TOP > 事例退職金・年金制度コンサルティング > 日本事務器 曽我雅恵氏 × クミタテル代表 向井洋平 継続雇用制度をジョブ型へ刷新したことで伝えたいメッセージとは?

お役立ち情報

退職から人事制度を組み立てるサイト「クミタテル」 > お役立ち情報 > 事例 > 日本事務器 曽我雅恵氏 × クミタテル代表 向井洋平 継続雇用制度をジョブ型へ刷新したことで伝えたいメッセージとは?

日本事務器 曽我雅恵氏 × クミタテル代表 向井洋平 継続雇用制度をジョブ型へ刷新したことで伝えたいメッセージとは?

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
日本事務器 曽我雅恵氏 × クミタテル代表 向井洋平 継続雇用制度をジョブ型へ刷新したことで伝えたいメッセージとは?

2013年4月の「高年齢者雇用安定法」の改正から10年余りが経過した。65歳までの雇用確保に関してはほぼすべての企業で何らかの対応がなされ、定着してきている。日本事務器でも改正の時点で継続雇用制度を整備していたが、社内外の状況の変化を鑑みて見直しを進め、2023年4月にはジョブ型の“エッセンス”を取り入れた制度設計へと変更した。これには、シニア社員やシニア社員と一緒に働く元部下であった上司と社員たちに対し、どのようなメッセージが込められているのだろうか。日本事務器 執行役員常務 人事部長 曽我雅恵氏とクミタテル代表 向井洋平氏による対談をお届けする。

会社からのメッセージを正しく伝えたかった

向井  御社は来年、創業から100年目を迎えるとのことですが、御社の事業概要と曽我様の経歴について教えていただけますか。
曽我  弊社は、創業当時から一貫してお客様の経営や業務効率化を支援するサービスを提供する事業を展開してきています。創業期のファイリング用キャビネットやタイムレコーダーなどの提供に始まり、1961年からは国産コンピューター誕生と同時にその販売やサポートを手掛け、そして現在は、DX、メタバース、AI活用などと、時代や提供するものが変わっても、それぞれの時代で可能なツールでお客様の経営・業務をサポートしています。
私自身は、技術者として新卒で入社しました。PCの急激な普及に伴い、教育センターという部署に異動し、インストラクターとしてお客様向けにPC利用に関する教育を担当し、その後、社内技術者向けの教育企画を担う部門を経て人事部に異動。異動当初は、採用・教育を行っていました。


向井  多彩な経歴をお持ちなんですね。今では制度設計に携わっておられる。
曽我  はい。人事部に異動して15年ほどになりますが、現在は、人的資源に関係する業務全般を担っております。
向井  継続雇用制度の見直しについて検討を始めたのは2020年頃とのことですが、何がきっかけだったのでしょうか。


曽我  高年齢者雇用安定法の改正が最も大きなきっかけでした。これまでの当社の制度は、法律に則した「年金併用型」を考慮した制度設計となっていました。

(編集者注:2021年4月の改正により65歳までの雇用確保に加えて70歳までの就業確保が努力義務化された。また、2025年3月までは経過的に60歳台前半の在職老齢年金が残されており、これまでは公的年金の受給を前提とした賃金設定が一般に行われてきた。)
向井  そして、2021年からはこの制度の見直しに向けて弊社も御社のプロジェクトに加わることとなりました。見直しの際、外部の支援を受けようと思われたのはなぜだったのでしょうか。
曽我  当社は長年、お客様との関係性を重視し、信頼関係を築いてきました。これには、お客様に真摯に向き合いながら関係構築を果たしてきたシニア社員の活躍も一翼を担っていることは言うまでもありません。その経験やスキルを持って、定年退職後も引き続き当社で活躍いただきたい社員が多くいる中、従来の制度では継続雇用を希望する社員があまり多くありませんでした。シニア社員に継続して働きたい気持ちがあっても、活用して働きたいと思える制度になっていなかったのです。実は、この制度では、継続雇用を希望するかを55歳の時点で選択しなければなりませんでした。さらに継続雇用を選択した場合の給与減額の幅も大きかった。このことが、「会社は定年退職後の社員に、継続して勤務して欲しいと積極的には考えていない」という、ネガティブな捉え方を社員にさせてしまっていたのです。

そこで、「経験やスキルをもったシニア社員にも、生き生きと働き続けてもらいたい」という会社のメッセージが伝わる制度を作りたい、設計にあたっては、人事に関する社会動向、トレンドなどの情報を収集し、外部の専門家の意見も参考にしながら、時代にあった制度にしたい思いがあり、クミタテルさんにコンサルしていただくことを選んだのです。

制度見直し前のコミュニケーションもていねいに

向井  正しいメッセージを伝えたい、社会が目指しているのと同じ方向性を持ちたいということで、制度の見直しを図られたのですね。とはいえ、これまでの制度から変えるわけですから、社内でのヒアリングといったコミュニケーションも必要になったかと思います。
曽我  はい。経営層、シニア社員の上司、定年退職を意識し始める50代の社員たちにヒアリングを行っていきました。このようなコミュニケーションは、シニア社員にとっては「制度を使って働き続けて良かった」と、シニア社員の上司にとっては、「一緒に働き続けてもらえて良かった」と思える仕組みづくりに重要だと考えていたからです。
向井  印象に残った意見はありましたか。
曽我  シニア社員の上司にとっては、以前、上司や先輩だった社員が部下になるので、様々な面でやりづらさを感じているのではないかと危惧していたのですが、シニア社員へのリスペクトの高さに驚かされました。シニア社員が築いてこられたお客様との関係性や、スキル、技術、豊富な経験を活かし、引き続き現場で活躍していただきつつ、後進にも伝えてもらいたい、と考えている人が多かったのは、非常にうれしい意見でした。


向井  意欲があり、活躍が期待できる社員に活躍していただけるような制度設計を進めていけたのは、そのような社員たちの声があったからなんですね。
曽我  年齢に関係なく、培ってきた経験やスキルを活かしながら働いたり、現状に満足せずチャレンジし続けて欲しいという会社側の想いとも一致していると感じます。

ジョブ型にすることでシニア社員がリトライしやすい環境に

向井  今回の制度設計ではジョブ型を取り入れられました。そのあたりの経緯もお話しいただけますか。
曽我  従来の継続雇用制度では、定年退職前とほぼ同じ仕事を継続するというものでした。報酬も退職時の等級に基づき決定していました。 当社の人事制度では、等級は人に対して設定されています。当然、等級に即した役割を割り当てていますが、時として一致していない場合もありました。そこで、新しい継続雇用制度では、等級を人ではなく仕事に対して設定しました。同じ等級の仕事であれば、退職前の等級に関わらず報酬は同じになる。ジョブ型の考え方を取り入れた制度に変更しました。
向井  私も、継続雇用制度にはジョブ型のアプローチが比較的フィットしやすいと考えています。定年を迎えて雇用関係が切り替わるタイミングで、当事者は考えを切り替えやすくなっていますし、5年など限定された期間では仕事に対する報酬のほうがマッチする。それにしても、思い切った決断をされたなぁという印象です。

ジョブをベースにする、ということで、どのような工夫をされていらっしゃいますか。


曽我  まず、50歳を迎えた社員に対してキャリアマネジメント研修を行っています。この研修は以前から実施していたものになりますが、「今後、自分はどのような人生を歩みたいか」、キャリアプランやライフプランを考えていただくものですね。

そして、以前は55歳で行っていた継続雇用の希望の確認を、60歳目前の59歳の時点で行うように変更することで、キャリアプランやライフプランの検討期間やリスキリングの期間を十分に確保し、よりご自身に即した選択をできるようにしました。

60歳で定年退職した後、継続雇用契約する形になりますが、継続雇用を希望する社員は、定年退職前までと同じ仕事を選択することも、今までとは異なる仕事や勤務地を選択することも可能です。

現場の部門長には、仕事の内容や労働条件などを含めたジョブディスクリプションの作成を依頼しています。定年退職者の有無に関わらず、定年退職者にお願いしたい仕事のある部署から広く募集を募ります。
継続雇用希望者は、ジョブディスクリプションで職務内容を確認のうえ、その仕事に応募し、面接を受け、お互い合意の上、雇用契約をするという形になっています。
面接に臨むにあたり、継続雇用希望者には、職務経歴書を書いていただきます。定年退職前までの仕事とは、別の仕事を希望する場合もありますので、それまでの仕事の棚卸し、今までの経験やスキルなど自分の強みが、希望する職務内容と一致しているか、職務の中で発揮できるか、面接でお互いに確認する必要があるからです。

当社では、新卒で入社し定年退職まで勤め上げる社員が多く、職務経歴書を書く事に慣れていないケースも想定されるため、職務経歴書の書き方レクチャーも行っています。これは、ゆくゆく継続雇用期間が終了した後に、再就職活動する際にも、役立ててもらえると思っています。


向井  継続雇用の時点で、今までと違う新たな仕事を希望することも可能ということですが、リスキリングへの取り組みはどのようにされていますか?
曽我  当社では、階層教育、職種別教育、資格取得奨励制度など、全社員に「学び続ける環境」を提供してきましたが、2023年度からは、新たなスキル獲得や学び直しの環境の提供として、実践的かつ最先端の知見が学べるオンライン学習プラットフォームの活用を開始しました。
更に当社が大切にしているのが「学びを実践する環境」の提供です。習得した知識は実践してこそ実力となります。学んだ知識を実践できる実務の提供も合わせて行っています。

これらの「学び続ける環境」と「学びを実践する環境」の提供対象は、継続雇用社員を含む全社員です。シニア社員にも、これらの環境を上手に活用してリスキリングを行い、経験にプラスしてもらえればと思っています。
向井  チャレンジしたいという社員の意欲を汲んで、高齢になっても活躍してもらえるよう、そのような機会を提供していらっしゃるのですね。

まだ運用が始まったばかりで、継続雇用希望者と配属先のマッチングはこれから、改正後の継続雇用制度で再雇用者が出るのが来年4月、とのことですが、今後の抱負があれば、ぜひお聞きしたいです。
曽我  制度を見直すことで、継続雇用希望者本人が、自分のキャリアプラン、ライフプランを明確化し、そのプランを実現化できる体制が整ったと感じています。そのサポートとして、スキルアップや携わりたい業務について学んだりする機会を会社側が提供することで、より生き生きと仕事を続けていただくことができる。

労働人口が減りつつある現在、単なる労働力不足の解消ということではなく、年齢に関係なく、意欲的に働くシニア社員が職場にいることが、周囲のモチベーション向上に繋がり、現場の社員も、継続雇用社員も「この制度を利用して良かったな」と思ってもらえるようにしていきたいですね。

新制度は、まだスタートしたばかりなので、運用していく中で課題が出てくるかもしれません。その場合は、アジャイルに対応する柔軟性を持ちながら、誰にとっても活用しやすい制度にしていければ、と考えています。
向井  今日はありがとうございました。

※取材日時 2023 年 8 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう

シニア社員のイグジットマネジメントできていますか?

労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。

シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。

現状診断について見る

退職金や企業年金の最新情報が届きます

クミタテルのオリジナルコンテンツや退職給付会計・企業年金・退職金に関連したQ&Aなどの更新情報をメールマガジンにて配信しています。

イグジットマネジメントニュース

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
banner_analysis_rectangle.png
退職金・年金・人事の制度設計
 

お問い合わせ

資料ダウンロードやメルマガ登録、お問い合わせは、 各フォームよりご連絡ください。

メールマガジン登録

イグジットマネジメントについての最新情報やお役立ち情報、対談記事などの情報を配信しているメールマガジンの登録を行えます。

メルマガ登録する

クミタテル資料3点セットをダウンロード

クミタテルの会社情報、高齢者雇用や退職金・企業年金の課題を解決するコンサルティングサービスの詳細な資料を無料でご請求いただけます。

資料をダウンロードする

お問い合わせはこちら

サービス内容に関するご相談・ご質問やサイト利用にあたってのご不明点などは、こちらよりお問い合わせください。

問い合わせる