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JIN-G 三城雄児氏 ×向井洋平 令和時代の人事に求められるキャリア自律への支援とは 前編

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JIN-G  三城雄児氏 ×向井洋平 令和時代の人事に求められるキャリア自律への支援とは 前編

「人生 100 年時代」―― 60 歳から 65 歳に定年が引き上げられたとしても、100 歳までにはまだ 35 年も残っている。退職後に仕事をするかどうか、するとしたら再就職先はどこにするかなど、選択しなければならないことは多い。定年直前では、充分な備えもできないだろう。そのため、ミドル・シニアと呼ばれる世代のうちに、何ができるかを考えておきたい。大学教授及びコンサルタントとしてグローバルに活躍できる人材の育成に力を注いでいるビジネス・ブレークスルー大学准教授及び株式会社JIN-G代表取締役 三城雄児氏と退職金専門家 向井洋平に、今求められる「キャリア自律」について語ってもらった。

—教えずに自ら習得してもらうことを目指した研修プログラム

向井  三城さんとは、知り合ったきっかけは人事コンサルタントの養成講座でしたね。どんなお仕事をされているのか、改めて教えていただいてもよろしいでしょうか?
三城  ビジネス・ブレークスルー大学や上智大学で教壇に立ちながら、 株式会社JIN-Gを創業して会社経営を約 10 年間やっています。日本人が本来持っているビジネスや組織・人事に関する伝統的な考え方を大切にしながら、日本だけではなく世界中に活躍できる人材を育成する支援をしています。日本の人事は特殊だと言われますが、良い面がたくさんあります。私は副業(?)として、世界人材マネジメント協会やアジアパシフィック人材マネジメント協会の仕事もしているのですが、日本の代表として各国の人事関係者とディスカッションすることで、日本の人事の特徴や強みについて、世界に伝えていくことを使命として活動もしています。
向井  今回はフィジーから帰国されたばかりだという。今回は何をされてきたのでしょうか?
三城  フィジーではアジアパシフィック人材マネジメント協会の役員会に参加してきました。フィジーの前後はベトナムのホーチミンやタイのバンコクで、経営するJIN-Gが実施している海外研修の様子をみてきました。この海外研修は、日本の大企業の若手社会人が大多数を占めています。
向井  日本の企業の海外駐在員や、そこで働く外国人ではないということですね?
三城  そうですね。若いうちから世界で活躍できるグローバルマインドセットを持って欲しい、ということで若手社会人が受講しています。海外で実施することで、いま世界の人材育成で注目されている「セルフ・アウェアネス(自己認識力)」を高めることができます。セルフ・アウェアネスとは、自分自身のことをより良く深く理解する力であり、これからの人類にもっとも重要な能力だと言われています。自分のことってあまりわかっていないのですよね。この海外研修では、いつもと違う環境でいつもと違う仕事をすることが求められます。矛盾するようですが、「いつもと違うといつもの自分がわかる」のです。日本以外に海外旅行すると日本のことがよくわかったりしますよね?それと同じです。自分が仕事上で無意識にしていることを自ら発見する「内省型」教育の場として、海外は最適なのです。
向井  三城さんの研修では、こちら側から何かを提供するというより、受講者に考えてもらうスタイルを取っていらっしゃいますよね。
三城  そうですね。記憶に残らないのが良いファシリテーターだと、ある人に教えていただいてからは、受講生自身が壁を自分で乗り越えて自ら成長したこと実感するという環境づくりに注力しているからでしょうね。こちらからは教えない、自分で習得してもらうのをわたしの研修プログラムのコンセプトにしているんです。
JIN-G 三城 氏

向井  同じコンサルでも、三城さんのものは新鮮に映ります。
三城  向井さんの場合、専門領域を教えてスキルセットを身に着けてもらう必要がありますから、違うのは当然ですよね。
向井  確かに。三城さんの場合は、会社組織の文化や個人の意識まで踏み込んでいる。
三城  それって、経営者や従業員の内側の変化が必要なんです。外側だけ変えても問題は解決しません。人事制度でルールを徹底したり、教育研修で知識や技能を習得させたとしても、十分な効果がでないのです。外側だけ変えても意味がない。一時的に良くなっても、また同じ問題が露出します。「組織の文化」や「個人の意識」というのは、外側からの刺激だけでは変容しないのです。当事者である経営者や従業員の心の中にある価値観やスタイル、もっと言うと、意識すらしていない「無意識」の領域まで変容しないといけないのです。本人たちが「勝手にやる」「自然にやる」「気づいたらやっている」という領域になるのがゴールです。
向井  「自律」というワードの背景を感じさせる濃いお話ですね。

—自律型人材が求められている背景とは?

向井  今日のテーマは「自律型人材」とその育成、ということですが、そもそもキャリア自律、つまり仕事における自律型人材はなぜ求められるようになったのでしょうか。三城さんの考えをお聞かせください。
退職金専門家 向井洋平

三城  15 年ほど前から「自律型人材」という言葉が出てきました。以前であれば、会社の規律に従って、指示されたとおりに、それだけをやっていれば組織はどんどん大きくなっていきました。他律型のヒエラルキー組織は効率がよく、安定して成長できる。

対する自律型組織、最近ではティール組織という言葉も流行っていますが・・・、これは現場でアイデアを出しながらその場で意思決定ができるような組織なので、他律型のヒエラルキー組織とは真逆の方針なんです。

ヒエラルキー組織である大企業の経営層を中心に、「自律型人材がいたほうが会社が良くなる」と思っている人が一定数いる、と思います。企業ガバナンスの極端な強化や行き過ぎた合理主義経営の導入により、過去の企業が持っていた自由な雰囲気や、勝手な活動が多少は許される風土が、ほとんど許されなくなったことへの反動もあるでしょう。
向井  今、大企業になっているところはものを作って売ればいい、という時代が変化しつつあるのを感じ取っていて、それで今後何をしたらいいのか、会社としてどういう方向を目指すのか、という分岐点に立たされているのかもしれないですね。
三城  そうですね。経済が安定成長になって、このままこれまでどおりの方法でものを作ったり提供したりしていては、シェアを食い合ってしまうだけ。他律型人材は、会社の方針に従ったことをするので、オリジナルの発想が生まれない。だからイノベーションを生み出せる自律型人材が必要だ、と感じているのでしょうね。

しかも、AI など技術がどんどん発達していて、いずれ単純業務は 機械 に任せる時代が来る。それに備えて、今から自律型人材を確保しておきたい、という狙いもあるのかもしれませんね。

—自律は人間の自然な姿なので強制して育てるものではない

向井  今、自律型人材が求められているわけですが、どうすれば育成支援ができるのでしょうか。
三城  自律型人材は、つくろうとするとつくれない。自律型人材育成のジレンマです。「自律してください」と言われて努力するのであれば、それは自分の意志ではなく他人から言われたことを行っているに過ぎないので「他律」になってしまう。教えられてなるようなものではない。自律型人材というのは、自分の内面から沸き起こる意志に従って行動する人材です。「自律しろ」と言われてやるのではないのです。従って、経営者や上司から促されるのではなく、自分の意志で行動したいと思ってもらう必要があるんです。
向井  確かに難しいですね。自分が本当に心からこうしたい、というのを出せるようにしていかないといけない。
三城  さらに難しいのが、経営者や上司が「やり方」だけ変えても、なかなかうまくいかないという点です。JIN-Gでも、10 年経営してやっと自律型人材プールが形成されてきたかなという感じです。私が経営者としてダメだったのは、表面的には「みんながやりたいようにやっていいんだよ」と言いながらも、心の中では「あの人にはこうなって欲しい」「この人にはこうして欲しい」と私自身のエゴイズムがすごくあったのです。付け焼き刃のコーチング手法なんかも使いながら、とにかく社員に何かを求めていた。つまり、私自身が先頭に立って会社をコントロールしていたのです。

人は、言語だけでなく、表情や語調から判断すると言いますが、実際はもっと違います。人は、無意識の世界で渦巻いている“空気を読む”のです。そして、経営者や上司が望むであろう答えを、無意識に出そうとしてしまう。人間には、生まれながらに持っている承認欲求があります。経営者や上司から認められたいという気持ちがありますからね。でも、従業員や部下が経営者や管理職からの承認を得たいという気持ちだけで動く組織は自律型にはならない。意識的にせよ、無意識的にせよ、「あの人、こう思うだろうな」と考えていては、真の自律型人材とはいえないんです。

自律型の経営を実践したかったのですがなかなかうまくいかない日々を過ごしていた私は、会社がどん底まで落ち込んだ時に、天外伺朗さんが運営する経営塾に行きました。

天外さんはソニーで開発の責任者をしていた方ですが、今は、自律型の経営を目指す多くの経営者に向けて経営塾をされています。他にも様々な活動をしているのですが、その話はここですると長くなるので省きますが、悩みに悩んだ末に辿り着いた天外塾で最初に言われたのは「考えない」「判断しない」「行動しない」「感じる」というもの。経営者自身が会社をどうしたい、従業員をどうしたい、もっとこうして欲しい、何かやらねばというような自分の気持ちを手放して、従業員がやるに任せる、というものです。「手放す」がキーワードですね。

メンバーが何かで失敗したと報告されても「そういうことも起こるよね」と、良し悪しの判断をしない。相手のすること、したことに優劣をつけず、ただ感じたことだけ伝えていました。最初の頃は「なにも言わない三城さんは社長としての責任を果たしてない」などと、不満の声も上がってましたが、3日間もすると、自分たちでディスカッションしはじめ、わたしが考えもしなかったような会社を復活させる提案がでてきた。組織のメンバー全員が自律に向けて動き始めた瞬間。それは、私自身がコントロール願望を捨てたことで起こったことでした。
向井  ヒエラルキー型の組織が多い中で、そのように自律型人材を育てる、というのは大変難しいことだというのがよくわかりますね。企業に限らず、わたしたちは子どもの頃から言われたことに従うように訓練されてきていますから。
JIN-G 三城 氏 退職金専門家 向井

三城  なので、アンラーニング、学んできたことを一旦リセットする必要があるんです。教育もそうだし、社会生活の中で、「こうしなければいけないものなのだ」というべき論が潜在意識下に植え付けられてしまう。多くの組織は、不安や恐怖を材料に会社運営をしています。「このままだと会社が潰れちゃうよ」「このままだと給与が払われないよ」などと、不安や恐怖を示しながら、自らの指示の正当性を証明しているのです。会社組織としてはよくあるやり方なのですが、不安や恐怖を使った指示や命令からは、真の自律型人材は生まれてこないんです。
向井  リセットするいい方法はあるんでしょうか。
三城  きれいな解決策はないと思います。自分が思ったこと、抱えている葛藤、普段あまり口にしないような自分の内面をさらけだせる場がまず大事だと思います。自然にでてくることを自然に理解しあえる仲間をつくることです。
向井  “自然”ですか。
三城  小さいうちは、相手がどう思うかなど考えずに、自分の話したいことだけを話しますよね。つまり、それが自然なことですし、自律している状態。それに戻していきましょう、ということですね。

次回、キャリア自律支援で企業が取り組むべきことや社員に考えてもらいたいことについて語ります。
「令和時代の人事に求められるキャリア自律への支援とは 後編」に続く >

※取材日時 2019 年 3 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

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