確定拠出年金(DC)拠出限度額の年単位化とは
掲載日:2017年6月12日
2018年1月1日より、確定拠出年金制度(DC)の拠出限度額が月単位から年単位に変更されます。それに伴い、2017年2月および3月に政省令が出されました。
今回は、その内容を基にDC拠出限度額の年単位化について解説します。
DCの拠出限度額
税制上の理由から、各加入者に対して拠出できる掛金の上限額が決められており、それをDCの拠出限度額といいます。
拠出限度額は、個人型DC・企業型DCの区分や、国民年金被保険者の区分等により異なり、また、加入者掛金の拠出を認めている企業型DCの場合は、事業主掛金と加入者掛金を合算した額に対して決められています(その場合の加入者掛金は、拠出限度額と事業主掛金額の兼ね合いにより制限されます)。
現行のDCでは、掛金は毎月拠出する必要があり、拠出限度額は月単位で決められていますが、2018年1月1日より、年1回以上拠出すればよいこととなり、拠出限度額も年単位に変更されます。
【表1:拠出限度額一覧 】(単位:万円)
現行の拠出限度額の問題点
現行の拠出限度額は月単位で決められているため、その月に拠出限度額分拠出しなかった場合は、税制優遇枠の使い残しが発生し、その後の追加拠出によってその枠を埋める事ができないという問題があります。
拠出限度額を年単位にする事で、年間ベースで拠出限度額は変わらないものの、賞与時に多めに拠出できるなど、より柔軟な拠出が可能となり、上記の使い残しの問題を解消する事ができます。
【図1:現行の拠出限度額の問題点】
年単位化に伴う拠出方法等(政省令案)
(1) 拠出方法
12月から翌11月までの12ヶ月(その間に資格を取得した場合は取得した月から、資格を喪失した場合は喪失した月の前月まで)を単位として拠出することが可能となります。ただし、規約に定めるところにより、当該12ヶ月を区分した期間ごとに拠出することが可能となります。
4月から翌3月までのように、任意の12ヶ月を単位とする事はできません。なお、今まで通り毎月拠出する場合は、その旨を規約で定める必要があります。
【図2:掛金の拠出方法】
(2) 拠出限度額の考え方
拠出限度額は年単位となりますが、掛金拠出時の拠出限度額は、経過済みの月数分までとなり、未経過分を拠出することはできません。
具体的には、掛金拠出の単位となる12月から翌11月までの12ヶ月のうち、拠出月における拠出限度額は、以下のように表せます。(次項で見るように、支払日ベースでは翌月の拠出限度額となります。)
上式の「12月から拠出月までの月数」については、個人型DCにおいて、国民年金保険料を滞納した場合は、滞納した月数を控除します。また、一度資格喪失して再び加入者資格を取得した場合(企業型DCでは、元の企業型年金の加入者資格を取得した場合)は、その資格喪失した月数を控除します。
月単位とあまり変わらないように見えますが、ある区分で使い残した拠出限度額を次の区分に繰り越せる点が、年単位の大きなメリットと言えます。なお、11月時点で使い残しの拠出限度額がある場合は、それを繰り越す事はできません。
【図3:拠出限度額の考え方(例)】
(3)企業型DC掛金の納付期限日
企業型DC掛金の納付期限日は、拠出する期間の最終月の翌月の初日から末日まで(資格喪失した場合は、資格喪失日から翌月の末日まで)のうち規約に定める日となります。
なお、納付期限日までに納付が困難であると認められる場合(災害その他やむを得ない理由があると認められる場合として厚生労働大臣が定める場合)は、納付期限日の延長が可能です。延長した場合は、事業主は速やかに文書でその内容及び理由を、掛金の拠出対象者に通知する必要があります。