なぜ、クリーンテックス・ジャパンは退職金制度改革を進めたのか 後編
—社内に抵抗なく受け入れられた確定拠出年金
向井
今回、確定拠出年金 (以下、DC) について話を聞くクリーンテックス・ジャパンさんの社員のみなさんは、「マッチング拠出」など難しそうで抵抗感ある方も多いと思うのですが、いかがでしたか?
杉本
DCを初めてやった方たち、私も含めてなのですが、税制優遇が効くというのが IICパートナーズの向井さんからいただいた資料に書いていたので、あれで理解した人間が多かったです。「節税になるので、掛金を出せる上限いっぱいまでやっていきます」と。半分以上の方が掛金の上乗せを上限いっぱいまでやっていますね。
向井 | いいですね、みなさん積極的に受け入れていただいているようで。 |
杉本 | そうですね、割と大きな抵抗もなく。 |
成田 | 自分でやっていかなくてはいけないということを認識すること自体は良いことですよね。今まで、全部受け身だったけど、自分で考えていかなくてはいけないという。今後の自分の人生設計について退職金制度を使って考えていく姿勢を身に着けてもらうという、会社として社員に対する教育の一つなのでしょうね。 |
向井 | 第一弾としては成功でしょうか? |
杉本 | と思いますね。退職金自体も計算がかなり楽になりました。ポイント制にしていると過去の役職に対するポイント制だったので就業規則を変えると全部が変わってしまい、さかのぼって全部計算するのが結構大変でした。毎年引き継ぎシートがあるので見たのですが、間違っていることもあり… 今のDCだと給料の割合で出るので給与さえちゃんと登録しておけばよく、事務的には非常に簡単です。 |
向井 | これから定年退職する方が出てくるが、まだ退職金準備をしてないという会社は結構多いので、その中でクリーンテックス・ジャパンさんは先進的に取り組まれていると思いますね。他の会社も、事例として御社を参考にしていただけるのではないかと思います。 |
杉本 | 「何もしなければ10年後には退職金でキャッシュ・フローが回らなくなる可能性がある」と前任者が警鐘を鳴らしていたので、今から何とかしないとっていう危機感はありましたね。 |
—パートナーとしてのIICパートナーズへの評価とは
向井 | 今回、退職金改革プロジェクトで、IICパートナーズにお声掛けいただいた経緯は何かありますか? |
杉本 | 他の会社にもDC制度導入に向けたコンサルティングで見積は取っていたのですが、腹の中ではもう決めていました(笑) |
向井 | クリーンテックス・ジャパンさんとのお付き合いは、退職給付債務計算で5年以上前からになりますね。 |
杉本 | 今回のDC導入は結構タイトな日程でしたね。5 月が期末なのですが、この6月のスタートに何とか間に合わせてほしいと向井さんにスケジュールを出してもらいましたが、役員に説明して許可を取るところで時間がかかって、そこからずっと前倒しになってだいぶバタバタしましたね。親会社のアメリカやヨーロッパの方はもうDCやっているのですが、そこの理解を得るのにちょっと手こずったという。今回もIICパートナーズさんにはすごく色々とやっていただいて。 |
向井 | ありがとうございます。よかったです。最後の質問になりますが、今後クリーンテックス・ジャパンさんの社員のみなさんにどういう社員になっていただきたい、どういう方に入ってきてほしいというイメージはお持ちでしょうか? |
杉本 | 自分で会社を盛り上げてくれるような人がいる、そんな会社になってくれたらなと思いますね。正直申し上げて、クリーンテックス・ジャパンの創設者である福原はトップダウンで、私たちもその傾向はあるのですが、やはり昔からいる方は上からの指示を待つ方が多いのです。現社長である大山は創設者の福原とは逆で、ボトムアップを好んでいます。 |
向井 | 現在はボトムアップ志向なのですね。 |
杉本 | 今トップダウンからボトムアップに変わっていく中で、ギャップがまだ少し残っています。仕事をやっている身からすると、トップダウンの方が楽は楽です。ただ、とんでもないことを言われてやらなきゃいけないということもあります。私は、ボトムアップになって自分のやってみたいことが実践できることもあり、仕事も楽しくできています。なので、自分で会社を盛り上げてくれるような方が増えるといいですね。 |
成田 | 会社と従業員が良い緊張関係を持ちながら、相互を利用していく、そんな形が理想じゃないかなと思います。会社だけでしか生きていけない人間というのもこれからの世の中、不十分とも思います。人事にしてみれば、なかなかしんどいことかもしれないですが、人間として社会人としては、そういう方向に行ってほしいですね。 |
向井 | 退職金制度に含まれるマッチング制度もそのような考え方ですね。退職金を自分で考えて運用していくということが、これまでのトップダウンに慣れた社員のみなさんにとっても刺激になるかもしれませんね。 |
※取材日時 2018年8月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。