ポイント制退職金のメリット・デメリット~ポイント制退職金制度の設計について -1-
掲載日:2014年11月14日
ポイント制退職金の意義
ポイント制退職金制度は今では広く普及している退職金の算定方式であり、多くの事例を見ることができます。(他の算定方式との比較やポイント制退職金の広まりやについては関連記事「給付算定方式の比較」を参照してください。)
しかし「他もやってるからウチも入れよう」という安易な考えで設計を始めるのではなく、まずは自社にとってのポイント制退職金の意義を確認することが重要です。一般にポイント制退職金を導入する狙いとしては、以下のようなものがあります。
・ 入社から退職までの勤務期間を通じた会社への貢献度を適切に退職金に反映させる。
・ 年功的な要素が強いこれまでの制度を改め、本人の能力や業績を反映させたものとする。
・ 賃金と退職金を切り離す。
これらは従来主流であった、次のような算式で表わされる最終給与比例型制度の問題点と表裏一体のものです。
退職金 = 退職時の算定基礎額(例:基本給)× 勤続年数・退職事由別係数
つまり、
・ 退職時の算定基礎額のみに依存するため、在職期間を通じた貢献度を反映したものとはならない。
・ 算定基礎額と勤続年数別係数がともに年功的である場合、退職金は非常に年功色の強いものとなってしまっている。
・ ベースアップや賃金制度の改定を行うとその影響が退職金にも及んでしまう。
といった問題点です。
実際、人事・報酬制度全体を見直す中で従来の退職金算定基礎額を使用し続けることが難しくなり、上記のような問題が顕在化してポイント制を導入することとなったケースが多いのではないかと思います。
社員にとってどんな意味を持つか
それでは、社員にとって最終給与比例型からポイント制への変更はどのような意味を持つのでしょうか。
最終給与比例型の場合、(算定基礎額の性質にもよりますが)定年まで勤めあげたら退職金がいくらというのは比較的容易に把握することができます。従って、終身雇用を前提にすれば、老後の生活資金の確保という安心感につながるものと考えられます。
一方で在職中は貢献度に応じて退職金が積み上がっていくという実感はなく、より多くの成果を生み出そうという動機付けは乏しいといえます。これに対してポイント制の場合は退職金の積み上がり方が明確であり、在職中においても貢献度の反映を実感しやすい制度と言えます。
但し実際に社員が退職金を意識し始めるのは退職時期がある程度近づいてからであり、若手~中堅の社員にとっては「ポイント制への変更」と言ってもあまりピンとこないことが多いでしょう。
これらを踏まえると、ポイント制の導入にあたっては以下のような点を確認しておくべきでしょう。
・ 退職金は在職中の貢献度を反映したものであるという位置づけを明確にすること。
・ 退職金に反映させるべき要素が人事制度の中に組み込まれており、社員にとっても理解しやすいこと。
― 例えば、等級に応じたポイントを付与していくこととした場合、等級制度が整備され、透明性をもって運営されていること。
・導入時の説明だけで終わらせるのではなく、導入後の制度の運用においても社員の理解を深めていくこと。
― 例えば、ポイントの付与や累積を定期的に社員に通知すること。また、そのためのポイントデータの管理を適切に行うこと。
逆に言うと、これらの点について、会社としての退職金に対する考え方にそぐわなかったり、環境が整備されていなかったりする場合には、ポイント制導入の是非について改めて検討したほうがよいかもしれません。
次回は具体的なポイントの設計に話を進めていきます。