年金制度を検討します。
また、人生100年時代に向けて、従業員の老後の生活不安を解消し、定年後も困らないよう金融リテラシーを向上させることを目的とする場合は、確定拠出年金制度を検討します。

退職金が任意の報酬制度である以上、支払う金額についても決まりはありません。
金額を決定する際に業界水準を調査することもありますが、重要なのは退職金の目的を達成すためにいくら退職金が必要になるかという観点です。
最低限「なぜその金額なのか?」その理由を説明できるようにしておきましょう。ただし、「同業他社がいくらだから、我が社もいくらにしよう」とするのはお勧めできません。
また、退職金は定年時に支払うイメージが強いためか「定年で辞めるといくら?」というように、定年退職がモデルとして使われる事が多いですが、定年にとらわれることなく社内でのキャリアのピークを退職金モデルのピークと重ねることも重要です。

一般的に退職給付制度の対象者となるのは正社員が多いですが、近年の人手不足の解消や、同一労働同一賃金の取組から、アルバイトやパート職員等の短時間労働者を対象とするケースも出始めています。
また、定年後再雇用をしている会社では、定年時に一旦退職金を支払い精算した後、再雇用時に新たな退職金の枠組みを検討する動きも出てきています。
退職金の対象者によっては、金額も制度も異なりますので、早い段階で検討します。

退職給付制度 コスト

退職給付制度を導入した会社は従業員に対し、退職金の支払い義務(負債)を負っています。
従業員が退職するまでは退職金は支払われることはありませんが、一般的に従業員の勤続年数が増えるほど、会社が支払うべき退職金の金額が大きくなっていきます。
企業会計ではこうした実態を、B/S、P/Lに適切に反映し、将来の退職金の支払いに備え管理していきます。
しかし、実際の支払額が確定するには従業員が退職する必要があり時間がかかるので、毎期の負担額を合理的に見積もり、企業間の比較可能性を向上させるためのルールとして、2000年に退職給付会計が導入されました。
退職給付制度を導入した会社は、退職給付会計に則り退職給付引当金、退職給付費用を計上します。

上場企業や大企業では企業会計原則に従い、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとして、退職給付に関する会計基準(企業会計基準第26号)及び退職給付に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第25号)に則り、退職給付引当金を計上しています。
しかし、中小企業においては、退職給付会計が煩雑なことや、財政状況へのインパクトを懸念して、退職給付引当金を計上していない会社も少なくありません。 この場合、退職給付に関する負債はB/S、P/Lに記載されないのでステークホルダーに認識されることはありませんが、なかには定年退職などで多額のキャッシュアウトが必要となり、資金繰りが悪化する事態に陥ることもありますので、将来、必要となる退職金をしっかりと把握するうえでも、退職給付会計の導入は必要です。

確定拠出年金制度や中小企業退職金共済制度などの確定拠出型の退職金制度は、労働サービスを提供する時期とその労働サービスに対してキャッシュを支払う時期が基本的に一致しており、かつ、労働サービスを提供する期の期末においてキャッシュの支払額が確定しているため、給与と同じような取扱いが可能となります。
つまり、給与と同様に、「労働サービスを提供する時期=その労働サービスに対してキャッシュを支払う時期」にそのキャッシュを費用として計上すれば良いことになり、退職給付引当金を計上する必要はありません。

退職金の設計においては「何歳でいくら退職金を支払うのか?」という事に注目されてしまいますが、上記のように退職給付制度の種類によって、会社が負担するコストの考え方や金額が大きく異なります。
退職一時金制度は対象者が退職するまで支払いがなく、極端に言えば導入時にキャッシュがなくてもはじめる事ができるというメリットがありますが、その一方で将来の退職金の支払義務に応じ退職給付引当金の計上が必要となり、決算業務の煩雑化や決算見込みのブレといったデメリットが生じます。
こうした点に留意し、将来確実に支払えることはもちろん、会計上の許容範囲で退職金を設計する事が求められます。

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