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退職金制度や支給水準に関する統計調査retirement benefits surveyent

退職金制度や支給水準に関する統計調査には様々なものがあり、調査対象や調査内容には異なる点があるため、調査結果の活用にあたってはそれらの違いを把握しておくことが重要となります。ここでは、3つの主要な調査の概要について紹介します。

(1) 退職金に関する3つの主要な統計調査
(2) 退職金の有無や採用制度
(3) 退職金の算定方式
(4) 退職金の支給水準

退職金制度の検討を行う際に参照される主な統計調査として次の3つがあります。

 
調査名 調査主体 調査対象 直近の調査時期
① 就労条件総合調査 厚生労働省 全国の常用労働者30人以上の民営企業 2023年
② 退職金・年金に関する実態調査 日本経団連・東京経営者協会 日本経団連及び東京経営者協会の会員企業 2021年
③ 中小企業の賃金・退職金事情 東京都産業労働局 従業員数300人未満の都内中小企業 2022年

① 就労条件総合調査は退職金に関する統計調査としては国内最大規模のものであり、大企業から中小企業まで幅広く対象としています。毎年、厚生労働省により労働時間制度や賃金制度を含む総合的な労働条件についての調査が行われており、退職給付制度に関する調査については概ね5年に1回の頻度で行われています。

② 退職金・年金に関する実態調査は日本経済団体連合会及び東京経営者協会が会員企業を対象として行っている調査であり、主に大企業における退職金制度の状況を表しています(直近の調査では集計企業の72.5%が従業員500人以上)。以前は隔年で実施されていましたが、2021年からは3年ごとの実施となっています。

③ 中小企業の賃金・退職金事情は東京都が都内の中小企業を対象に行っている調査であり、隔年で実施されています(賃金に関しては毎年実施)。中小企業の退職金に関する調査としては代表的なものとなっています。

上記のほかにも、退職金に関する統計調査として中央労働委員会による賃金事情等総合調査、人事院による民間企業退職給付調査などがあります。

① 就労条件総合調査(厚生労働省2023年)

 

制度の有無と形態(%)

 
企業規模 退職給付制度あり 退職給付制度あり(実施形態別) 退職給付制度なし
退職一時金制度のみ 退職年金制度のみ 両制度併用
1000人以上 90.1 23.3 24.3 42.5 8.8
300~999人 88.8 37.2 15.9 35.7 11.1
100~299人 84.7 51.1 11.2 22.4 15.1
30~99人 70.1 54.2 4.6 11.3 29.5
調査計 74.9 51.7 7.2 16.0 24.8
 

退職一時金制度の支払準備形態(複数回答・%)

 
企業規模 退職一時金制度あり(注1) 退職一時金制度あり(支払準備形態別)
社内準備 中退共(注2) 特退共(注3) その他
1000人以上 73.0 66.9 - 2.7 6.1
300~999人 82.1 65.3 12.2 5.6 10.6
100~299人 86.8 57.6 30.6 7.3 9.6
30~99人 93.4 46.3 45.2 10.3 8.3
調査計 90.4 51.1 37.9 9.0 8.7

注1:退職給付制度ありの企業のうち、退職一時金制度がある企業の割合
注2:中小企業退職金共済制度
注3:特定退職金共済制度

 

退職年金制度の支払準備形態(複数回答・%)

 
企業規模 退職年金制度あり(注1) 退職年金制度あり(支払準備形態別)
厚生年金基金(注2) DB(注3) DC(注4) 企業独自の年金
1000人以上 74.1 4.9 46.0 52.5 3.7
300~999人 58.1 5.7 32.3 33.9 1.1
100~299人 39.7 6.0 19.1 19.7 0.6
30~99人 22.8 6.0 8.2 10.4 0.9
調査計 31.0 6.0 13.7 15.6 0.9

注1:退職給付制度ありの企業のうち、退職年金制度がある企業の割合
注2:厚生年金基金は原則廃止となり、2023年3月末現在で存続しているのは5基金となっている。
注3:確定給付企業年金
注4:企業型確定拠出年金


上記の結果から、退職金がある企業における各制度の採用割合をまとめると以下のようになります。

企業規模 退職一時金
(社内準備)
DB DC   中退共 特退共 
1000人以上 66.9 46.0 52.5 - 2.7
300~999人 65.3 32.3 33.9 12.2 5.6
100~299人 57.6 19.1 19.7 30.6 7.3
30~99人 46.3 8.2 10.4 45.2 10.3
調査計 51.1 13.7 15.6 37.9 9.0

(「厚生年金基金」「企業独自の年金」「その他の制度」は記載を省略)


大企業では退職一時金(社内準備)DBDCの採用割合が高く、中小企業では退職一時金(社内準備)中退共の採用割合が高くなっています。

② 退職金・年金に関する実態調査(日本経団連・東京経営者協会2021年)

 

退職金制度の形態(%)

企業規模 退職一時金制度のみ 退職年金制度のみ 両制度併用 その他
調査計 15.9 10.3 66.1 7.1
 

年金等の種類(%)

企業規模 厚生年金基金 DB(注1) DC 中退共 その他
500人以上 1.1 77.2 74.5 - 0.5
500人未満 4.4 42.2 57.8 6.7 11.1
調査計 1.7 70.4 71.2 1.7 2.6
注1:基金型・規約型・「型」無回答の3つの回答を合計したもの


経団連の大企業を中心とした調査では、退職一時金とDB・DCを併用している企業が多くなっています。

③ 中小企業の賃金・退職金事情(東京都2022年)

 

制度の有無と形態(%)

企業規模 制度あり 制度の形態 制度なし 無回答
退職一時金のみ 退職年金のみ 両制度併用
調査計 71.5 72.5 4.8 22.7 28.3 0.2
 

退職一時金の支払準備形態(複数回答・%)

企業規模 退職一時金あり(注) 退職一時金の支払準備形態
社内準備 中退共 特退共 退職金保険 その他 無回答
調査計 95.2 62.0 49.5 4.5 11.6 6.2 0.4

注:制度ありの企業のうち、退職一時金がある企業の割合

 

退職年金の支払準備形態(複数回答・%)

企業規模 退職年金あり(注) 退職一時金の支払準備形態
厚生年金基金 DB DC 企業独自の年金 その他 無回答
調査計 27.5 14.1 43.2 52.3 2.0 5.5 2.5

注:制度ありの企業のうち、退職年金がある企業の割合


上記の結果から、退職金がある企業における各制度の採用割合を計算すると以下のようになります。

企業規模 退職一時金
(社内準備)
中退共  特退共  退職金保険   DB DC
調査計 59.0 47.1 4.3 11.0 11.9 14.4
(「厚生年金基金」「企業独自の年金」「その他」「無回答」は記載を省略)


中小企業を対象とした東京都の調査では、やはり退職一時金(社内準備)及び中退共の割合が高くなっています。

① 就労条件総合調査(厚生労働省2023年)

 

退職一時金算定基礎額の種類(複数回答・%)

企業規模 退職時の賃金 点数(ポイント)方式 別テーブル方式 定額方式 その他
1000人以上 30.4 52.9 15.0 3.7 0.6
300~999人 44.3 36.5 18.4 4.1 0.2
100~299人 59.2 23.2 16.4 6.9 1.9
30~99人 58.1 13.2 14.9 8.9 3.8
調査計 56.0 19.6 15.7 7.7 2.8

② 退職金・年金に関する実態調査(日本経団連・東京経営者協会2021年)

 

賃金改定額と退職金基礎額との関係(複数回答・%)

企業規模 賃金改定額を基礎額に繰入(注) ポイント方式 別テーブル方式 その他
調査計 12.5 63.1 14.5 9.8

注:「全部」と「一部」の合計

 

ポイント方式を採用している場合の配分割合(総合職・大学卒)(%)

勤続年数 年齢 資格・職務要素 考課要素 年功要素 その他
10年 32歳 61.1 10.7 25.8 2.5
20年 42歳 63.4 9.7 24.1 2.8
30年 52歳 65.3 9.3 22.2 3.2
38年 60歳 67.8 9.6 19.1 3.5

③ 中小企業の賃金・退職金事情(東京都2022年)

 

退職一時金の算出方法(複数回答・%)

 
企業規模 退職金算定基礎額×支給率 退職金算定基礎額×支給率+一定額 ポイント制 勤続年数に応じた一定額 その他 無回答
調査計 43.5 2.6 15.5 25.0 11.6 1.7

全体では退職時の賃金を用いて計算する方式(退職時の賃金の一部または全部×支給率)の割合が高いですが、大企業では賃金と切り離してポイント制を採用する企業が多くなっています。また、ポイントの構成要素としては資格・職務の占める割合が高くなっています。

① 就労条件総合調査(厚生労働省2023年)

 

退職事由別 平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)(万円)

退職事由 大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
定年 1,896 1,682 1,183
会社都合 1,738 1,385 737
自己都合 1,441 1,280 921
早期優遇 2,266 2,432 2,146
 

勤続年数別 平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者)(万円)

618​
勤続年数 大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
20~24年 1,021 557 406
25~29年 1,559 618 555
30~34年 1,891 1,094 800
35年以上 2,037 1,909 1,471

② 退職金・年金に関する実態調査(日本経団連・東京経営者協会2021年)

 

標準者退職金(会社都合)(万円)

勤続年数 大学卒
(管理・事務・技術)
高校卒
(管理・事務・技術)
高校卒
(生産・現業)
10年 288.6 184.1 213.2
20年 822.3 556.5 598.4
30年 1,649.1 1,162.7 1,166.9
38年 / 42年(注) 2,243.3 1,953.0 1,782.0
注:大学卒は38年、高校卒は42年

③ 中小企業の賃金・退職金事情(東京都2022年)

 

モデル退職金(万円)

勤続年数 自己都合退職 会社都合退職
大学卒 高専・短大卒 高校卒 大学卒 高専・短大卒 高校卒
10年 112.1 98.7 90.7 149.8 126.9 122.3
20年 343.1 292.4 272.9 414.7 346.5 328.4
30年 653.6 565.8 532.5 754.2 645.9 604.6
定年 1,091.8 983.2 994.0

大学卒・定年(会社都合)退職で見た場合、大企業の退職金額は勤続1年あたり60万円程度中小企業では勤続1年あたり30万円程度となっています。また、自己都合の場合は会社都合と比べて3割程度少なくなっています。

なお、就労条件総合調査(厚生労働省)では実支給額を集計しているのに対して、退職金・年金に関する実態調査(経団連)及び中小企業の賃金・退職金事情(東京都)では新卒入社者に対する標準的な退職金額(モデル退職金額)を集計しているという違いがあります。

退職金・年金制度の現状分析

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