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リタイア後の資金に不安を抱かないために――マネープラン研修を活用して成功する秘訣とは?|家計の総合相談センター 井澤江美 氏×退職金専門家 向井洋平 後編

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リタイア後の資金に不安を抱かないために――マネープラン研修を活用して成功する秘訣とは?|家計の総合相談センター 井澤江美 氏×退職金専門家 向井洋平 後編

老後の資金が 2,000 万円足りない――金融庁による金融審議会報告書が話題を呼んだのは記憶に新しい。その是非はともかく、「人生 100 年時代」を迎えている現在、マネープランを多くの人が見直すきっかけになったのは確かだろう。実は、それ以前からシニア社員だけでなく、中堅や若手社員にもマネープラン研修を行う企業が増加している。なぜ増えてきているのか、せっかくのその機会を企業や社員はどのように活用すべきか。年間で 1,000 回のセミナーと 1 万世帯の家計相談を担当する「行列のできる人気ファイナンシャル・プランナー」であり、株式会社家計の総合相談センター 代表取締役の井澤江美 氏と退職金専門家 向井洋平に話を聞いた。

—第三者によるマネープラン研修が制度への理解を深め加入率を高めるきっかけとなる

向井  企業が望む方向へとマネープラン研修の内容が細分化し、その結果、一社内あたりで年代別、テーマ別に開催していること、またその評判を聞きつけた他企業からも依頼されること、さらに福利厚生をパッケージとして提供している企業からの依頼もある、という理由から、マネープラン研修を行う回数が増加傾向にあるというお話でしたね。

年代別、というところでいえば、以前から定年退職直前の従業員を対象としたものはありましたが、「もっと早くから聞きたかった」という声に応えて、より若い世代向けにも研修を組むようになったのは、企業としてどんな意図があるのでしょうね。
井澤  例えば、トヨタグループでは、従業員たちの不安を取り除くことで、いいものづくりに集中できる環境を整えているようです。また、そもそも仕事を「見える化」をする文化がありますから、マネープラン研修を行うことで家計のキャッシュフローを「見える化」する意図もあるのではないでしょうか。
向井  カルチャー的なものがひとつあるのですね。他社ではどうでしょう。
井澤  グループ会社のあるような企業では、財形、持株会、確定拠出年金、グループ保険など、さまざまな良い制度がありますよね。でも、それを社内の人間が「こんなに良い制度があるので、もっと活用してください」と言ったところで、「担当者だから贔屓目に見ているのでは?」と訝しがられてしまう。それを、わたしどものような第三者が「いい制度で、お話をうかがって腰を抜かしましたよ」という勢いで話せば、よく伝わるのですよね。
向井  第三者の声で伝えてほしい、と。せっかくあるのだから、もったいないですよね。
井澤  そうなのです。研修後には加入率がアップしているとのことなので、企業の狙い通りになっているな、と思います。

また、給与明細や年末調整の控除などについて、OJT (オン・ザ・ジョブ・トレーニング) 的な位置づけもあるようです。年末調整の控除についての紙が配布されても、見様見真似で記入しているだけで、どんな意味があるのかわからないという人が多い。ていねいに説明したいけど、自分たちではできないので、それを体系的に説明してほしい、ということですね。新入社員向けには、はじめての給与明細を受け取ったあとに、それを題材にして見方をお伝えすることで、年末の書類の意味がわかるようにする、という意図があります。
向井  弊社は確定拠出年金に関するコンサルティング業務を行っていて社内でも制度を実施しているので、さすがにそのあたりのことは知っていてもらいたいので新入社員には給与明細の見方を交えながら説明を行っています。様々な制度のメリットを伝える上で、給与明細や年末調整などの身近な素材を活用するのは効果的ですね。
井澤  また、消費税増税が控えていることもあって、皆さん、払う税金についての関心が高まっているのですが、実は所得税や住民税についてはあまり知らない。50 代くらいの年収だと、新入社員のときには合わせて 15 %だったものが、その倍になっている。そうやってだんだん増えてきているのに実感が無いのです。

しかも、税制上の優遇が受けられるマッチング拠出制度を企業が導入していても、加入している人が少ない。
向井  拠出額が全額控除されて所得税や住民税が軽減されるうえ、年金として上乗せされるのに。
井澤  そうなのです。いくら福利厚生の担当者がそれについて話しても、「ふーん」と流されてしまってはもったいないですよね。でも、税制優遇が受けられること、将来受け取る年金が増えることをお伝えすると、しっかり受け止めてもらえる。

企業側としては、弊社が行う研修によって、用意している制度への理解を深め、加入するよう念押しできる、というメリットがあるようです。
向井  これだけいい制度を用意しているのですよ、という。
井澤  同じ会社にずっといると、本当は“いい会社”にいるはずなのにそのありがたみが薄れてきてしまい、転職したくなることがありますよね。

でも、転職してしまうと老後資金が目減りしたり、補償レベルが下がったりしてしまうことは往々にしてあります。定年後の再雇用制度にしても、企業によって年収の落差が激しいところもありますしね。

弊社では、研修先の制度を熟知した上でカスタマイズしたコンテンツを提供できるので、受講した人から「転職を早まらなくてよかった!」というお声もいただけているんですよ。
向井  マネープラン研修は、社員をつなぎとめる役割も果たしている、ということですね。
退職金専門家 向井洋平

—正しい情報を得れば無駄な不安を煽られることはない

向井  企業としても、個人としても、マネープラン研修が重要になるということですね。個人としてマネープラン研修をどう活用していけばいいか、もう少しお話を聞かせてもらえますか。
井澤  無駄な不安を抱かずに済むような活用をしていただければいいかな、と思いますね。

そもそも、「ねんきん定期便」は毎年届きますし、今回話題になったような報告書も無料で誰でもアクセスできます。意欲さえあれば、正確な情報を得られ、無駄に不安にならずに済む、というわけですよね。ただ、皆さん、普段の生活に忙しいのでなかなかそれが難しい。そういうときに、マネープラン研修を活用していただきたいな、と思うわけです。

ただ、正規雇用されている人であれば、企業が用意してくれるからその恩恵にあずかれますけど、非正規雇用や、自営業・フリーランスだとそれも難しい。

企業に属していれば、現役時代は研修を受けて正確な情報を得て何の不安もなく生活でき、優れた年金制度に加入しておけば、きちんと老後資金も貯まるし退職金も受け取れるからリタイア後も安心して生活していける。

そうでない人は、正確な情報を得られないから不安を煽られるし、年金も最低限しか受け取れないから生活が苦しくなる。

このまま放っておけば、二極化が広がってしまうのではないかと危惧しています。だから、オープンセミナーを随時開催して、会社で受講できなかったような人でも参加できるようにしているんです。iDeCo や小規模企業共済に加わってみるとか、厚生年金に加入できるように法人成りしてみるとか。そういう情報をお伝えしたいと思っているんです。
向井  なかなか必要なところに情報を届けるのは難しいですよね。
井澤  そうですね。企業に属していない人が情報源にしているメディアが、iDeCo や NISA など、老後資金のための備えを否定するような記事を掲載していると、それが本当だと思ってしまう。

リタイア後、「毎日カツカツで」と愚痴を話した同年代の相手から「わたしは iDeCo をやっていたおかげで、4,000 万円貯められましたよ」と言われたら、ショックですよね。そういう格差をできるだけなくしていきたいと考えています。
向井  研修後の個別相談も重要ですよね。
井澤  研修だけでは、実践まで進めませんからね。「いいこと聞いたなぁ」で終わっては意味がありません(笑)。

きちんと、どんな保険を選べばいいのか、どの投資信託を選べばいいのか、ご家庭ごとのキャッシュフローを作り、個別具体的に商品選びまで相談していただけます。また住宅購入に絞ったセミナーも行っており、家を買うとしたら、いくらまでローンを組めるのか、など研修内でシミュレーションをしていると、「危なく、身の丈に合っていない家を買いそうになりました」と感謝されます。

また、退職金については、企業によっては給料明細やイントラネットなどで今いくら貯まっていて、60 歳まで働き続ければいくらもらえるか、というのをポイントで見られるところもあります。確定拠出年金についても今の掛金がいくらで、マッチングできる限度額なども見られるようになっている。

退職金のポイントが、自分の頑張りで増えていくという企業もあって、そういうところは 40 歳、50 歳のセミナー内でどうすれば増えるか考えつつ、手を使って計算してもらう。キャリアアップで退職金ポイントが増える、というのが見えてくると、退職金がリアルに感じられるようになります。いざもらう段階になっても腹落ちできますしね。
向井  自分で手を動かして計算することで、リタイア後のマネープランがよりリアルに感じられるようになり、具体的な行動や判断にきちんとつなげていけるというわけですね。
家計の総合相談センター 井澤江美 氏

—リタイア後のマネーで困らないために――自社の福利厚生制度と退職金を最大限に活用

向井  自分が働いている会社の福利厚生制度について、案外みんな知らないものですよね。でも、それでは働いている今も、またリタイア後も困ってしまうことになります。恩恵を最大限に活用するにはどうすればいいでしょうか。
井澤  まずは正確に知ること。昔であれば、「退職金」は退職時に一括で受け取る「一時金」だけでしたが、今は少し複雑ですよね。確定拠出年金 (DC) や 確定給付年金 (DB) のことまで退職金として捉えるのか、退職金とそれらを分けて考えるのか。退職金ポイントを増やす方法もあるし、掛金を上乗せして年金額をアップすることもできる。

受け取り方も年金や、一時金、そのミックスなどそれぞれですよね。どういう受け取り方なら、全体として節税できるか、運用利回りでは?という視点も必要になってきます。そういうテクニックの部分などで、マネープラン研修をしっかり活用していただきたいですね。
向井  そもそも自社で確定拠出年金を導入しているか、実感していない人もいます。知っていても、会社がいくらそれに出してくれているかまでは知らなかったり。基本的な部分ではありますが、そういうことの知識が重要なのですね。
井澤  もっとも、研修で一時的に“わかった”状態を作ったとしても、継続が必要になってきます。なので、自社で導入している商品のマンスリーレポートを開いて、それを読み解くのを毎月継続してもらいたいな、と考えています。20 代でそれをはじめれば、退職する頃にはものすごい知識が身につきますよ。弊社では、マンスリーレポートを読み解くための研修も行っていますので、読み方がわからなくても参加していただければ、その後、読み続けられるかな、と。
向井  相談いただいたお客様のマンスリーレポートを読み解くことはあっても、自分のものに関しては継続して見ていくことまではしていませんでした(笑)。
井澤  そうなのですよね(笑)。でも、自分の商品だけでなく、ほかのものも見ることで、その商品の知識が深まって、それも入れてみようかな、ということになるので、それはそれでおすすめですよ。
向井  確定拠出年金という仕組みそのものが、社員にとっての学びの場となるはずなのですが、その機会を利用するかしないかで、歳とともに積み重ねられたものに違いが出てきますよね。
井澤  以前であれば、退職金で 2,000 万円とか 3,000 万円という大金をはじめて手にした結果、どう運用すればいいかわからない、どんな金融商品があるかもわからない状態で金融機関に行くような「退職金デビュー」なんて言葉がありましたが、今では学ぶ機会がたくさんありますからね。

正確な知識を積み重ねていれば、手にした退職金の運用を間違えずに済みます。金融機関の人が何を言っているのかも理解できて、要不要の対応もちゃんとできるようになるのです。
向井  自分のお金ですから、納得のいく形でプランニングしていきたいですよね。そのために、マネープラン研修がどのように役立つのか、またその機会を最大限に活用する方法も教えていただきました。井澤さん、どうもありがとうございました。
家計の総合相談センター 井澤江美 氏と退職金専門家 向井洋平

「リタイア後の資金に不安を抱かないために 前編」を読む

※取材日時 2019 年 6 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう

シニア社員のイグジットマネジメントできていますか?

労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。

シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。

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2019 年 7 月より、従来実質的に対応が困難であった金融機関の窓口における確定拠出年金の運用商品の提示や説明が解禁され、金融機関行職員がその場で対応することができるようになります。そのため、確定拠出年金の業務に携わる金融機関行職員は制度の仕組みを正確に理解したうえで、個人および法人のお客様が制度を有効に活用できるようにするための対応力が求められます。

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