退職金専門家が実践する、お金の置き場所と運用方法
こんにちは、退職金専門家 向井洋平です。
マネープランに関するセミナーでよく受ける質問に「iDeCo と NISA、どちらも税制優遇制度のある仕組みですが、どのように使い分けるのがいいのでしょうか?」というものがあります。
これに対する私の回答は、
老後資金の積み立てを目的とする場合
まずは掛け金の所得控除がある iDeCo を使い、掛け金の限度額以上に積み立てる余裕があれば、その部分については NISA を使う。
老後資金に限定せずに、途中で引き出す可能性がある場合
NISA を使う。
です。実際、私自身もこの二つを実践しています。また、iDeCo 加入前から入っている個人年金保険もあります。
こうした「仕組み」を「お金の置き場所」と捉え、どこにいくら置いておくのが最適なのかを考えるのを、アセット・ロケーションと言います。これに対して、どの資産にいくら投資するのが最適なのかを考えるのがアセット・アロケーションです。
そして、資金用途に応じたアセット・ロケーションとアセット・アロケーション、つまり、「何のために」「どの仕組みを使って」「何に投資するのか」を我が家のケースをもとに表したのが、下の3重円グラフです(割合は必ずしもこのとおりというわけではありません)。もしあなたが会社の退職金制度や企業年金制度の対象であれば、それも加味して考えるのがよいでしょう。
円の中心にあるのが「何のために (目的) 」の部分であり、上のグラフでは、資金を老後資金と教育資金に 25 %ずつ、残り 50 %は使途を細かく決めず、自由に振り向けられる資金と位置付けています。
その周りにあるのが、「どの仕組みを使って (アセット・ロケーション) 」の部分であり、 目的ごとにiDeCo や NISA などを組み合わせて使っています。
一番外側の円が「何に投資するのか (アセット・アロケーション) 」の部分です。個人年金を含めた保険と定期預金については、そのまま投資対象ということになりますが、iDeCo や NISA を含む証券口座に関しては、その中で投資先を選びます。
最初に回答したとおり、20 年以上先まで使わない老後資金についてはまず iDeCoを活用しています。そのうえで、NISA は老後資金と 10 ~ 15 年先に使うと分かっている教育資金に、ジュニア NISA は教育資金のための活用しています。
iDeCo に関しては、以前は債券での運用も組み入れていましたが、現在はほぼすべて株式(主に外国株式の投資信託)で運用しています。NISA も老後資金に充てる部分については株式とし、教育資金に充てる部分については債券(主に国内外の債券の投資信託)での運用としているイメージです。もっとも、世界的な金利の低下で債券で安定した運用収益を確保するのは難しくなっているので、教育資金については無理に投資に回す必要はないでしょう。
私も「老後資金のすべてを株式で」「教育資金のすべてを債券で」運用しているというつもりはなく、定期預金や保険で運用している「特定しない」の中にも、老後や教育に振り向けられる資金は含まれているという位置づけです。
著者 : 向井洋平 (むかい ようへい)
株式会社IICパートナーズ 常務取締役
日本アクチュアリー会正会員・年金数理人。京都大学理学部卒。大手生命保険会社を経て、2004 年、IICパートナーズへ入社。アクチュアリーとして退職給付会計や退職金・年金制度コンサルティング、年金資産運用コンサルティングをおこなう。2012 年、常務取締役に就任。著書として『金融機関のための改正確定拠出年金Q&A(第2版)』 (経済法令研究会/ 2018 年 10 月刊) がある。2016 年から退職金・企業年金についてのブログ『社員に信頼される退職金・企業年金のつくり方』を運営。
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