改正高齢者雇用安定化法に伴う退職給付(企業年金・退職金)制度の改定 -4- 定年延長への対応
掲載日:2014年5月7日
雇用延長と人事政策~政策に応じた選択肢~
※旧定年での打ち切り支給も考えられる
定年延長を行う場合、どのような退職給付制度の改定が考えられるでしょうか。以下にその点をケースごとに取り上げます。
人事政策を見直さず、旧定年以降の退職金カーブを下げるか、頭打ちとする場合
この場合、制度内容によって、そして退職給付と貢献の関係に関する考え方によって、検討するべき点が異なってきます。それぞれについて整理してみましょう。
ポイント制・キャッシュバランスプランの場合
退職給付と貢献の関係に関する考え方 | ポイント・拠出クレジットの付与方法 | |
---|---|---|
旧定年以降においても、退職給付に反映すべき貢献を期待する | 現行制度においてすでにポイント・拠出クレジットの頭打ち等がある場合 | 定年延長後も頭打ちを継続 |
現行制度においてすでにポイント・拠出クレジットの頭打ち等がある場合 | 旧定年以降の貢献度を勘案して必要ならば頭打ちを設ける | |
旧定年以降においても、退職給付に反映すべき貢献を期待しない | 旧定年以降は、ポイント・拠出クレジットを付与しない |
最終給与比例の場合
退職給付と貢献の関係に関する考え方 | 基礎給 | 支給率 |
---|---|---|
退職給付制度を通じて報いたい貢献は、旧定年までですでに終了している | 定年時のものを継続使用 | 頭打ち |
給与と同様に、退職金の累積も貢献に応じたものにする | 最終給与(※) | 昇給率の上昇を抑える |
旧定年以降、基礎給のもととなる給与が低下している場合は、旧定年における基礎給を使用
人事政策を見直し、退職金カーブの改定を行う
現状の枠組みを維持しながら実施する場合~新定年を反映した昇格モデル、給付カーブを策定
給付水準についていえば、たとえば総人件費を現状維持という考え方であれば、定年時の退職金額を新旧でそろえることになるでしょう。これにより全体の給付カーブはなだらかになります。
給与体系が根本的に変わった場合について考えられるのは以下に例としてあげるような改定です。
・現行制度のポイント/拠出クレジットと給与との連動性がある場合には、新制度でもその連動の仕方を維持する(ポイント制・キャッシュバランスプラン)
・現行制度のポイント/拠出クレジットが給与との連動性がうすい場合には、給与カーブが下がり始める年齢と同期をとりながらポイント/拠出クレジットを低下させる、ポイント/拠出クレジットを付与しない(ポイント制・キャッシュバランスプラン)
・新給与に旧支給率の適用を基本し、旧定年以降の支給率は頭打ちとする(最終給与比例)
給与体系が根本的に変わらず、旧定年以降のみ変わった場合であれば、たとえば以下のようなパターンが考えられます。
・給与カーブが下がり始める年齢と同期をとりながらポイントを低下させる(ポイント制)
・ポイントを付与しない(ポイント制)
・支給率を低下させる(最終給与比例)
現状の枠組みを根本的に変える場合
現状の枠組みを根本的に変える場合とは、ポイント制や最終給与比例制からキャッシュバランスプランなどに変更するケースとなります。この場合、定年延長は数多くある変更点、改定内容のうちのひとつの要素に過ぎないこととなりますので、他の一般的なケースの記述を参考に対応を決定することになるでしょう。
退職給付改定を行う際のポイント
最後に、私が数多くのプロジェクトに携わった経験から考える、経営目的に沿った退職給付改定を行うためのポイントを3つあげて、本シリーズの結びとしたいと思います。今後退職給付について検討される際に、ご参考としていただければ幸いです。
経営目的に沿った退職給付改定を行うためのポイント
・人事政策・給与政策と整合的な制度設計と社員へのメッセージ作り
・法令(確定給付企業年金法・確定拠出年金法)を遵守した年金設計
・会計およびキャッシュ面のコストの算定
次回は本シリーズの最終回として、退職給付制度の改定について解説します。