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JIN-G 三城雄児氏 ×向井洋平 令和時代の人事に求められるキャリア自律への支援とは 後編

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JIN-G  三城雄児氏 ×向井洋平 令和時代の人事に求められるキャリア自律への支援とは 後編

「人生 100 年時代」―― 60 歳から 65 歳に定年が引き上げられたとしても、100 歳までにはまだ 35 年も残っている。退職後に仕事をするかどうか、するとしたら再就職先はどこにするかなど、選択しなければならないことは多い。定年直前では、充分な備えもできないだろう。そのため、ミドル・シニアと呼ばれる世代のうちに、何ができるかを考えておきたい。大学教授及びコンサルタントとしてグローバルに活躍できる人材の育成に力を注いでいるビジネス・ブレークスルー大学准教授及び株式会社JIN-G 代表取締役 三城雄児氏と退職金専門家 向井洋平に、今求められる「キャリア自律」について語ってもらった。

—すべての業種で自律型人材を求める必要はない

向井  自律型人材が会社にいられるようにするには、それには組織全体がヒエラルキー型を脱して、ティール型に変わっていく必要がある。ヒエラルキー組織で、他律型人材をよしとするような文化があるところでは、自律が無駄になってしまいます。
三城  どうやら自律型人材を育てなければならないという風潮があるようですが、業種によっては標準化されたプロセスのもとで、言われたことをしっかりと実行するという人材の方が必要であるということを、認識しておかないといけません。例えば、鉄道の運転手さんなどは、決められたルール通りに仕事を実行することが求められます。ちょっと工夫をして、スピードをだしてみましたとはいきませんよね。

標準化されたビジネスをとにかく回すことを今後も求めていくのであれば、これまでどおりで問題ないですし、標準化されたビジネスが未来も続く見込みがあるのであれば、今まで通りの人材マネジメントを継続すれば良いのです。決められたことをしっかりと実施してくれていれば、徐々に昇給して幸せな人生を過ごせますという制度で良いのです。しかし、テクノロジーの変化によって、標準化されたビジネスプロセスは、だんだん人間が実施しなくなってきています。例えば、前述の鉄道運転手の業務は、機械によって代替は可能になってきていますね。

テクノロジーの進化の影響など、将来の経営環境を鑑みて、経営戦略としての人事戦略を考えていくことになると思います。私は人事戦略は経営戦略の下にあるものではなく、表裏一体だと思っています。人がやる業務をどうしていくのかは、経営戦略の重要な検討要素の一つです。経営と人事の戦略は、どちらかだけ決めて、他方は後からでいい、というものではなく、裏表 (ウラオモテ) の両方を見ながら検討していく、というイメージで考えていただきたいですね。
向井  人の意識を変える前に組織文化の変容が、また組織文化を変えていく前に組織全体の方向性をしっかり定めないといけない、というわけですね。
三城  新入社員に自律を求める企業担当者は多くいらっしゃいますが、「これから入社してくる人が自律できるように研修してほしい」と言われて、新人研修時期にそのマインドセットにしたところで、配属後の現場業務の進め方や組織文化(カルチャー)が過去のままであれば、新入社員のマインドと業務で求められることの間にミスマッチが生じてしまう。一部分の人たちの意識だけ変えてもダメで、全体の組織文化が変わっていく必要があります。個人の意識変容と組織の文化変革を同時におこなっていくことになります。

—ミドル・シニアに考えてもらいたい「キャリアチェンジ」とは?

向井  これまで同様のヒエラルキー組織で、社員を守るためには社員の居場所、仕事を用意する必要があります。
三城  海外では”Aging Workforce (労働力の高齢化) “といって高齢化する労働力にどう対処するかというテーマがよく議論されます。人生 100 年時代における50代以上の社員の”wisdom (知恵)“をどう活かすかということが大きな課題です。

なので、定年までまだ間があり、人生の折り返し地点でもある 50 代というミドル・シニアの時期を活かして、自分が仕事で学べた経験を、会社の枠組みの中でどのように活かせるだろうか? ということを考える時間が必要です。できれば、会社側からそういう場作りをしてほしい。「キャリアの再構築」ですよね。
向井  キャリアの再構築、キャリアチェンジといえば、40 代か 50 代の頃に体調を崩し、それをきっかけに働き方や会社との関係を見直し、役職から退いた方と話をする機会がありました。彼は、そこでの仕事を続けつつ、二足のわらじで執筆活動にも携わっていた。定年までの期間を、いかに準備に充てるかが大切だ、ということで、経験に基づいていたこともあり、説得力がある話だったのを覚えています。

キャリアチェンジの機会を作ってあげるところまでいかないとしても、副業を含めた裏の顔を持つことを会社側が認めてあげるのは今後重要になってくるのかな、と感じます。
三城  そうですね。昔のキャリアチェンジのイメージは“脱サラ”でした。“脱サラ”ってとてもマイナスイメージの言葉ですよね。一念発起してラーメン屋をはじめたけれども失敗した、というような感覚。

一方で、最近のキャリアチェンジのイメージは“アントレプレナー(起業)”です。キャリアチェンジで目指したいのは、自分がどんなふうに誰の役に立ちたいのか、今後どのように生きたいのか、どういう人たちに囲まれて死にたいか、という内発的なものに目を向け、それに従うこと。一発勝負の金儲けや、周囲からの評価ではなく、本当に自分が幸せになるためにどうありたいのかを感じとることなんですよね。

周囲から認められたいという承認欲求の代表である、会社が用意した役職や地位、会社の知名度や報酬額って大切なように見えても死後の世界に持っていけるわけではない。死後に持っていけるのは、自分自身が幸せだったという気持ちやご縁に恵まれていたという感謝の気持ちなど。「いい人生だったな」と思えることのほうが大切なのではないでしょうか。

ミドル・シニア世代は、会社や上司などの周囲の期待に応えるという「承認欲求」のために頑張ってきた人が多いと思います。ここに、コペルニクス的な思考転換が必要です。承認欲求は、外発的動機付けの代表です。過去の自分自身の不安や恐怖から脱却するために、みんな一生懸命、周りから認めてもらおうと努力します。いい大学にいって、いい会社にはいって、いい人事評価をもらって・・・そのあとは何が残るのでしょうか?企業内で長く働いてきた人は、外発的動機から解放されて、一度立ち止まり、内発的な動機に基づくキャリアを考えることに180度転換する機会が必要です。「好きだからやる」「やりたいからやる」自分自身の心の声に従ってキャリアを考えられる人が増えてほしいものです。
JIN-G 三城 氏

向井  会社組織以外のコミュニティー、そういうつながりを持てるようになる機会も大事ですよね。
三城  退職後のこともありますしね。イグジットマネジメントについては、向井さんがご専門ですから、お詳しいですよね。
向井  そうですね。標準化されたビジネスを回していく企業であっても、そこで生涯働けるとは限りません。定年が 65 歳、70 歳と引き上げられたとしても、人生はまだ続いていきます。どこかのタイミングで会社を去る、卒業すると言ってもいいかもしれませんが、そのあとの人生を充実したものとするためには本人があらかじめ準備しておく必要があります。会社として、そこの気付きを与え、機会を提供することで、社員が良い意味で会社をうまく利用できるようになれば、それは会社にとってもプラスになると考えています。
三城  シンギュラリティの時代になると、肉体的な限界を超えるので、人間というものの定義が変わり、人間の寿命は 125 歳が限界と言われていたものも意味をなさなくなると言われています。近い将来には、100 歳以上まで働き続ける人は確実に増えていくでしょう。そうなると定年まで勤め上げても、まだ 35 年も残ってる。働くということの価値観も変わってくるでしょう。内発的動機に基づいて働く人口も多数派になるかもしれません。その時のためにも、在職中に外とのつながりを作っておけば、社会の中で寂しさや虚しさを感じることはないでしょうし、本業以外のキャリアがあれば、退職後の生活を楽しめる。ミドル・シニア世代にこそ副業や自由な社外活動を認めてあげてほしいですよね。

—令和の時代。キャリア自律支援を目指す企業が取り組むべきことは?

向井  もう、今までの価値観では通用しないんだよ、ということですよね。新しい時代と言えば、元号が令和に改まりました。自律型人材を支援したい、と企業が方針を決めた場合、何から手を付ければよいのでしょうか。
三城  これまでやたらと作ってきた規律、ルールを一旦やめること、ですかね。やめることが一番難しいけれども、一番変化に適用するためには必要なことです。人事制度の断捨離をしましょう。
向井  人事評価をしないとか(笑)。
三城  そうそう(笑)。

人間が作ったものはすべて虚構であるという『サピエンス全史』にて語られたことに私も共感しています。会社内の制度やルールは自然現象に逆らってつくられたものです。人間がつくったものは全て虚構です。つくってもいいのですが、自然の摂理に合っているのかどうかのチェックが必要です。制度やルールをつくって、守らないと大変なことが起こるよと、不安や恐怖によってマネジメントをしているのです。不安や恐怖に基づくマネジメントは、外発的動機づけにしかなりません。一度、やめてみる。そうすると、内発的動機に基づく議論が始まります。

それを一回やめてしまうんです。もちろん、混沌が生まれますが、それはいい混沌。組織の新陳代謝が促進される結果を生みます。
向井  作ったものやめる、今あるルールも破棄する。なかなかできることではありませんよね。ルールに縛られているほうが楽ですものね。
退職金専門家 向井洋平

三城  一回、自然に戻すという感覚ですね。

いま「働き方改革」のために働き方が大変になっている担当者もいます。働き方改革のために、新しい施策が次々にでる。それらの施策は、どれも承認欲求の産物だったり、虚構の目標像のためにつくられていく。新しいものをつくって実行するのは簡単だから、どんどん増えていくのです。

何をすべきかというTo Doではなく、どうありたいかというTo Beを先に考える。To Beを考えたら、何をやめるかを決めていく。そんな働き方改革をした方がいいですね。

最後に繰り返しますが、自律型人材はコントロール願望のある社長や上司のもとでは生まれません。今回のテーマである「キャリア自律」を本当に望むのであれば、まず誰かに対して何かを期待するということを、手放すことから始めてみるのが良いのではないでしょうか?そして、不安や恐怖に基づく人材活用を手放し、個人の内発的な動機を大切にできる「場」だけ用意する。たくさんのものを断捨離していくことが必要ですね。これはこれで結構やることがありますよ(笑)。
JIN-G 三城 氏 退職金専門家 向井

※取材日時 2019 年 3 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

「JIN-G 三城雄児氏 ×向井洋平 令和時代の人事に求められるキャリア自律への支援とは 前編」を読む

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