企業再編に伴う退職給付(企業年金・退職金)制度設計 -2- 制度統合の留意点(前半)
掲載日:2014年10月22日
【 制度の統合にあたって留意すべき点 】
・新会社の方針に沿った設計であること
・社員へのメッセージを意識しつつ設計する必要があること
・給付水準・給付算定式の基礎・給付算定式・積立方法その他の検討項目があること
・「企業再編前は旧制度、再編後期間は新制度」が基本であること
・「移行措置なし」が理想的であるが、既存社員の分析の上、判断することが必要であること
新会社の方針に沿った設計であること
新会社の設立とともに人事制度の方針が決められ、等級・評価・給与制度や福利厚生制度が新しく設計されますが、退職給付制度も新しい方針のもと改定されるというのが、基本的な考え方となります。
新制度の構築は、新入社員ベースの制度として構築し、ついで既存社員への適用方法を考えるという順番が適切です。この方法により、現制度の在り方に影響されずに新制度のコンセプトを考えることができます。
したがって退職給付にどのような人事方針を反映させたいかが重要になります。たとえば 、
・給与などと同様、マーケットの75パーセンタイルぐらいをねらって、競争力を維持したい
・成果を出すためには一定の勤続年数を要するので、長期勤続の優遇の要素残したい
・役職を通じた貢献度合いを退職給付に反映させたい
・給与と同じように、毎年の評価を反映させたい
などが考えられます。
社員へのメッセージを意識しつつ設計する必要があること
既存社員は、新会社に移ることだけでも大きな不安を抱えていることが予想されます。したがって、人事制度の他の事項同様、そのメッセージには十分注意を払う必要があります。
とりわけ、確定給付年金制度や確定拠出年金制度の新設・改定には、社員の同意が必須になります。同意を得るためには、一般に社員説明会を開催しますが、いったん制度を細部まで構築してからその説明内容を考えるのでなく,基本設計や詳細設計の段階から「なぜそのようにするのか」または社員からの質問を想定しながらの検討が必要です。
給付水準・給付算定の基礎・給付算定式・積立方法その他の検討項目があること
給付水準
新入社員の標準モデル昇格者を設定し、定年退職時の給付レベルを設定します。場合によっては、中途入社・中途退職者のモデルも設定します。現制度の水準にとらわれることなく設定することが重要です。たとえば合併の場合にはじめから両社の中間や高い方をねらう必然性はありません。
給付算定の基礎
給与やポイントなど、給付額計算のもととなる要素です。退職給付に反映させたいファクターが反映されたものにすることが必要です。
ポイントの場合は、新たに設計することになります。等級制度や給与制度の設計内容が前提になります。給与やポイントの設定如何によって、昇格のパターン(標準・早い・遅い)の差による給付額の差の程度が決まります。すなわち、業績や成績によって付けたい差を実現するような設定方法を考える必要があります。
給付算定式
最終給与比例・ポイント制・キャッシュバランスプラン(CB)などの算定式。全期間の貢献を反映させたい場合は後2者になります。CBは金利変動による財務安定性のメリットがあります。
積立方法(含む確定給付 / DC)
まず、社員に運用リスクを分担させるか否かで確定給付/DCの選択を行います。確定給付の場合は、社内積立か社外積立(DB)の選択になります。運用リスク・キャッシュ・原資の保全・給付設計の自由度・運営方法が決めてとなります。
その他の検討項目
年金や一時金の受給資格、年金支給年数、諸利率(キャッシュバランスプランの再評価率、繰り下げ利率、年金換算利率)などです。給付水準だけでなく、その他の要素についても現在の制度の在り方にとらわれることなく設計することが大切です。