企業型DCを実施しており、iDeCoへの同時加入可の場合にDCの資産をもつ社員が入社・退職するときの対応
更新日:2019年3月4日
確定拠出年金法の改正によって2017年から個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者数は大幅に拡大しました。既に700万人近くにまで増えている企業型確定拠出年金(企業型DC)に加え、、個人型も広く普及していくと、入社時や退職時に、企業型、個人型、またはその両方に資産を持つ社員も増えてくることになります。
各企業におけるDCに関する入社・退職時の対応は、以下のとおり、企業型DCの実施状況によって異なります。
1.企業型DCを実施していない場合
2.企業型DCを実施しており、個人型DCへの同時加入を認めていない場合
3.企業型DCを実施しており、個人型DCへの同時加入を認めている場合
今回は、企業型DCを実施しており、iDeCoへの同時加入を認めている場合において、iDeCoまたは前職での企業型DCの資産をもつ社員(厚生年金の適用者)が入社・退職するときの対応をお話します。
入社時の対応
社員が入社前に企業型DC及び個人型DCに加入していた場合の資産の取り扱いは、以下のとおりとなります。
入社時のDC資産の取り扱い
企業型DCの資産 | iDeCoの資産 | 取り扱い |
---|---|---|
あり | なし | 自社の企業型DCに資産を移すことになるが、本人の申出によりiDeCoに資産を移すこともできる。 |
なし | あり | iDeCoの資産は引き続きiDeCoで運用し、その後も掛金を積み立てることが可能。また、自社の企業型DCに資産を移すことも可能であり、この場合は別途申出がない限りiDeCoの加入者資格を喪失する。 |
あり | あり | 企業型DCの資産とiDeCoの資産のそれぞれについて、上記のとおりの取り扱いとなる。 |
企業型DCまたはiDeCoの資産の自社の企業型DCに移す場合、会社側は、通常の加入手続きに加え、資産を移すための手続きとして、社員に資産を移すための「個人別管理資産移換依頼書」に必要事項を記入してもらい、それを自社の企業型DCの運営管理機関に提出することとなります。また、企業型DCの資産をiDeCoに移す場合には、本人が「個人別管理資産移換依頼書」をiDeCoの運営管理機関(受付金融機関)に提出することになります。
なお、入社前にiDeCoに加入しており、入社後も引き続きiDeCoに加入して掛金の積み立てを継続する場合には、以下の手続きを本人が行う必要があります。
引き続き個人型DCへ掛金を積み立てる場合に必要な手続き
入社前の iDeCo加入状況 | 必要な手続き |
---|---|
会社員・公務員等として加入(注1) | 「加入登録事業所変更届」を運営管理機関(受付金融機関)に提出する。 |
自営業者・専業主婦等として加入(注2) | 「加入者被保険者種別変更届」を金融機関に提出する。 |
(注1)厚生年金被保険者であった者
(注2)厚生年金被保険者でなかった者
※入社前の個人型DCの掛金設定が入社後の掛金の上限(企業型DC以外の企業年金の加入者となる場合は月1.2万円、ならない場合は月2万円)を超えている場合には、掛金額の変更も併せて行う必要がある。
これらの手続きには「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」の添付が必要となるため、会社側は社員からの求めに応じて証明書への記入を行うこととなります(証明書の記入の詳細については「個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者拡大に企業はどう対応すべきか?」を参照ください)。
【加入資格の証明がないと…】 入社前から個人型DCに加入していた社員が、入社後も引き続き個人型DCに掛金を積み立てようとしたとき、上記の手続きが行われていないと国民年金基金連合会で加入資格を確認することができないため、最終的には掛金の引き落としが停止され、掛金の積み立てができなくなります。社員からクレームが出ないよう、事業主の証明書には速やかに対応しましょう。 |
【企業型DCに受け入れ可能な資産】 企業年金のポータビリティを確保するため、企業型DCには、以前に加入していた企業型・個人型DCの資産のほか、確定給付企業年金の脱退一時金(退職時に支給される一時金)なども、本人からの申出により移すことが可能となっています。入社した社員に対しては、DC以外の資産も含めて、自社の企業型DCに移す資産がないかどうかを確認しておくとよいでしょう。 |
退職時の対応
iDeCoに加入し、掛金を給与天引きで納めていた社員が退職する場合の対応については「企業型DCを実施していない場合にDCの資産をもつ社員が入社・退職するときの対応」、企業型DCに加入していた社員が60歳前に退職する場合の対応については「企業型DCを実施しており、iDeCoへの同時加入不可の場合にDCの資産をもつ社員が入社・退職するときの対応」をそれぞれご覧ください。
法改正により、企業型と個人型の両方にDCの資産を持つことが可能となり、入社・退職時の手続きも複雑になっています。取り扱いに不明な点が生じた場合は、企業型DCに関しては運営管理機関に、個人型DCに関しては国民年金基金連合会に確認しながら、適切に対応するようにしましょう。