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Q&Aから読み解く70歳までの就業確保措置~2021年4月施行 改正高年法への対応~

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Q&Aから読み解く70歳までの就業確保措置~2021年4月施行 改正高年法への対応~

改正高年齢者雇用安定法の施行により、2021年4月から70歳までの就業確保が事業主の努力義務となりました。その対応に向けて、厚生労働省では就業確保措置の実施及び運用に関する指針を定めるとともに、企業向けのパンフレットやQ&Aを「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」に掲載しています。

Q&Aの内容は多岐にわたっていますが、これらを読み解くことで就業確保措置で求められる対応の全体像が掴めるようになっています。ここでは、Q&Aを以下の4つのカテゴリに整理してその内容を紹介します。

努力義務への対応として必要な内容
就業確保措置の運用に関する事項
継続雇用制度に関する事項
創業支援等措置(雇用によらない措置)に関する事項

質問及び回答については筆者による要約・強調を行っていますので、必要に応じて厚生労働省のサイトに掲載されている原文をご確認ください。なお、表のNo.の丸数字は原文の番号と対応しています。
注:2021年4月6日時点で掲載されているQ&Aに基づく内容となっている点にご留意ください。

No. 質問 回答
まずは67歳までの継続雇用制度を導入するなど、高年齢者就業確保措置を段階的に講ずることは可能か。 可能。ただし、改正法で努力義務として求めているのは70歳までの就業機会を確保する制度を講じることであるため、70歳までの制度を導入することに努め続けることが必要
改正法は2021年4月1日から施行だが、その時点でいずれかの措置が取られていないと厚生労働大臣による指導の対象となるのか。あるいは、その時点から検討を始めれば指導の対象とはならないのか。 以下の考え方に基づいて指導等を行う。
(1) まずは、制度の内容を把握していない事業主や70歳までの就業機会の確保について検討を開始していない事業主等に対して、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発及び指導を行う
(2) 企業の労使間で合意され、実施又は計画されている高年齢者就業確保措置に関する好事例その他の情報の収集及びその効果的な提供に努める。
(3) 雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせるなど、2020改正の趣旨に反する措置を講ずる事業主に対しては、措置の改善等のための指導等を行う。
事業主が措置を講ずる努力(例えば、創業支援等措置について労使で協議はしているが、同意を得られていない場合)をしていれば、実際に措置を講じることができていなくても努力義務を満たしたこととなるか。 措置を講じていない場合は努力義務を満たしていることにはならない。また、過半数労働組合等の同意を得られていない創業支援等措置を講じる場合も努力義務を満たしていることにはならず、継続的な協議が必要
事業主が高年齢者就業確保措置を講じる場合において、就業条件など措置の内容に関して高年齢者と事業主の間で合意できず、高年齢者本人が措置を拒否した場合は努力義務を満たしていないことになるのか。 事業主が雇用の措置を講ずる場合、努力義務として求めているのは、希望する高年齢者が70歳まで働ける制度の導入であって、事業主に対して個々の労働者の希望に合致した就業条件を提示することまでは求めていない。そのため、事業主が合理的な裁量の範囲での就業条件を提示していれば、労働者と事業主との間で就業条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が措置を拒否したとしても、努力義務を満たしていないものとはならない
また、事業主が創業支援等措置を講ずる場合、事業主が過半数労働組合等の同意を得たうえで、当該計画に示した内容通りの措置を講じていれば、個々の労働者と事業主の間で就業条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が措置を拒否したとしても、努力義務を満たしていないものとはならない
65 歳以降70 歳までの就業確保措置を講じるにあたって、職種・雇用形態により、就業確保措置の内容を区別することはできるか。 職種・雇用形態により就業確保措置の内容を区別することは可能。労使間の協議を踏まえて複数の措置を講ずる場合には、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについて、個々の労働者の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定するよう留意。
70歳までの就業確保措置を講じる際に、就業規則を変更する必要はあるのか。 定年の引き上げ、継続雇用制度の延長等の措置を講じる場合や、創業支援等措置に係る制度を社内で新たに設ける場合には、就業規則を作成、変更し、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要がある欄外の例を参照)。
なお、創業支援等措置を講じる場合には、就業規則の変更とは別に、創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、過半数労働組合等の同意を得る必要があるが、この計画については、ハローワークに届け出る必要はない。
事業主が自社以外の会社や団体で高年齢者の就業を確保する場合において、解雇等により70歳に達する前に高年齢者が就業を継続できなくなった場合、高年齢者が離職した後70歳までの期間について、定年まで雇用した事業主が自社で再雇用等を行う必要があるか。 定年まで雇用した事業主が70歳まで自社以外の会社や団体で働ける制度を定めている場合には、当該事業主は努力義務を満たしており、就業先である自社以外の会社や団体からの解雇等により70歳に達する前に就業を継続できなくなった高年齢者については、定年まで雇用した事業主が改めて高年齢者就業確保措置を講じる必要はない
当分の間、65歳に達する労働者がいない場合でも、高年齢者就業確保措置を講じなければならないのか。 全ての企業に対して一律に適用される努力義務であり、高年齢者就業確保措置を講じるよう努めることが必要
定年まで雇用していた事業主に代わって特殊関係事業主や他の事業主が高年齢者就業確保措置を講ずる場合、どのような措置を講ずることが可能か。 高年齢者就業確保措置のどの措置を講じても構わないが、定年まで雇用していた事業主が、特殊関係事業主や他の事業主が講じる高年齢者就業確保措置について過半数労働組合等の同意を得た上で、当該措置の実施に関する計画を定年まで雇用していた事業主の従業員に周知する必要がある。

努力義務への対応として必要な内容について、改めてポイントをまとめると以下のようになります。
✔︎ 70歳までの就業確保措置を講じていなければ、努力義務を満たしたことにはならない。
✔︎ 創業支援等措置については過半数労働組合等の同意を得ることが必要。
✔︎ 就業確保措置を講じたうえで、個々のケースにおいて就業条件等についての合意が得られずに労働者が措置を拒否した場合には、努力義務を満たしていないものとはならない。
✔︎ 当分の間、65歳に達する労働者がいない場合でも、高年齢者就業確保措置を講じる努力義務がある。
✔︎ 行政としては、まずは検討を開始していない事業主等に対して、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発及び指導を行う。

70歳までの就業確保措置は「努力義務」ということでまだ様子見の企業が多いのが実情ですが、制度設計や労使協議など、実施に向けては相応の期間を要します。定年延長を含む65歳までの雇用・人事制度の整備と併せ、まずは会社としての基本方針の検討に着手する必要があるでしょう。

No. 質問 回答
就業規則において、継続雇用しない事由や業務委託契約等を更新しない又は解除する事由を解雇事由とは別に定めることはできるか。できる場合、創業支援等措置についてはどこで定めることができるのか。 措置の対象者を限定する基準として別に定めることが可能
継続雇用しない事由を定める場合は就業規則に定める必要があり、基準を設ける場合には過半数労働組合等の同意を得ることが望ましい。
創業支援等措置における業務委託契約等を更新しない又は解除する事由を定める場合には、実施計画に盛り込む必要がある
事業主が、雇用する高年齢者に対して高年齢者就業確保措置を利用する希望があるかどうかを聴取するのは、65歳の直前でなければならないのか。
例えば、定年を60歳に定める会社が65歳まで特殊関係事業主で継続雇用を行い、65歳から70歳までNPO 法人で創業支援等措置を行う場合において、高年齢者の希望を聴取すべきタイミングはいつか。
タイミングについては65歳の直前でなくても構わない
左記の例では、定年まで雇用した事業主が、60歳定年前に高年齢者の希望を聴取していれば、法律上の努力義務としては特殊関係事業主で雇用された後においても希望を聴取することまでは求めていない。ただし法の趣旨を踏まえれば、特殊関係事業主に雇用された後に改めて高年齢者の希望を聴取し、適切な措置を講ずることが望ましい。
賃金・人事処遇制度について、指針には「業務内容に応じた適切なものとなるよう努めること」等の規定があるが、70歳までの就業機会を確保する上で具体的にどのような点に留意したらよいのか。 労働者の希望に合致した労働条件までは求められていないが、雇用継続により70 歳までの就業確保を行う場合には、最低賃金やパートタイム労働法に基づく公正な待遇の確保など、労働関係法令の範囲内で賃金等を定める必要がある
創業支援等措置により70 歳までの就業確保を行う場合には、実施計画に「高年齢者に支払う金銭に関する事項」を定めた上で、過半数労働組合等の同意を得る必要がある。
対象者を限定する基準とはどのようなものか。 基準は各企業の実情に応じて定められることを想定しており、その内容は原則として労使に委ねられる。ただし恣意的に特定の者を対象から除外しようとするなど、法の趣旨や他の労働関連法令に反する又は公序良俗に反するものは認められない。
【適切ではない例】
・会社が必要と認めた者に限る(基準がないことと等しく、法の趣旨に反するおそれがある)
・上司の推薦がある者に限る(同上)
・男性(女性)に限る(男女差別に該当)
・組合活動に従事していない者(不当労働行為に該当)
【望ましい基準】
・労働者自ら基準に適合するか否かを一定程度予見することができ、到達していない労働者に対して能力開発等を促すことができるような具体性を有するものであること(具体性)
・必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)

65歳以降の就業確保措置については、希望者全員を対象とすることまでは求められておらず、労使合意により対象者を限定する基準を定めることができます。また、賃金・人事処遇制度については、労働関係法令の範囲内で定める必要があることはもちろんですが、各企業がそれぞれの実情に応じて定めていくことになります。重要なのは、基準や制度の内容や考え方を明確に示して労働者側の理解を得るとともに、従業員自身が希望する道の実現に向けて主体的に行動できるようにすることです。

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No. 質問 回答
65歳以上継続雇用制度として再雇用する制度を導入する場合、実際に再雇用する日は定年退職日から1日の空白があってもだめなのか。 雇用管理の事務手続上等の必要性から直ちに不適切であるとまではいえず、定年退職日から数日程度空白がある場合でも「65歳以上継続雇用制度」として取り扱うことは差し支えない。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には認められない場合もある。
65歳以上継続雇用制度による継続雇用先として認められる他の企業とはどのような企業か。例えば派遣会社も認められるのか。 いわゆる常用型派遣のように雇用が確保されているものは認められるが、いわゆる登録型派遣のように継続的な雇用機会が確保されていると言えない場合には認められない
特殊関係事業主以外の他の事業主で継続雇用を行う場合は、他の事業主との間でどのような契約を結べばよいのか。 事業主間の契約を締結する方式は自由だが、紛争防止の観点から書面によるものとすることが望ましい(欄外の例を参照)。

65歳以降の就業確保措置のうち継続雇用制度の雇用先については派遣会社を含む他の企業とすることも可能ですが、当該企業と契約を締結したうえで70歳までの継続的な雇用を実質的に確保することが求められます。対象者を限定する基準を設けることができるとはいえ、65歳以降の雇用を受け入れる先はかなり限定的であると想定されるため、就業確保措置(の1つ)として他企業での継続雇用を検討する場合は早期に情報収集に着手し、実現に向けた課題の洗い出しを行う必要があるでしょう。

No. 質問 回答
創業支援等措置の契約については、1度に5年間分の契約を締結するのではなく、例えば1年分の契約を複数回繰り返し締結することにより、高年齢者の継続的な就業を確保することも可能か。その場合、どのような契約であれば「継続的に」と認められるのか。 創業支援等措置の契約期間については、適切な業務量や頻度により契約を締結することに留意しつつ労使合意のうえで実施計画に盛り込む必要があり、年齢のみを理由として70歳未満で契約を結ばないような制度は適当ではい
「継続的に」契約を締結していると認められる条件は、
・70歳を下回る上限年齢が設定されていないこと
・70歳までは原則として契約が更新されること(ただし能力や健康状態など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められる)
であると考えられるが、個別の事例に応じて具体的に判断されることとなる。
指針において、「雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反する」と記載されているが、業務内容が雇用時と同様であることだけをもって、創業支援等措置として不適切と判断されるのか。 業務内容が雇用時と同様であることだけをもって、創業支援等措置として法律の趣旨に反するものとはならない。ただし、業務内容に加えて働き方(勤務時間・頻度、責任の程度等)も雇用時と同様である場合には、雇用の選択肢により70歳までの就業確保を行うべきであり、創業支援等措置として行うことは法律の趣旨に反することとなる。
シルバー人材センターや社会貢献事業をあっせんする団体に高年齢者を登録することは、なぜ高年齢者就業確保措置として認められないのか。 創業支援等措置は、70 歳まで継続的に高年齢者が就業できるよう、業務内容や高年齢者に支払う金銭等を含めた事項についての計画の作成と労使合意が必要。
他方、シルバー人材センター等への登録については、それをもって高年齢者の就業先が定まるものではないため、業務内容や支払われる金銭等、計画に記載すべき事項が確定できない。したがって高年齢者就業確保措置とは認められない
継続的な業務委託とは、どの程度の頻度・分量を目安とすればよいか。例えば月数回程度、年数回程度など、定期的に業務を委託する計画内容・契約内容であり、労使間の合意があれば認められるか。 労使間で十分に協議の上で、労使双方とも納得の上で定められたものであれば差しつかえない
具体的な規定の方法としては、例えば創業支援等措置を利用して就業する高年齢者全体に対して企業として発注を行う頻度の総量を定めるほか、個々の高年齢者に対して個別の発注を行う頻度を定める方法が考えられる。
また、個々の高年齢者との契約に際しては、その希望を踏まえつつ、個々の業務内容・難易度や業務量等を考慮し、できるだけ過大又は過小にならないよう留意した上で、計画で定められた頻度から妥当な範囲で定められたものであれば差しつかえない
創業支援等措置における業務委託については、グループ会社の業務を高年齢者に再委託することも認められるか。 高年齢者を定年まで雇用していた事業主がグループ会社を含めた他社から受注した業務の契約当事者であり、当該業務を高年齢者に再委託する場合であれば認められる
指針において、「成果物の受領に際しては、不当な修正、やり直しの要求又は受領拒否を行わないこと」と記載されているが、合理的な理由がある正当な修正、やり直しを求めることはできるか。 高年齢者との契約で定められた成果物の基準に満たない場合に、当該基準を満たすための修正、やり直しを求めるなど、合理的な理由がある正当な修正、やり直しを求めることは可能
創業支援等措置による働き方が、家内労働法に該当する働き方である場合、創業支援等措置についての手続きや留意事項と家内労働法の規定のいずれに従って実施すればよいか。 創業支援等措置による働き方が、家内労働法に該当する働き方である場合には、創業支援等措置についての手続きや留意事項と家内労働法の規定のいずれも遵守して、働き方を定める必要がある。
創業支援等措置における社会貢献事業としてどのようなものが考えられるか。 例えば、
・メーカーが自社商品を題材にした小学校への出前授業を行う事業において企画立案を行ったり、出張授業の講師を有償ボランティアとして務める
・NPO法人に里山の維持・運営に関する事業を委託し、それらの事業に関する業務(植樹、ビジターセンターでのガイド等)に有償ボランティアとして携わる
といったものが想定される。
事業主が創業支援等措置として、他の事業主や団体が実施する社会貢献事業により高年齢者の就業機会を確保する場合、事業主は当該団体との間で、どのような契約を結ぶ必要があるか。 契約を締結する方式は自由だが、紛争防止の観点から書面によるものとすることが望ましい(欄外の例を参照)。
「事業主が委託・出資等する団体」が行う社会貢献事業に高年齢者が従事する場合、支払われる金銭や労働者性の判断基準について、団体はどのような点に留意すればよいか。 団体が高年齢者に支払う金銭については、業務の内容や当該業務の遂行に必要な知識・経験・能力、業務量等を考慮したものとすることが必要であり、高年齢者の就業の実態や生活の安定等に留意する必要がある。
労働者性については、個別の事案ごとに次の判断基準に基づき、活動実態を総合的に勘案して判断することになる。その結果、団体と高年齢者との間の使用従属性が認められるなど、労働者性がある働き方である場合、創業支援等措置ではなく、雇用による措置として就業確保措置を行う必要がある
【労働者性の判断基準】
1 使用従属性
(1) 指揮監督下の労働であるかどうか
 イ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
 ロ 業務遂行上の指揮監督の有無
 ハ 拘束性の有無
 ニ 代替性の有無
(2)報酬の労務対称性
2 労働者性の判断を補強する要素があるかどうか
(1) 事業者性の有無
 イ 機械、器具の負担関係
 ロ 報酬の額
(2)専属性の程度
(3)その他
社会貢献活動の設計に際しては、例えば、契約で定められた範囲のボランティア活動を具体的にいつ行うか等について、高年齢者に参加の諾否の自由がある等、労働者性が認められない方法で規定する必要がある
「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体」について、事業主が雇用している社員の一定数が当該団体に加入し、会費を納めている場合は、事業主が出資等をしているといえるか。また、設立時のみ、設立に要する資金の援助を行った場合、出資等をしているといえるか。 出資・委託等を行うのは事業主である必要があるため、個々の社員が会費を支払っている場合は対象とはならない。事業主が
直接的に会費を支払っている場合は出資等に含まれるが、その際には当該会費が社会貢献事業の円滑な実施に必要な資金として充当されていることが求めらる。
また、当該事業主による設立時のみの資金等の援助については、事業の運営に対する出資(寄付等を含む)や事務スペース又はデスク等の事務備品の提供が就業確保措置に係る社会貢献事業の円滑な実施の基礎になっていると当事者間で認識している場合は、出資等に含まれる。
事業主が創業支援等措置を講じる場合の労使合意は、事業所単位で得なければならないのか。 過半数労働組合等との同意は、基本的には事業所単位で行われることを想定している。
ただし、
・企業単位で継続雇用制度を運用している
・各事業所ごとの過半数労働組合等のすべてが内容に同意している(又は、すべてが労使協定の労側当事者として加わっている等)
場合まで、企業単位で労使協定を結ぶことを排除する趣旨ではない。
創業支援等措置の実施計画において、12の項目が列挙されているが、労使合意していれば12項目すべてを定めなくても良いのか。 創業支援等措置について過半数労働組合等の同意を得る際には、原則として実施計画に全ての記載事項を記載する必要がある(欄外を参照)。
ただし(11)は、業務委託契約を締結する措置を講ずる場合および自社が実施する社会貢献事業に従事する措置を講ずる場合には、記載する必要はない。
また(12)は、該当しない場合には記載する必要はない。
創業支援等措置の実施計画の中に、安全衛生等、災害等に関する項目があるが、創業支援等措置において、具体的にはどのようなことを想定しているのか。 同種の業務に労働者が従事する場合における労働契約法に規定する安全配慮義務をはじめとする労働関係法令による保護の内容も勘案しつつ、創業支援等措置を講ずる事業主において、委託業務の内容・性格等に応じた適切な配慮を行うことが想定される。
業務委託契約において、事前に定めた基準を満たす成果物が納品されない場合でも、契約は継続しないといけないのか。 創業支援等措置の実施計画で定めた契約の解除事由に該当する場合には契約を継続しないことができる
創業支援等措置の実施計画について、自社にいない労働者(出向している労働者や特殊関係事業主に継続雇用されている労働者など)にも周知する必要があるのか。 省令に規定されている以下のいずれかの方法によって周知を行い、自社にいない労働者も計画の内容を確認できる場合には、周知を行っていることとなる。ただし下記1又は3により周知を行う場合、自社にいない労働者がより計画を確認しやすいよう、事業所への掲示等に加えて、自社にいない労働者に書面を交付することが望ましい。
1. 常時当該事業所の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
2. 書面を労働者に交付すること。
3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、当該事業所に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

65歳以降の就業確保措置としての「創業等支援措置」については、雇用によらない措置として法改正により新たに加えられたものですが、70歳までの契約の継続性や安全衛生・災害等への配慮など、継続雇用制度との均衡を図ることが求められています。一方で、業務内容に加えて働き方(勤務時間・頻度、責任の程度等)も雇用時と同様である場合には雇用の選択肢により70歳までの就業確保を行うべきとされており、どのような業務の内容、委託等の方法が創業等支援措置として認められるのか、非常にイメージしづらくなっています。

ただ、雇用かそうでないかにかかわらず、高年齢者に任せたい(任せられる)業務を様々な観点からリストアップしておくことは、シニア人材活用の観点から極めて重要です。
(参考)シニア社員活用3つのパターンとメリット・デメリット

その中で、成果物を明確に定め、働き方に裁量を持たせることができる業務については、65歳以上の高年齢者に限定することなく業務委託契約への移行を可能とする仕組みを検討してもよいでしょう。また、他社からも声がかかるような高度なスキルを持った高年齢者の人材を戦力として活用したい場合には、副業を含め、柔軟な働き方ができるように業務委託契約の選択肢を用意しておくことが考えられます。




著者 : 向井洋平 (むかい ようへい)

向井洋平

クミタテル株式会社 代表取締役社長

1978年生まれ。京都大学理学部卒業後、大手生命保険会社を経て2004 年にIICパートナーズ入社。2020年7月、クミタテル株式会社設立とともに代表取締役に就任。大企業から中小企業まで、業種を問わず退職金制度や高年齢者雇用に関する数多くのコンサルティングを手掛ける。日本アクチュアリー会正会員・年金数理人、日本証券アナリスト協会検定会員、1級DCプランナー、2級FP技能士。「人事実務」「人事マネジメント」「エルダー」「企業年金」「金融ジャーナル」「東洋経済」等で執筆。著書として『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』(経済法令研究会)ほか。

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