企業型DCを実施しており、iDeCoへの同時加入不可の場合にDCの資産をもつ社員が入社・退職するときの対応
更新日:2019年3月1日
確定拠出年金法の改正によって2017年から個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者数は大幅に拡大しました。既に700万人近くにまで増えている企業型確定拠出年金(企業型DC)に加え、、個人型も広く普及していくと、入社時や退職時に、企業型、個人型、またはその両方に資産を持つ社員も増えてくることになります。
各企業におけるDCに関する入社・退職時の対応は、以下のとおり、企業型DCの実施状況によって異なります。
1.企業型DCを実施していない場合
2.企業型DCを実施しており、個人型DCへの同時加入を認めていない場合
3.企業型DCを実施しており、個人型DCへの同時加入を認めている場合
今回は、企業型DCを実施しており、iDeCoへの同時加入を認めていない場合において、iDeCoまたは前職での企業型DCの資産をもつ社員(厚生年金の適用者)が入社・退職するときの対応をお話します。
入社時の対応
社員が入社前に企業型DC及びiDeCoに加入していた場合の資産の取り扱いは、以下のとおりとなります。
入社時のDC資産の取り扱い
企業型DCの資産 | iDeCoの資産 | 取り扱い |
---|---|---|
あり | なし | 自社の企業型DCに資産を移す(iDeCoに資産を移すこともできるが、その後iDeCoに新たに掛金を積み立てることはできない)。 |
なし | あり | 自社の企業型DCに資産を移すことができる(iDeCoに資産を残しておくこともできるが、その後iDeCoに新たに掛金を積み立てることはできない)。 |
あり | あり | 両方とも自社の企業型DCに資産を移し、1つの口座にまとめることができる(iDeCoに資産を移したり残しておくこともできるが、その後iDeCoに新たに掛金を積み立てることはできない)。 |
iDeCoへの同時加入を認めていない場合でも、iDeCoにそれまで積み立てた資産を移したり残したりして運用を行うことはできますが、企業型DCに加入した後はiDeCoへの新たな掛金の積み立てはできません。加入者にとっては企業型DCに資産をまとめることで、iDeCoの口座管理手数料が不要となるメリットがあります。
また、iDeCoの加入者であった場合には、「加入資格喪失届」をiDeCoの運営管理機関(受付金融機関)に提出する必要があり、この手続きは本人が行うこととなります。
企業型DCに資産を移す場合、会社側は、通常の加入手続きに加え、資産を移すための手続きとして、社員に資産を移すための「個人別管理資産移換依頼書」に必要事項を記入してもらい、それを自社の企業型DCの運営管理機関に提出することとなります。詳細は各運営管理機関にご確認ください。
【企業型DCに受け入れ可能な資産】 企業年金のポータビリティを確保するため、企業型DCには、以前に加入していた企業型・iDeCoの資産のほか、確定給付企業年金の脱退一時金(退職時に支給される一時金)なども、本人からの申出により移すことが可能となっています。入社した社員に対しては、DC以外の資産も含めて、自社の企業型DCに移す資産がないかどうかを確認しておくとよいでしょう。 |
退職時の対応
企業型DCに加入していた社員が60歳前に退職する場合のDCの資産の取り扱いは、以下のとおりとなります。
60歳前に退職したときの企業型DC資産の取り扱い
退職後の状況 | 取り扱い |
---|---|
転職先の企業型DCの加入者となる | 転職先の企業型DCに資産を移す。(注) |
上記以外 | 個人型DCに資産を移す。 |
(注)本人の申出によりiDeCoに資産を移すことも可能。
転職先で再度企業型DCに加入する場合を除いては、iDeCoに資産を移すこととなり、その手続きは本人がiDeCoを扱う金融機関に対して行う必要がありますが、その手続きが行われず、「自動移換」となるケースが多くなっています。
今回の法改正を受けて改正された厚生労働省からの法令解釈通知では、社員に対する投資教育の具体的な内容として、離転職の際に正規の手続きにより資産を移し、運用を継続していくことが重要であることが追加されました。退職時の企業型DCの資産の取り扱いについて、実際に社員が退職したときに説明を行うのはもちろんのこと、在職中の継続教育においても社員に周知しておくことが求められます。
【自動移換について】 退職から6か月以内にiDeCoまたは転職先の企業型DCに資産を移す手続きを行わないと、資産を移す手続きを行わないと、強制的に国民年金基金連合会に資産が移されます。これを「自動移換」といいます。 自動移換されると運用がストップし、手数料が差し引かれていくとともに、受け取り開始可能な年齢を判定するための期間にカウントされなくなるため、受け取りの時期が遅れる可能性があります。 自動移換された資産は改めて移換の手続きを行うことでiDeCoまたは企業型DCに移すことができますが、その際にも手数料がかかることになります。 |