【最新法改正等】2019年5月 退職金・年金関連ニュースまとめ読み
目次
2019年5月7日 経団連「2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」を公表
2019年5月13日 2019年4月の厚生年金基金は8基金のみ、さらに減少へ
2019年5月15日 未来投資会議で70歳までの就業機会確保に向けた制度案が提示
2019年5月16日 第5回企業年金・個人年金部会の資料掲載
2019年5月17日 企業年金・個人年金部会で「企業年金の普及・拡大」の議論
2019年5月27日 金融審議会市場WGにて「高齢社会における資産形成・管理」報告書案が提示
2019年5月30日 企業年金の概況 (速報値) の公表
2019年5月7日
経団連「2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」を公表
4月24日、経団連から「2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」が公表されました。主な結果は以下のとおりです。
※カッコ内は前回2016年9月度調査の結果
・大学卒の60歳時点の標準者退職金額:22,558千円(23,742千円)
・ポイント制採用企業の割合:69.9%(65.4%)
・退職一時金制度と退職年金制度を併用:72.1%(71.7%)
退職年金制度ありの企業について、
・基金型DB実施企業の割合:26.5%(26.7%)
・規約型DB実施企業の割合:48.4%(50.2%)
・DC実施企業の割合:67.7%(57.4%)
DC実施企業について、
・マッチング拠出導入済み:45.5%(35.8%)
2019年5月13日
2019年4月の厚生年金基金は8基金のみ、さらに減少へ
2019年3月末で厚生年金基金制度を原則的に廃止する改正法が施行されてから5年の移行期間が経過し、2019年4月以降存続する厚生年金基金は8基金のみとなっていました。厚生労働省から公表された直近の状況によると、このうちさらに4基金が代行返上(確定給付企業年金への移行)または解散予定となっています。
2019年5月15日
未来投資会議で70歳までの就業機会確保に向けた制度案が提示
首相官邸にて第27回未来投資会議が開催され、70歳までの就業機会確保に向けた制度案が示されました。企業が用意する選択肢のイメージとして以下の7項目が示されています。
①定年廃止
②70歳までの定年延長
③継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)
④他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
⑤個人とのフリーランス契約への資金提供
⑥個人の起業支援
⑦個人の社会貢献活動参加への資金提供
あわせて、以下の点が付記されています。
・混乱が生じないよう、65歳(現在63歳。2025年に施行完了予定)までの現行法制度は、改正を検討しないこととする。
・70歳までの就業機会の確保に伴い、年金支給開始年齢の引上げは行わない。他方、年金受給開始年齢を自分で選択できる範囲(現在は70歳まで選択可)は拡大する。
・手続き的には、今夏の工程表付きの実行計画に上記方針を盛り込む。さらに、労働政策審議会における審議を経て、2020年の通常国会において、第一段階の法案提出を目指す。
2019年5月16日
第5回企業年金・個人年金部会の資料掲載
第5回企業年金・個人年金部会の資料が掲載されました。主要な議題は「企業年金の普及・拡大について」であり、以下のような点が課題として挙げられています。
<中小企業向け取り組み>
・簡易型DCは企業のニーズに対応しておらず、導入実績がない。
・iDeCo+は届出書類の手書き、紙での提出による事務負担が重い。
<柔軟で弾力的な設計>
・リスク分担型企業年金では合併・事業所追加の際に給付減額による個別同意手続きが必要となる。
・確定給付企業年金では定年延長に伴って支給総額が増える場合であっても給付減額による個別同意手続きが必要となる場合がある。
・確定給付企業年金の一般的な終身年金の設計では平均余命の延伸に伴って企業の負担が増加する。
2019年5月17日
企業年金・個人年金部会で「企業年金の普及・拡大」の議論
第5回企業年金・個人年金部会が開催され、「企業年金の普及・拡大」について議論が行われました。出席した委員からは以下のような意見が出されました。
<中小企業向け取り組み>
・iDeCo+は制度導入後1年足らずで300事業主の実績がある一方で、簡易型DCはいまだ導入実績がない。見込みがあるものについては普及に力を入れるべきだが、見込みのないものは撤退を検討してもよいのではないか。
・iDeCo+は届出の電子化による手続き負担の軽減のほか、人数要件や中小事業主掛金の階層化要件の緩和が望ましい。
※事務局より、現在の人数要件(100名以下)は税制当局との調整により決まったとの説明あり。
※掛金の階層化は勤続年数や職種の別により行うことは可能だが、例えば同一職種内で等級や役職別に設定することは不可となっている。
・企業年金の実施にあたって最大の障害となっている財政的負担を軽減するには掛金の助成が必要ではないか。
※中退共については国や一部の自治体による掛金の助成がある。
・財政的負担に次ぐ障害として手続き上の負担があがっているが、対策を考える上では具体的にどの手続きが負担なのかを明らかにする必要がある。
・中小企業向けの制度は色々と用意されているが、あまり知られていないのではないか。広報のあり方についても検討すべき。
<DBの給付減額の取り扱い>
・リスク分担型企業年金について、合併や事業所追加時の給付減額手続き(個別同意)を緩和すべき。
※リスク分担型導入時は積立水準が将来発生するリスクの1/2を上回る水準なら個別同意は不要だが、合併等の場合は積立水準の下がるほうの企業年金で必ず個別同意が必要となる。
・定年延長に伴う給付現価の減少については、給付減額として取り扱うかどうかについても検討すべきではないか。
2019年5月27日
金融審議会市場WGにて「高齢社会における資産形成・管理」報告書案が提示
金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループ(第23回)にて「高齢社会における資産形成・管理」報告書の案が示されました。この中で、退職金や企業年金に関する企業の対応、期待される役割については以下のような点が指摘されています
・多くの者にとって退職金や年金は老後の資産の大きな柱であることから、金融リテラシー向上に向けた企業の取組も重要。
・退職金がいくらになるかの見通しを出来る限り早い時期に雇用者から本人に通知することは社員の福利厚生の向上の面でも重要であり、各企業の積極的な取組が望まれる。企業年金の運用状況や給付額について、より職員が把握しやすくなるよう各企業が取り組むことも望まれる。
・確定拠出型の企業年金(DC)では、従業員に対する投資教育の義務などその役割は小さくない。事業主においては、より従業員一人ひとりの資産形成に資するような投資教育・継続教育を行うことや、従業員のリテラシーも踏まえつつ資産形成に資する運用の選択肢を用意することが求められる。
・従業員の金融リテラシーを高め、資産形成を支えていくという点では、DC に取り組んでいない企業についても、同じく企業に期待される役割は大きい。
2019年5月30日
企業年金の概況 (速報値) の公表
昨日、信託協会等より2019年3月末現在の企業年金の概況(速報値)が公表されました。
※カッコ内は前年度の速報値
■厚生年金基金
・受託件数:10件(36件)
・資産残高(時価):145,205億円(166,001億円)
・加入者数:16万人(57万人)
■確定給付企業年金
・受託件数:12,959件(13,341件)
・資産残高(時価):630,396億円(621,337億円)
・加入者数:940万人(901万人)
■企業型確定拠出年金
・規約数:6,109件(5,731件)
・資産額(時価):124,862億円(116,686億円)
・加入者数:691万人(650万人)
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