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ニーズの高まりを見せるキャリア研修――その背景と成功へと導くポイント 前編 | ライフワークス 梅本郁子氏 × 退職金専門家 向井洋平

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ニーズの高まりを見せるキャリア研修――その背景と成功へと導くポイント 前編 | ライフワークス 梅本郁子氏 × 退職金専門家 向井洋平

厚生年金の支給開始年齢が 65 歳へと段階的に引き上げられている中、定年退職する年齢は 60 歳という企業がいまだに多いというのが現状だ。収入が“空白”になる 5 年間をどうするのかという課題に対し、定年を 65 歳に引き上げる、再雇用を行うなどさまざまな策が取られている。60 歳以降も活き活きと働き続けるため、一人ひとりには何ができるだろうか。そのヒントになるのが「キャリア研修」だ。活性化した組織を作りたい企業と、生活を安定させたい従業員の課題解決につながるキャリア支援サービスを提供している株式会社ライフワークス 代表取締役 梅本郁子氏と退職金専門家 向井洋平に話を聞いた。

—ライフステージによって変わるキャリアという特性

向井  ライフワークス社はどのようなサービスを展開されているのかなど教えていただけますか。
梅本  当社は 2000 年の創業当時から、法人向けキャリア支援サービスを提供しています。もっとも、その頃は「キャリア」という言葉が一般的でなかったこともあり、定年後のセカンドライフを充実させるための「ライフプラン研修」として導入する企業もありましたが。
ライフワークス_002

向井  少しずつキャリアに世間の注目が集まってきた。
梅本  そうですね。若い世代を中心に自分自身でキャリアを選びたい、それを実現させるには何をすべきか、ということを考えるように社会が変化してきたと感じています。会社も、社員には主体的にキャリアを考えて行動してほしいと考える傾向にあり、キャリア研修を導入する企業が増えてきています。
向井  法人向けキャリア支援サービスに着目されたのはどのような理由からだったのでしょうか。
梅本  仕事上の転機がきっかけです。新卒でリクルートに入社し、社員研修事業部に配置され、社員研修の営業職を経験しました。関連会社なども経て、再度その事業部に戻ってきたときに、中高年向けキャリア研修の開発を担当しました。

しばらくして、その研修が販売終了することが決まりました。研修受講者の皆さんからの反応も良く、長年実施している企業も多いこの研修を無くしてしまうのは忍びない、と思ってリクルートに交渉したんです。「この研修を無くすのであれば自分が継続したい」と。

すると、リクルートから「法人として研修を引き継いでくれるなら移管します」との回答をもらい、急ぎ会社を設立したというのが創業の経緯であり、キャリア支援サービスを提供するようになった所以です。
向井  入社時に起業を志していた、というわけではなかったんですね。
梅本  起業なんて全く頭にありませんでした。その当時私は、 2 人目の子どもが生まれ、育児をしながらリクルートで働き続けるのに限界を感じていた、というのもあります。また、一緒にこの事業を継続しないかと声掛けした上司や同僚の中に 3 人の賛同者がいてくれたことも、起業への大きなはずみとなりましたね。

創業当時は「24 時間働けますか」のコマーシャルに象徴されるような長時間働けることが前提の社会だったように思います。でも、家庭や子どもをもってみて、「仕事の余った時間で家族のことや自分のことをする時間をやりくりする、というのはなにか違うのではないか?」という思いが強くなりました。ライフもワークも両方大切にしたい、という想いを込めて、「ライフワークス」という社名にしました。
向井  まさにワークライフバランスの先駆けですね。
梅本  ちょっと先を行き過ぎてしまいましたけどね (笑) 。

—キャリア研修が増えてきたわけ

向井  キャリアへの関心度が高まっている背景には何があるんでしょうか。
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梅本  年金支給年齢が 65 歳に引き上げられたことと、それに当てはまるシニア世代の人口が増えている、ということがその背景にあります。

シニア世代が増えたことは過去にもありましたよね。「団塊の世代」が一斉に定年退職を迎えた頃のことです。

でも、彼らの場合、年金は定年退職と同時にもらえました。そのため、お金の心配よりも「どのような生活を送ろうか」というライフプランへの関心が高かったわけです。

でも今のシニア世代は違います。定年退職の 60 歳から年金をもらえるまでの 5 年間、どのように生活の糧を得るのかというのが課題になります。

そのため、多くの企業では再雇用制度を用意しており、最近は 60 歳定年制から 65 歳に引き上げる企業も出てきています。「再雇用してもらうかどうか」をたずねた調査で、最も高いものでは 8 割もの社員が、それを選択すると回答しているものもあり、実質 65 歳まで雇用する、というのが企業側の認識のようです。

とはいえ、シニア社員が担う仕事を全員分用意するのは、企業としては難しい。新しい技術やスキルを身に付けさせて、若い人たちが行っているような仕事にシフトしていただく、というのもなかなか簡単ではありません。

一方、シニア社員の視点では、組織を若返らせるためにやってくる役職定年で、それまで自分がマネジメントしていた部下が上司になったり、マネジメント業務から一担当としての業務に仕事が変わったりして、さらに給料も下がるためモチベーションが下がってしまう。

そうすると、今度はその周りの若手社員へも悪影響が及んでしまう、ということで組織全体にとってシニア社員にどのように活躍してもらうかということへの関心度が高まってきている、というわけなんです。
向井  なるほど。ちょうどわたしの父が団塊の世代で、退職後も時折会社に呼ばれて後進の教育に行っていたようですが、65 歳や 70 歳まで再雇用されてフルタイムで働く、ということはありませんでしたね。同世代の方はキャリアプランよりライフプランに関心があったのだと思います。
梅本  団塊の世代が抜けた直後は、企業が抱えるシニア社員は少なかったかもしれませんが、今度はバブル期に入社した人たちが 50 代に突入していて、また社員の人員構成に山が来ている状況です。そして、団塊の世代ジュニアの山も見えてきています。企業側は、それを視野に入れつつ対策を講じていこうとしているところです。
向井  政府で行われている未来投資会議でも、定年年齢の引き上げやグループ企業内外での継続雇用制度の導入、フリーランス契約、起業実現支援など 70 歳ぐらいまで自分で仕事ができるような制度を設けるように、という話がでてきていましたね。
梅本  そうなんです。グループ企業外での再雇用やフリーランス、または起業して外部の人間として働く、という提案が含まれているのが肝で、“その企業だけ”が働く場ではない、というメッセージがある、と感じました。

多様なキャリアの選択肢から、自分で考えて自分で選ぶ、キャリア自律の重要性がクローズアップされているのではないでしょうか。
向井  そうすると、社員がシニア世代になるよりもっと若いうちに、そのような選択肢があるということを提示していく必要がありそうですね。
梅本  それもあってキャリア研修のニーズも増えてきていると思います。
向井  シニア社員が、自分でキャリアについて考える必要が出てきている。会社に残るならその中で何ができるかを考え、そうでないなら社外を含めて広い視野を持つ。それを考えるのがキャリア研修。
梅本  そうですね。社内でどのように貢献できるか、ということを中心に研修を組み立てますが、社外も視野に入れつつ今後のキャリアを自分で考える、というメッセージを発信される企業もあります。そこは会社ごとに異なる、というところですね。

—企業としてのキャリア研修の位置づけと活用法

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向井  これもまた会社ごとに異なるとは思いますが、企業にとってキャリア研修はどのような位置づけになるのでしょうか。
梅本  社員に対して会社のメッセージを発信する場だと考えています。発するメッセージは研修の対象年齢によっても異なりますが、「このようなことを期待しています」ということを伝えられますし、人事制度や退職金制度についてフォーマルに伝えることもできる。

社員側からすれば、普段の業務時間内では取れない、自分のキャリアについて考える時間が取れるわけです。「会社はあなたたちのキャリアをサポートしている」というメッセージを理解するからこそ、「こういう機会を設けてくれたことに感謝している」というアンケートへの回答につながっているのだと感じています。
向井  とはいえ、研修を実施しただけ・受けただけでは次につなげるのは難しいと思います。キャリア研修を最大限に活用するために、社員側、また企業にできることもまだありますよね?

次回、キャリア研修を最大限活用する方法について語ります。
「ライフワークス 梅本郁子氏 ×向井洋平 ニーズの高まりを見せるキャリア研修――その背景と成功へと導くポイント 後編」に続く >

※取材日時 2019 年 5 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

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