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規制緩和で問われる金融機関窓口の対応力 今からできる備えとは? 後編

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規制緩和で問われる金融機関窓口の対応力 今からできる備えとは?  後編

国民年金や厚生年金保険といった公的年金を補完し、豊かな老後を送るために必要とされている私的年金。その 1 つである確定拠出年金は 2017 年に対象が拡大され、公務員や主婦 (夫) など職業にかかわらず 60 歳未満のすべての人が加入可能に。そしてまた、2019 年 7 月にも規制緩和が予定されている。その規制緩和のキモとは何か? それに合わせた『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』出版の裏舞台とは? 経済法令研究会 編集者 中村桃香 氏と本書の著者であるIICパートナーズ 常務取締役 向井に語ってもらった。

—繰り返される確定拠出年金の法改正

中村  確定拠出年金制度が始まってからというもの、制度は何度も改正を繰り返していますね。
向井  この制度がはじまる 2001 年まで、日本にはこのような形の年金制度がありませんでした。それまでは企業が従業員に対して将来の給付を約束し、そのために資金を積み立て、運用し、退職後に給付を行うタイプの企業年金制度だけがあったんですが、企業側ですべて責任を持つのが難しくなってきた。それでアメリカの制度を参考にして作られたのが、この確定拠出年金です。

確定拠出年金には企業型と個人型があり、個人型ではその名のとおり個人が自分のお財布からお金を出し、企業型では企業がお金を出す。では、それまであった企業年金制度と何が異なるのかというと、積み立てる口座が従業員ごとに作られ、運用方法も各従業員に任せられているところ。運用方法の選択次第で 60 歳を迎えたときに受け取れる金額がそれぞれ異なるんですね。

当初は、個人型については自営業者や企業年金の対象となっていない会社員のみに加入が認められていましたが、2017 年 1 月に、60 歳未満で公的年金に加入している人であれば、企業型と個人型の少なくともどちらかには加入できるように緩和された、といういきさつがあります。
中村  転職をしたり、独立したりしても、積み立てた年金が個人に属していれば、安心感がありますよね。
向井  そうです。どのようなライフコースをとったとしても対応できる。仕事を辞めたり、会社組織に属さなくなったりしても、それまで積み立てた金額がすべて自分の口座にあり、その後も自分で掛金を積み立て、運用していけるというメリットを持つのが、確定拠出年金というわけです。

—運営管理機関に求められるのは長期的な視野

向井  個人型の確定拠出年金は税制優遇が手厚く、個人にとってメリットの大きい制度なのですが、2016 年に法律が改正されるまでなかなか注目を浴びなかったんですよね。
中村  野村総合研究所の調査結果によれば、個人型確定拠出年金 (iDeCo) の商品説明を受けた 21% が加入の意思を示したにもかかわらず、その後の手続が複雑なため、そのうち 44% が加入を思いとどまるそうです。
退職金専門家 向井洋平

向井  加入者が大幅に増えたとはいえ、iDeCo の加入可能者全体から見るとまだ2%程度しか加入していない、という現実もありますよね。
中村  今回の規制緩和で、金融機関の職員の方々が窓口で商品説明の対応ができるようになりますから、その対応いかんで、思いとどまってしまった 44% のうちの何人かでも加入する方向になればいいですよね。あくまでも個人の意見ですが。
向井  説明ができるようになったという部分では緩和されましたが、一方で、確定拠出年金を実施する企業には、業務を委託する運営管理機関を定期的に評価するという努力義務が課されました。運営管理機関が提示している運用商品は加入者の立場に立って選んだものですか? 加入者にとって重要な情報がわかりやすく提示されていますか? というところを企業が 5 年ごとに評価・検討し、もし改善されないようなら変えなさいよ、というものですね。あわせて、他社との比較ができるように、運営管理機関に対して確定拠出年金で提示している商品の一覧をインターネット上に公表することが義務付けられました。これも 2019 年 7 月に施行されます。

そうすると、当然、運営管理機関である金融機関同士の競争が激しくなる。

確定拠出年金は、加入者が 60 歳になるまで引き出せないものなので、長期的な視野で見る必要があります。金融機関にとっては、すぐに儲けに直結するような仕組みではないわけです。そのようなサービスを取り扱う中で、どのように収益を確保していくのか、どのような戦略を取るのか、というのが、今後の金融機関の課題になってくるのではないかと睨んでいます。
中村  競争というと、どのようなところになるのでしょうか。
向井  運営管理機関は、その本来の役割からすると、企業や加入者から受け取る制度運営や口座管理にかかる手数料が収益源となるはずなのですが、そこではすでに価格競争が進んでしまっていて、実際には自社が販売会社となっている投資信託の残高を積み上げることで、その信託報酬 (運用の手数料) から収益を得るような構造になっています。しかし iDeCo やつみたて NISA が注目されるようになって、ここ 2,3 年で投資信託の信託報酬はずいぶん下がりました。特に株式指数などに連動するインデックスファンドは、以前は安いものでも残高に対して 0.5% ほどだったものが、最近では 0.1% 台のファンドも珍しくなくなってきました。その分、販売会社である金融機関の取り分もどんどん下がってきているわけです。

ただ、先程も申し上げたように、iDeCo に関しては今のところ全対象者のうち加入しているのはわずか 2%。まだまだ拡大する余地があります。加入者の拡大だけではなく、時間の経過とともに積み立てられた残高も増えてくる。それに比例して信託報酬の総額も増えていきますから、そうした長期的な視点に立って考えることができるかがポイントになると思います。
中村  金融機関にとっては、残高を増やしていくことが重要になりますね。
向井  確定拠出年金は「年金」という名前がついていますが、実は 60 歳になって受け取る人の 9 割は、年金ではなく一時金での受取りを選択しています。理由はいろいろ考えられますが、税制面で優遇されているというのもその 1 つです。

でも、受け取ったお金をどこに預けようか、どのように運用しようか、ということになったとき、それまでその人の確定拠出年金の資産を預かっていた金融機関であれば提案しやすいですよね? もしくは、年金として受け取るにしても「うちの預金口座を使ってください」と言うことができる。顧客との良い関係を保っていれば、確定拠出年金の積立てが終わった後も取引を継続できる可能性があるわけです。提案された個人の側は、それが自分に適したものなのかはきちんと見極めないといけないですけどね。

いずれにせよ、個人にとっては老後資金の積立てに最適な制度ですので、金融機関としてはこれをどのような形でお客さまに提供していくのかを考えていかなければならないと思います。自社が確定拠出年金の運営管理機関になるのではなく、他の運営管理機関から iDeCo の受付業務を受託し、申込みや各種手続きの窓口対応のみを行っているところもあります。

—丁寧で中立的な対応が求められる金融機関窓口

中村  実は、わたしも iDeCo に加入していますが、危うく脱落する 44% のうちの一人になりそうでした。取り寄せた書類を会社側に書いてもらう、ということがいささか面倒だったからなんです。
経済法令研究会 編集者 中村桃香 氏

向井  企業内の人事や総務部門の人たちにとっても、iDeCo について知っておくことは重要だと思います。それを福利厚生という意味合いでどのように活用できるのか、退職金制度との関係はどうなるのか、社員の方に説明できるようになりますから。
中村  そうですね。金融機関の職員の方々では、加入者が感じる負の感情を乗り越えられるような説明をしていただけるといいのかな、と思います。

60 歳になるまで税制優遇を受けながら確実に老後資金を積み立てられるというメリットと、積み立てるのを途中で止めても 60 歳まで引き出せないこと、引き出すまで毎月口座管理手数料がかかり続けることなどのデメリットもしっかり丁寧に伝えていただければ、納得したうえで加入できるのではないでしょうか。
向井  この 7 月から確定拠出年金の専任でない職員も加入者に対して商品説明ができるようになり、新たに確定拠出年金の業務に携わる職員の方もいらっしゃるかと思います。確定拠出年金の制度は複雑で全体を理解するのはなかなか難しいかもしれませんが、注目を浴びている制度でもありますので、それに対応できるスキルを身に着けられれば、それは金融機関の職員にとっても強みになるのではないかと思います。

加えて、給付を受け取る段階でのお客さまへの対応がこれから大事になっていくでしょうね。通常の金融商品と確定拠出年金についての説明をきちんと切り分けられるような、正しい知識を身につけておくことが必要だと思います。
中村  個人のお客さま、法人のお客さまに、どのように対応していけばよいのか、ということを知っていただくために、ぜひとも『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』を読んでいただきたいですね。
『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』出版の舞台裏

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※取材日時 2019 年 1 月
※記載内容は、取材時点の情報に基づくものです。

向井洋平 著『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』好評発売中

2019 年 7 月より、従来実質的に対応が困難であった金融機関の窓口における確定拠出年金の運用商品の提示や説明が解禁され、金融機関行職員がその場で対応することができるようになります。そのため、確定拠出年金の業務に携わる金融機関行職員は制度の仕組みを正確に理解したうえで、個人および法人のお客様が制度を有効に活用できるようにするための対応力が求められます。

基本的な知識からお客様への対応までをわかりやすく説明し、確定拠出年金の業務に携わる方々の一助となる一冊です。

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