【人事必見】第2回 制度を効果的に活用させるシニア社員向け研修のポイント | 連載「70歳就労時代のシニア人材向け研修の重要性とは?」
本記事はシニア人材向け研修の重要性について解説する2回目の記事になります。前回はシニア社員向け人材がイキイキと働き始める効果的な方法について説明してきました。第2回目となる本記事では、研修に焦点を当て、解説をしていきます。
シニア社員向け研修のゴール
早速ですが、研修を企画する時のゴールについてまずは確認をしましょう。 多少の差がありますが、多くの会社で当てはまるシニア社員向け研修のゴールとして、次のように定義することが多いように思われます。
<シニア社員向け研修のゴール>
会社の定める定年後あるいは役職定年後の報酬・役割に関して理解を示し、納得感を持ちイキイキとシニア社員が期待通り働ける状態になること。
ここで、参考までにゴール(理想の姿)と現状分析を行った場合、一般的に多く出てくる課題を列挙します。
✔️ 報酬や役割に納得がいっていない※
✔️ ぶら下がりの状態で働く気力がなく、他の社員へ悪影響を及ぼす
✔️ コミュニケーションに支障がある
✔️ 自身の暗黙知である能力や技術の棚卸しができず、役割を全うできていない
※報酬や役割に関しては制度そのものが課題なのか、研修で対応可能な課題なのか整理が必要になります。
シニア社員向け研修の内容と効果
先ほど整理した会社ごとで抽出される課題を解決するために、次のような研修が企画されることが多いです。自社の研修の参考にしてみてください。
主な研修内容 | 効果 |
<役割を明確化する研修> 定年後あるいは役職定年後の役割を明確し、社員に期待していることを認識させ、納得してもらう研修。 会社によっては、後身育成、部署異動、業務継続などそれぞれのコースごとに役割を示されるケースもある。 |
シニア社員が会社の求めている役割を意識させることでき、シニア社員に変化する役割に向けた行動変容を期待できる。 |
<マネープラン研修> 定年後の人生を考慮して、国の年金や会社の退職金、年金を知り、マネープランを立てることで、老後の生活に必要なお金をクリアにする研修。 |
お金の心配をもとに、働き続ける選択をしている社員は多いため、人生のお金に見通しを与え、適切な意思決定を支援できる。 |
<キャリアの棚卸し研修> 自身の強みや経験を棚卸しする機会を提供することで、自分自身の強みや能力を正確に把握する研修。 |
本人も把握していなかった能力や技術を把握し、後身育成や技術の伝承に活用することが期待できる。 |
<コミュニケーション研修> 年齢の低い社員やかつての部下との接し方やコミュニケーションに関して学ぶ研修。 |
若手社員やかつての部下との接し方を学び、伝承したい能力や技術を継承しやすくすることが期待できる。 |
シニア社員向け研修を行うタイミング
ここまでで、研修のゴールから内容、そして効果までをまとめてきました。最後に研修を行うタイミングについて説明します。
シニア社員向け研修は、研修後直後に行動変容が起こせられるものではありません。多くの社員が、これまでの人生とは変わった役割や人との接し方が求められるため、受け入れられる時間が必要になってきます。 その準備期間は会社によって差がありますが、多くの会社では、定年退職の数年前から長ければ50歳を目安に研修が企画されることが多いです。
実施時期に関しては、人事とシニア社員がコミュニケーションを取りながら、心の準備はどのくらい必要かヒヤリングを重ね、自社に最適なタイミングを定めていってはいかがでしょうか
さて、本記事では、シニア向け研修に焦点を当て解説してきました。次回では社内で研修を企画し、進めていく際の進め方や考え方を解説いたします。
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著者 : 石川 泰 (いしかわ たい)
1991年生まれ。東京理科大学基礎工学部卒業後、2015年に株式会社IICパートナーズへアクチュアリー候補として入社。その後、野村證券株式会社にて確定拠出年金に関する法人営業、SBIベネフィット・システムズ株式会社において、関係省庁や業界団体との折衝、企画業務を担当。
現在はクミタテル株式会社で働く他、2021年1月に設立した公的私的年金・退職金の一元管理を目指したフィンテック企業の代表も務める。
SBI大学院大学経営管理研究科(MBA)卒業、元プロボクサー(1戦1勝1KO)。
出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう
労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。
シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。