ポイントテーブルの設計~ポイント制退職金制度の設計について -2-
掲載日:2015年1月21日
ポイント制退職金制度では「どういう場合に何ポイントを退職金として積み上げるのか」をポイントテーブルという形で定め、これに沿って制度の運営を行っていきます。
例えば人事制度上の等級に応じて以下のようなポイントテーブルを定め、1年ごとにその年度の等級に応じたポイントを加算していき、退職時のポイント累計にポイント単価(例:10,000円)を乗じて退職金を算出する、といった具合です。
ポイントテーブルの例
等級 | ポイント |
7等級 | 70 |
6等級 | 60 |
5等級 | 50 |
・・・ | ・・・ |
つまり、ポイント制退職金制度を設計するとは、このポイントテーブルをどう設計するかということに他なりません。以下、ポイントテーブルを設計する際のいくつかの論点についてまとめていきます。
A:ポイントの構成要素
ポイントの構成要素とは「何に基づいてポイントを決めるか」ということです。
一般的なものとしては、勤続年数に応じた「勤続ポイント」、人事制度上の等級や資格に応じた「等級(資格)ポイント」が挙げられます。また、役職に応じた「役職ポイント」を別途設けたり、等級ポイントでも各期の人事考課によってポイントに幅を持たせる(この場合、ポイントテーブルは等級と人事考課によるマトリクス表になる。)ような例もあります。
これらの中から、退職金に反映させたい要素を選び、それぞれについてポイントテーブルを作成していくこととなります。例えば、会社への貢献度や職責の大きさを退職金に反映させつつも、長期の勤続に報いる部分を一定程度残しておきたいという場合には、等級ポイントと勤続ポイントにより構成することが考えられます。(等級に会社への貢献度や職責の大きさが反映されているという前提で)。
ポイントの種類を増やしたり、人事考課に応じた幅を設けることにより様々な要素を退職金に反映させていくことも可能ですが、あまり複雑にすると制度の設計や運用が難しくなってしまったり、社員にとっても分かりにくいものとなってしまうので、まずはできるだけシンプルな形で設計を考えていくのがよいでしょう。
B:ポイントの構成割合
次に、ポイントの種類を2つ以上にする場合はそれらの構成割合をどうするかという論点があります。上記の例で言えば、会社への貢献度の反映をより重視したいということであれば等級ポイントの割合を多めにするといった具合です。
2種類以上のポイントを累積させていったとき、通常それらの割合は変わっていくことになりますが、一般的には定年退職時の割合をどれくらいにするかという観点で検討していくこととなります。
C:ポイントテーブルの作成
ポイントの構成要素と構成割合が決まったら、次はそれらのポイントテーブルを作成していくことになります。ポイントテーブルの作成にあたっては、大きく分けて2つの観点があります。 1つは目標とする給付水準に見合ったポイント設定とすることです。
平均的な社員に対してはこれくらい、昇格が早く会社への貢献度が大きかった社員に対してはこれくらい、あまり成績がよくなく昇格が遅かった社員に対してはこれくらい、といった具合に3つ程度の昇格モデルに応じた目標金額を設定し、これに見合うようなポイントを設定していきます。
もう1つの観点はポイントテーブル自体がもつ意味合いです。
例えば勤続ポイントを設定する際、ある程度の年数までは長期勤続を重視するが、それを過ぎたら純粋に会社への貢献度を反映したいというような場合には、勤続年数に応じてポイントの設定に重みをつけ、一定の年数以後は勤続ポイントを付与しないということが考えられます。
等級ポイントについては、Aの例で言えば、等級に応じたポイントの差は会社への貢献度や職責の大きさの違いに見合ったものとする必要があります。賃金や賞与を等級によってどれくらい違う水準にしているのか、ということも1つの参考になるでしょう。
但し、必ず賃金や賞与の水準に合わせてポイントを設定しなければならないということではなく、ここまでは退職金にも反映させるが、これ以上の部分は賃金や賞与で報いるといったように切り分けて考えてもよいでしょう。
ポイントテーブルが作成できればポイント制退職金制度の基本的な枠組みはできたことになりますが、ポイントの設定とは別に自己都合退職時の乗率(1未満の係数)を勤続年数等に応じて設定し、定年前に自己都合で退職した場合の金額を抑える例もよく見られます。従来の最終給与比例型の制度からポイント制に切り替える際、中途退職時の金額が増えすぎないよう、従来制度の水準に合わせて設定することもあります。
次回は、新たにポイント制を導入する場合の従来制度からの移行方法について解説します。