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⼤和ハウス⼯業、定年後 65 歳以上でも輝ける場を――シニア社員の活⽤への積極的な取り組みから見えてきた出口戦略とは? ⼤和ハウス⼯業 菊岡⼤輔 ⽒ × 退職⾦専⾨家 向井洋平 前編

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⼤和ハウス⼯業、定年後 65 歳以上でも輝ける場を――シニア社員の活⽤への積極的な取り組みから見えてきた出口戦略とは? ⼤和ハウス⼯業 菊岡⼤輔 ⽒ × 退職⾦専⾨家 向井洋平 前編

2020 年の通常国会には、希望する高齢者が 70 歳まで働けるようにするための「高年齢者雇用安定法改正案」が提出される見込みである。これは、シニア世代になっても仕事をしたいと考える人にとって朗報であるし、人手不足という課題を解決したい企業にとってもプラスになると考えられる。そのような中、一足早く 65 歳定年制を導入し、さらにはそれ以降も働き続けられる「アクティブ・エイジング制度」を導入していた企業がある。大和ハウス工業 菊岡大輔 氏とイグジットマネジメントに精通する退職金専門家 向井洋平に話を聞いた。

—シニア社員をソフト面からも考える下地がある大和ハウス工業

向井  大和ハウス工業は次々とシニア世代の活用に関する人事施策を打ち出していらっしゃいますが、菊岡さんご自身についてお話しいただけますか。
菊岡  1996 年に大和ハウス工業に入社してから 23 年以上になりますが、基本的には人事畑を歩んできました。最初の 10 年はグループ会社で、2013 年からは大和ハウス工業本体で、ちょうど65 歳定年制など弊社が高齢者関係の取り組みをはじめたり、制度を導入したりした時期にあたります。

2016 年 10 月に、東京本社の人事部責任者ということで大阪から赴任してきまして、今に至ります。
大和ハウス工業 菊岡大輔 氏

向井  それまではずっと大阪にいらっしゃった。
菊岡  生まれも育ちも大阪ですし、大和ハウス工業でも 20 年半大阪勤務でした。なので東京ははじめてですね。
向井  大和ハウス工業は、大阪と東京の両方に本社を構えていますよね。
菊岡  コーポレート部門の中心は大阪に、各事業部門の中心は東京に、という形の両本社制をとっています。ただ、東京のほうが各事業に直結していることもあり、東京の人事部の役割も以前より大きくなってきていますね。
向井  御社の事業についても教えてください。
菊岡  2019 年 3 月期の決算で、いわゆる「4兆円企業」の仲間入りを果たせたところです。住宅メーカーと見られがちですが、実は戸建住宅の事業は全体の約 10%。では、ほかに何をしているのか、というと賃貸住宅事業、商業施設事業、事業施設事業が弊社の三本柱の事業となっています。

中でも、最も伸びているのが事業施設事業。これは、企業のお客様に事業活動のソリューションを提供するもので、例えば、倉庫が必要なお客様に倉庫を提供したり、工場が必要であれば工場を、事務所が必要であれば事務所を提供したりする、という事業です。最近では特に、物流関係や医療・介護関係の事業施設のご提案が、非常に増えているところですね。
向井  さまざまな分野の建物を手掛けていらっしゃる、というわけですね。
菊岡  そうです。おそらく、個人の住宅から大規模な事業施設までというところでは、日本で最も幅広い分野の建物を手掛けているのではないかと考えています。

このような事業形態になったのは、大和ハウス工業創業者 石橋信夫 の「世の中の役に立つものを作る」という精神が関係しているのだと思います。例えば、戦後の高度成長期に、家が欲しいけど数自体が足りなくて買えないという若い人たちでも持てる家を作るところからスタートしましたし、農地の地価が上がり、転用したいという農家と、出店したいという企業側をマッチングさせた流通店舗事業を手掛けてきました。

30 年前に、シルバーエイジ研究所を立ち上げ、高齢化社会に向けて会社として何ができるかの研究をスタート。そのおかげで、介護や医療分野で使っていただける建物を作れますし、介護現場で働く人をサポートするロボットを手掛けたり、ソフト面も含めたノウハウをご提供したりできています。

ただ、最初の頃に開発してきた大規模団地は、住んでいる人も町も老いている状況にあります。「夢を売っておしまい」ではなく、ずっと生き生きと生活していただきたい。そういうわけで、街の活性化をサポートすることなども行っています。
向井  まさに、先手先手を打ってきたということなんですね。

—大和ハウス工業が 65 歳定年制を導入した背景

向井  そのような中、2003 年 には 60 歳定年後の嘱託再雇用制度を導入、2013 年には 65 歳定年制を導入されています。
退職金専門家 向井洋平

菊岡  高齢化社会向け事業を展開していましたから、社内のシニア社員と向き合うことへも力を入れて取り組んできた結果ですね。
向井  多様な事業展開をされているし、高齢化社会に対応できるような事業も拡大されていらっしゃいます。高齢者も含め、人材を活用できる、もしくは活躍してもらわないといけない、という背景があったのでしょうか。
菊岡  活用できる、というところでいえば、会社の歴史を実際に見て知っているという社員の存在は、大和ハウス工業にとって財産です。また、今後増えていく高齢者向け住宅や街づくりといったところで、若い人には分かり得ないシニアの気持ちが分かる、というところも大きい。やはり、そこで生活する人たちの気持ちを無視した建物を作るわけにいきませんからね。

活躍してもらいたい、という思いも当然ありました。60 歳になったからといって、会社を卒業されるのはあまりにしのびない。まだまだ働ける戦力ですし、お話したように彼らは貴重な人材です。嘱託再雇用制度があったものの、60 歳の定年を迎えた段階で、4 割以上が会社を去ってしまい、もったいないと感じました。
向井  ほかの企業に人材が流出してしまう?
菊岡  実は、技術者であれば企業に勤めなくても、独立してやっていけるのがこの仕事。例えば会社に残るより、地元で設計事務所を開いて働きたい、と考えられてしまったのかもしれません。
向井  2012 年度までは 60 歳から厚生年金 (報酬比例部分) も支給されていましたし、再雇用以外の選択肢に魅力を感じていたのでしょうね。
菊岡  そういう意味では、嘱託として働くことには、お金以外の面、つまり精神的な面でのメリットが感じられなかった、だから去ってしまうのではないかと考えました。

そこで、シニア社員たちの生の声を聞きつつ、人事部内で議論を重ねました。すると、「嘱託さんと呼ばれること」「頑張っても頑張らなくても報酬が変わらないこと」「期待されていることがわからないこと」などから組織の一員としての実感がわかない、仲間から排除されているという取り方をされ、働くモチベーションが上がらないという気持ちが見えてきたのです。

でも、我々としてはそうではない。会社の業績を一緒に作っていく仲間だ、というメッセージを伝えたかった。そこで、65 歳定年制を導入した、というわけです。
向井  シニア社員の意識への影響は大きかったでしょうか。
菊岡  やはり、蚊帳の外にいるより、一緒に業績を作っていこうという意識を持っている方が、人は強い。若手とは率が異なるものの、評価テーブルもきちんと用意して、頑張りに応じて評価し処遇する対象にすることで、それまで 60 歳を超えると 4 割以上の人が“卒業”してしまっていたのを、2018 年度では 1 割以下に減らせたのかな、と思います。

—役職定年後の受け皿作り

向井  65 歳定年制が導入され、60 歳という区切りを経ることなく引き続き社員として働けるということですが、役職定年 (ポストオフ) を迎える方もいらっしゃいますよね? その後、シニア社員の仕事へのモチベーションや尊厳を保たせる施策は何かあるのでしょうか。
菊岡  それまで、「60 歳で定年退職する」または「嘱託社員になる」と考えていた人が、いきなり社員としての雇用が継続される、ということで、何をすべきか悩ましいという声が 2013 年の定年延長制度を敷いたあとに聞こえてきました。

それで、わたしの提案で「理事コース」「シニアマネージャーコース」「メンターコース」「生涯現役コース」という4つのコースを設け、役職定年前までの経験を活かしてもらおう、ということになりました。コースを設けることで、期待している役割を会社側から明示する、ということですね。

ただし、このコース分けは毎年見直しがあります。ほとんどの人は、プレイヤーとして生涯現役コースに分けられますが、シニア世代になってからマネージャーコースに分けられる人もいる。そういう意味では、不公平感のない制度ではないかな、と思います。
大和ハウス工業 菊岡大輔 氏

向井  自分の役割が明確になる、というのはモチベーション維持に必要ですよね。
菊岡  ただ、これまでと全く違う仕事では大変ですし、現実的ではありません。そこで、ベテランとしての持ち味を発揮しやすい仕事に移ってもらっています。

新しい仕事を取りに行く、狩猟的な仕事は若手に、より長期的な目線を必要とする農耕的な仕事はシニアに、というとイメージしやすいでしょうか。
向井  試行錯誤の必要な成長していく仕事を若手に、安定して成熟した仕事をシニアに、ということですね。
菊岡  そうですね。例えば、今すぐ利益が出るわけではないけど、守っていかなければならない顧客とのリレーション維持に努めてもらったり、担当エリア内の現場を回って安全に関しての指導をしてもらったり、というものですね。

普段、若手では手が回らない顧客とのリレーション維持に当たってもらいつつ、案件が出てきたら若手につないであげたり、助言・指導してあげたり、フォローしてあげたりする。これはベテランだからこそできることではないでしょうか。
向井  なるほど。やるべきだし、やったほうがいいとわかっているものの、そこまで手が回っていないところをサポートする、というイメージですね。
菊岡  そういう再配置の受け皿になる部門を発掘・開発や、担当役員や長である人と折衝するのも人事部門の仕事。活躍の場を設けて、うまくマッチングさせることで、シニアには、モチベーションや尊厳を維持したまま働いてもらうことができるのです。
向井  シニア社員の中に、会社から歓迎されないタイプの人がいることはないでしょうか。
菊岡  よく受ける質問ですね。

それについて、いつも申し上げるのは、「シニアになってから対策を練っていては遅い」ということ。そこでようやく出口戦略を考えるのではなく、シニアになっても戦力として重宝されるようなキャリアパスを作る必要がある、ということなんです。

幸い、大和ハウス工業にはグループ会社を含め多種多様な活躍の場があります。入社後、ミスマッチがわかれば、当該社員にとって、よりマッチする場に若い段階から移ってもらうことができる。その中で、能力や実績に応じた処遇を適用していく。

そのおかげで、「この人、戦力になってないんだけどまだ働いてもらわないといけない。どうしよう」というようなシニア社員の存在が非常に少ない、という成果を得られています。
向井  シニア世代になったときに、本人も会社も困らないよう、現役時代から対策を練っていかねばならない、ということですね。

後編では「アクティブ・エイジング制度の出口戦略としての有効性」について語ります。

※取材日時 2019 年 11 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう

シニア社員のイグジットマネジメントできていますか?

労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。

シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。

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