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「余生」という概念を覆す! パラダイス制度でずっと働き続けられる仕組みを導入|テンポスバスターズ 後編

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「余生」という概念を覆す! パラダイス制度でずっと働き続けられる仕組みを導入|テンポスバスターズ 後編

人生 100 年時代を迎えると、リタイア後の生活資金をどのように確保するかが重要な課題になる。定年退職までの間にしっかり蓄えて、収入の大切な柱である年金の計画もしっかり立てておく、というのがその対策の多くの部分を占めているのではないだろうか。しかし、逆転の発想で、リタイア自体をなくすという取り組みをしている会社がある。テンポスバスターズだ。リタイアがないとはどういうことなのか、同社が取り入れている「パラダイス社員」とは? テンポスバスターズ人事総務部・人材事業部部長代理 杉本啓鑑 氏と退職金専門家 向井洋平に話を聞いた。 (2019 年 8 月 22 日取材時点の内容です)

—ブランド力アップのために採用した「パラダイス社員」とは

向井  自分の仕事に対するスタンスに応じて、年齢に関係なくキャリアを決められるというのは非常に興味深い取り組みですよね。
退職金専門家 向井洋平

杉本  とはいえ、超高齢化社会を迎えて、シニア世代も重要なヒューマンリソースだという認識が高まってくると、採用の競合が増えてくるのではないかと考えています。そのため、よりインパクトのある制度が必要だと感じました。
向井  それが「パラダイス制度」につながる、というわけですね。いつ開始されたんでしたっけ?
杉本  2019 年 7 月からなので、まだはじめたばかりですね。

弊社はリサイクル厨房機器の販売企業です。販売するということは個人に目標が課せられています。とはいえ、60 歳を超えてくると、今までと同じように働くのが難しくなってくる。しかしその年齢で他社へ転職というのも難しい。ならば、弊社に在籍しながら、「これまでの半分の数字をこなせれば、それなりの給与を支払う」ということにしたらどうか、ということで作られた制度がパラダイス制度なんです。

対象者は 60 歳以上で 10 年以上弊社に在籍していた人。これまで、テンポスバスターズ最前線で利益を上げるために頑張ってきてくれた人たちへの感謝を込めた制度というわけです。
向井  そんな素晴らしい制度であれば、対象者全員が応募したのではないですか?
杉本  蓋を開けたら、対象者のうちわずか 2 割に当たる 7 人の応募しかありませんでした。つまり、「まだまだ前線で負けていられない!」と考える人のほうが多かったということですね。頑張りたい人は頑張れる、そろそろペースを落として働きたい人も今まで通りの職場で働きたい。その両方の声を聞くにつけ、この制度を取り入れて良かったと感じています。
向井  今すぐにはパラダイス制度に乗らなくても、将来、体や気持ちがついてこなくなっても働けるという安心感は、今を生きようという働くうえでの大きなモチベーションに繋がってくるのかもしれないですね。

ある意味退職金と同じという考えでしょうか。
杉本  そうですね、弊社では定年制がないので、退職金制度も設けていませんしね。
向井  ある年齢になったときに、一律に会社を辞めてもらってお金を渡すのではなく、仕事のレベルを落として働ける場所を提供する。もちろん給与はきちんと支払う。それにはこれまで会社の利益のために働いてくれたという感謝の意味も込もっている。

わたしは雇用とキャリアの出口戦略であるイグジットマネジメントを提唱しているのですが、それを実現するための一つの手段だと、この制度についてお聞きした時に感じました。人生 100 年時代において、職業人としての人生をどのように終わらせるのか、その道筋を提示している制度ですよね。
杉本  とはいえ、現場で働いていた人は、パラダイス制度の恩恵にあずかれますが、役員にはそれがない。なので、雇用を継続する、株式で還元するなど、まだまだ制度を作っている段階ではあります。

—前職のキャリアより人柄を見る採用方針

向井  シニア世代の方も積極的に採用されていますが、経歴や人柄など重視されていることはありますか。
杉本  経歴は関係なく、人柄重視で採用しています。販売がメインの企業ですから、コミュニケーションを取れる人、というのは最低限のラインですね。

また、向上心があること、前向きに一生懸命取り組める人、というのも必要な要素となっています。おかげさまで、笑顔の素敵な人がとても多い会社になっているのではないかな、と思います。
テンポスバスターズ 杉本啓鑑 氏

向井  経歴が関係ない、ということは前職が管理職とか現場だったなどを気にしないということですか。
杉本  同業出身者であれば即戦力になるので、それに越したことはありませんが、他業種から転職する人が断然多いです。また、前職でのポストも、社長もいれば中間管理職も、現場でバリバリやっていた人もいて、多種多様ですね。
向井  それだけさまざまなところから採用されると、一緒に働くのが大変なのではないでしょうか。特に、前職でのポストが高い人であればなおさら。
杉本  他社でもやっているかと思いますが、弊社でも入社前に2カ月間の試用期間があります。その間、コミュニケーションが取れるか、気が利くか、などチェックします。接客トレーニングでは、トークのテストもあります。筆記試験も含め、それらをチェックしながらテストなども経て、本採用、ということになっています。

ただこれは、上から目線で「はい採用」「はい不採用」というわけではなく、入社しようという人にとっても、弊社をテストしていただく期間ともなります。「ここなら本当に入社してもいいかな」と判断していただき、それから入っていただける。だからなのか、本採用後の離職率はかなり低く抑えられています。
向井  今日、同席されている広報部の谷口様も中途採用ですよね。
谷口  社長と社員との距離がポストに関係なく皆同じなので、このフラットさが気持ちいいと聞いたことがあります。年功序列に慣れて部長風を吹かせるようなタイプの人にはこの職場は不向きかもしれないですね。
向井  とはいえ、経験年数に応じて昇進・昇格していくというルートがないので、若手や中堅の社員にとってはキャリアが描きづらいのではないかというふうにも感じますが、その辺りはどのように考えていますか。
杉本  ご指摘のとおりですね。これまではチャレンジしたい人が手を挙げる立候補制度にしていたのですが、会社が大きくなるにつれ、キャリアの段階も提示していく必要が出てきていると感じています。「1 年目でこれだけの実績があったので、次の年はこれをクリアすれば、給料が上がる」というような等級とキャリアを組み合わせた制度ですね。

弊社の場合、定年制を設けていないこと、採用年齢の上限を設けていないことから、自然と 60 歳以上の社員が多くなっており、40 代 50 代は少ない。自分のキャリアが思い描ける制度を整えれば、そのような年代の人への訴求力にもなるのかなと。

もちろん、チャレンジできる環境も残しておきつつ、そうでない人にも上がっていくイメージができるような制度、ということを意味しています。
向井  逆に、一般的な企業であれば第一線で会社を引っ張っていくような年代の人がいなくても業績を伸ばせているというのが、御社の強みかなと思います。これはほかの会社でもできるでしょうか。
退職金専門家 向井洋平

杉本  社長のパーソナリティーによるところが大きいので、仕組みだけ取り入れても難しいのではないかと考えています。
向井  仕事の成果に応じた処遇を徹底していくと良くも悪くも給与が変動する部分もありますが、生活の安定といったところが弱くなりますね。
杉本  特に、以前の 3 ヵ月という単位の売上に応じて翌 3 ヵ月の給与が決まるという制度では、子育ての年代としては不安定で厳しいものがあったようで、これが中抜けの原因になってしまったのではないかと思います。今では成果だけではなく、役職や等級も評価材料に加えることで給与制度を変え、実績は賞与などで還元する制度に変更しています。
向井  実績は賞与で還元することで毎月の基本給が安定するようになれば安心感にもつながりますね。

—ケアしていけば長く働いてもらえる

向井  ところで、多くの高齢者が働いているということで、課題を感じていることはあるでしょうか。
杉本  「年齢で区別しない」と言ってはいるものの、加齢による衰えへのケアは必要になってきます。

例えば、長時間集中すると疲れてしまうので、昼休みの時間を多めに設けて、ベッドなどでしっかり休んでもらうとか、ゆっくり脳を休める時間を作るとか。

また、作業前のラジオ体操は本社も含め、必ず全店で行うようにしています。そのほかのことを特別にやっているわけではないので、有効な方法がなにかないかな、と模索しているところです。

また、長時間労働を長く続けると健康に支障をきたしますし、帰宅後の家族との時間を有意義なものにできなくなってしまうため、残業をさせないよう指導しているところです。
テンポスバスターズ 杉本啓鑑 氏

向井  何歳から衰えが見えてきますか。
杉本  65 歳をすぎると、疲労感が見えてくる人が増えるようですね。
向井  でも、その年齢までは若い人と変わりがない。
杉本  そうです。また、65 歳以上でも、人それぞれですね。ラジオ体操で跳躍はできなくなっても、まだまだ若い人には負けてられない、とか若い人たちを引っ張っていきたい、という気概を持っている人はまだまだ多いように感じます。
向井  他の企業でも定年制の廃止、そして定年に付随する退職金も廃止したほうが良いとお考えでしょうか。
杉本  定年制や年齢に応じて待遇を変える、というのは弊社ではナンセンスな考えです。本当はもっと頑張りたいとか、能力があるのに年齢で線引きされてしまうのはもったいない。頑張りたいなら頑張ってもらいましょう。衰えが見えたらわたしたちのほうでケアしましょう。「シニア社員」という言葉すらあまり使いたくはありませんが、長く働いていただいて、その結果シニア社員が増えて日本社会の縮図のような人口構成になっても成功しつづける企業になるというのが私たちの考え方です。
向井  定年制がない中で高齢社員の方はどのようなきっかけで辞められるのでしょうか。
杉本  本人が、「これ以上いては周りに迷惑がかかる」と感じて辞めていく場合が多いです。きつそうに見える場合、面談して勤務時間を変えたり、働く場所を変えたりということを打診するのですが……。70 歳を超えると、辞めていく人が増えてきてしまいますね。
向井  他社でも定年制をやめれば、そのくらいの年齢までは元気に働ける、ということでもあるのでしょうね。退職金についてはどうでしょうか。
杉本  社員に還元したいからその制度を設けているというのであれば良いと思いますが、形式的にやっているだけであれば、弊社のように、長く勤められるような制度を作ったほうが幸せではないかな、とは感じます。
向井  退職金制度は、一度作ったらすぐには変えられませんからね。 ただ、ケガや病気などで働けなくなってしまったときのために、GLTD (団体長期障害所得補償保険) のような福利厚生を設けることで、安心して働き続けられるようにすることは考えられるかもしれません。

年齢に関係なく、その時の体力ややる気、状況に応じて1つの会社の中で柔軟に長く働ける環境を用意している御社の仕組みは、働かせ方ではなく、社員自身が働き方を決めていく段階に社会が進んでいくための 1 つの道筋になるのではないかと感じました。ありがとうございました。
テンポスバスターズ 杉本啓鑑 氏 退職金専門家 向井洋平


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※取材日時 2019 年 8 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

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