【人事必見】第1回 従業員の経済的安心がイキイキとした組織を作る | 連載「なぜ今、金融教育を会社が行った方が良いのか」
人生100年時代や老後2,000万円問題など、お金に絡んだテーマに焦点があたる機会が増えているように思います。
また、金融広報中央委員会の『金融リテラシー調査2019年調査結果』から、67.2%の方が金融教育を必要と考えている一方で、学校等において金融教育を受けたことがある人の割合は7.2%しかいないことが分かります。つまり、学びたい(学んでおきたかった)という気持ちと現実ではギャップがあるのではないでしょうか。
こうしたことも背景にあってか、2022年4月からは高校家庭科で株式や債券、投資信託といった基本的な金融教育が行われることになっており、日本社会において金融教育の役割が大きくなっていくことは間違いないと思われます。
本記事では複数回に分けて、「なぜ今、金融教育を会社が行った方が良いのか」について書いていきます。
連載第1回は「従業員の経済的安心がイキイキとした組織を作る」をテーマとしてお届けします。
会社が金融教育をやる意義
筆者の経験に基づきますが、会社が金融教育をやる意義は、金融リテラシーの欠如による「お金の不安」が従業員の生産性・モチベーション・行動に悪影響を及ぼすと考えられるためです。 一般的に多くの従業員は、お金の不安なく働きたいと考えています。しかしながら、基礎的な金融リテラシーの欠如によって、合理的な行動が取れなかったり、本来必要のないお金の不安が生じ、仕事に集中できないということが起こり得ます。
下記に年齢別で散見される、お金の不安に繋がる事例と会社への影響を記載します。
年齢階層 | お金の不安に繋がる事例と会社への影響 |
20代 |
<事例> <会社への影響> |
30〜40代 |
<事例> <会社への影響> |
50〜60代 |
<事例> <会社への影響> |
※ 金融教育と金融リテラシーとは?
金融教育及び金融リテラシーについて、それぞれ定義が一意でないため、本記事においては次の解釈で記載しています。
<金融リテラシー>
金融に関する知識や情報を習得し、収支管理や自身のライフプランに合わせた意思決定が行える能力
<金融教育>
前述の金融リテラシーを身につける教育のこと
いつから金融教育が求められるようになったのか
さて、ここで一度、時代背景として、いつから金融教育が日本社会に求められるようになっていったのかを確認してみましょう。
金融教育は、1996〜2001年度にかけて行われた大規模な金融制度の規制改革(いわゆる金融ビックバン)がきっかけとなり、注目が集まったと言われています。具体的には2000年に開かれた金融審議会で「金融に関する消費者教育」というテーマで議論がなされています。
つまり、2000年は国が、「複雑化する金融に関して知識を養い、適切な意思決定ができるよう金融リテラシーを高めてください」とメッセージを出し始めたタイミングでもあります。また、国民の目線では、高齢者の割合増加による社会保障制度の不信や、核家族化、そして、単独世帯の増加に伴った、従来の家族間での支え合い機能の希薄化なども金融教育を求めてきている背景と言えるでしょう。
金融教育のゴールとは
ここまでで、会社が金融教育を行う意義や時代が金融教育を求めていることを確認してきました。では、会社が行う金融教育のゴールは一体どのように設定すべきなのでしょうか?
会社ごとで金融リテラシー欠如による課題はいくつも考えられますが、課題を解決した先にあるゴールは、「お金の不安なく従業員が安心して働けるように必要な情報提供・教育を行うこと」ではないかと私は考えています。
次回では、ゴールの実現に向けた解決したい課題ごとに考えられる金融教育の具体例について書きたいと思います。 お楽しみに。
「第2回 世代別金融教育で、効果的な研修を実現する」を読む>
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著者 : 石川 泰 (いしかわ たい)
1991年生まれ。東京理科大学基礎工学部卒業後、2015年に株式会社IICパートナーズへアクチュアリー候補として入社。その後、野村證券株式会社にて確定拠出年金に関する法人営業、SBIベネフィット・システムズ株式会社において、関係省庁や業界団体との折衝、企画業務を担当。
現在はクミタテル株式会社で働く他、2021年1月に設立した公的私的年金・退職金の一元管理を目指したフィンテック企業の代表も務める。
SBI大学院大学経営管理研究科(MBA)卒業、元プロボクサー(1戦1勝1KO)。
出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう
労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。
シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。