社内階段型に代わる新たなキャリア形成のあり方〜今考えるべき、アフターコロナの戦略的人事構想〜人生100年時代の戦略的人事構想会議 第3回
2020年7月29日にウェビナー形式にて、人生100年時代の戦略的人事構想会議 第3回「今考えるべき、アフターコロナの戦略的人事構想 ~パンデミックが労働市場に与える影響と人材マネジメント~」シンポジウムが開催されました。
今回は本講演よりクミタテル株式会社 代表取締役社長 向井洋平の「社内階段型に代わる新たなキャリア形成のあり方」についての提言をご紹介いたします。すべての講演抄録はページ最後よりダウンロードいただけます。
シンポジウム概要
人生100年時代の戦略的人事構想会議 第3回 「今考えるべき、アフターコロナの戦略的人事構想 ~パンデミックが労働市場に与える影響と人材マネジメント~」
開催日
2020年7月29日(水)13:00~18:00
会場
Zoom(ウェビナー)
主催
株式会社ライフワークス
株式会社アクティブアンドカンパニー
エッセンス株式会社
クミタテル株式会社
講演者
山田 久(㈱日本総合研究所 副理事長/主席研究員)
「コロナ危機で変わる労働市場・人材戦略」
松澤 巧(味の素株式会社 執行役員人事部長)
「味の素の働き方改革と自律的成長の実現に向けて -ウイズ・アフターコロナを見据えて-」
杉山 実優(経済産業省/官民若手イノベーション論ELPIS)
「未来をつくる5つの価値変化とその方法としての全世代型イノベーション」
企業主体から個人主体への転換
コロナ禍により働き方が大きく変わってきています。リモートワークが浸透し、主要拠点のオフィスを縮小・撤退させ、在宅勤務環境やサテライトオフィスを充実させる方向になっています。
また、企業にとってはリモートワークを整えることで働く場所や時間の制約が取り払われ、勤務地の希望や育児・介護などの事情がある人材の活用・活躍の機会が広がっています。一方で、働き手側の選択肢も広がりますから、働き方に制約のある企業は選ばれにくくなるでしょう。加えて、実力のある人材ほど会社の枠を超えて活躍するようになるため、企業による囲い込みが難しくなり、人材獲得競争はますます激化していくと考えられます。
こうした状況下で、短期的には外出自粛を余儀なくされた中での対応を振り返り、生産、マネジメント、セキュリティ等の観点から、ウィズコロナ下でも事業を停滞させないための改善を図っていくことが求められます。一方で中長期的には労働市場の変化にどう対応していくか、社員のキャリアパスをどういう風に描いていくかということを考え直していく必要があるでしょう。
多様性に対応できない社内階段型キャリアパスの限界
そうした社員のキャリアパスや人材マネジメントを考えるうえで、多様性は非常に重要なキーワードの1つになってきます。多様性には2つの側面があります。1つは、これまでとは「異質」な人材を呼び込むことで、事業の成長拡大やイノベーションの創出を目指すという側面。もう1つが、多様な人材が働ける労働・教育環境を整えることで、採用や就業継続の枠を広げ、人手不足を解消するという側面です。
いずれにしても、同じ会社の中で階段を昇っていく形のキャリアパスを一律に当てはめるのは、限界がきていることが分かるかと思います。
組織の枠を超えて活躍できるだけの実力を持った人材を一社に囲い込むことは難しいですし、70歳就業時代を迎える中で、個人の生涯にわたるキャリアを一社で抱え込むことも困難になります。
新たなキャリアパスの形
それでは、これからの時代にふさわしいキャリアパスとはどのようなものなのか。ここでは以下の3つの形を提示したいと思います。
①リテンション型(特化型職種×安定性・継続性重視)
安定性、継続性が重視されるビジネスにおいてはこれからも長期雇用が大事になるでしょう。ただし、70歳までの雇用を想定すると年功序列では持ちません。長く活躍し続けられるための職場環境の整備とともに、 70歳雇用に耐えられるような仕組み作りが大事になってきます。
退職金制度についてはそれ単体ではなく、長く働ける機会や公的年金の活用と組み合わせて老後の安心を提供していく考え方になります。
②パートナー型(特化型職種×新規性・即応性重視)
個人の裁量が重視されるようなビジネスにおいては雇用という形にとらわれず、そこから卒業して企業と個人が対等な関係を結び、仕事を進めていく形が考えられます。副業・兼業の推奨や業務委託契約の仕組み、アルムナイの組織化など、個人の自立を支援していくことになります。
退職金制度については引退後資金の積み立てと自立時の資金支援の両立を考えていく必要があるでしょう。
③フロー型(汎用的職種)
コーポレート機能を担うような職種は各社共通の職務要件が定義しやすく、ポストに対して処遇と人材を紐づけていくジョブ型雇用がフィットします。新卒一括採用や終身雇用とは決別し、流動性の高いフローのキャリアパスになります。
退職金制度については、転職が不利にならないよう、ポータビリティが重要になります。
講演抄録ダウンロード
本シンポジウムの講演抄録はこちらのフォームからダウンロードいただけます。
出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう
労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。
シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。