企業年金・退職金の価値向上-7- 企業年金・退職金のコスト(総論)
掲載日:2015年12月21日
企業年金・退職金のコストとは?
第1回目「企業年金・退職金の価値向上-1- 企業年金・退職金は眠れる資産?」でお伝えした企業年金・退職金の価値の定義は以下の通りでした。
(*1)パフォーマンス・・・・・(企業年金・退職金を設けている人事戦略上の)目的の達成度
(*2)コスト・・・・以下(1)(2)に関する広い意味のコスト(変動リスクも含む)
(1)会計上の費用(退職給付費用、手数料等)の水準と変動リスク
(2)キャッシュアウト(掛金拠出額、一時金支払額、手数料等)の水準と変動リスク
今回は、このうちコストとは何なのか、もう少し深掘りしてみたいと思います。
パフォーマンスに比べると、このコストの削減については、企業としてかなり意識が高く、様々な対応が実行されています。むしろ、「リストラ、人件費削減」がテーマとなる『守りのフェーズ』において、パフォーマンスについての意識が低かったがゆえに、過剰な対応が行われていたケースもあったかもしれません。
ここでは、『(企業年金・退職金の)価値 = パフォーマンス / コスト 』として捉えていますので、パフォーマンスの低下度合いを上回るコスト削減が望ましく、また、パフォーマンスが十分に高ければコスト負担の許容度も高いものと考えます。
よって、これから述べるコストの削減策について検討する際には、パフォーマンスの低下度合いが最小限に留まるような配慮や、別途、前述したパフォーマンス向上策とセットでの検討が必要となるでしょう。
コストのシミュレーション
会計上の費用については「総額」「総人件費に対する比率」「営業利益に対する比率」などの水準及び変動リスクについて、可能であれば長期予測シミュレーションを行い、現在の制度のコストを把握しておくべきでしょう。
なお、会計上の費用のうち、確定給付型制度の退職給付費用については、その将来水準及び変動に会計上の積立不足(=退職給付債務-年金資産)が影響しますので、退職給付債務や年金資産の長期予測シミュレーションも必要になります。
また、キャッシュアウトについても同様に、「総額」「営業キャッシュフローに対する比率」などの水準及び変動リスクについて、可能であれば長期シミュレーションを行い、現在の制度のコストを把握しておくべきでしょう。特に一時金支払額は、退職者の発生動向次第で大きく変動しますので、シミュレーションの必要性がより高いといえます。
そして、キャッシュアウトのうち、掛金拠出額については、その将来水準及び変動に年金財政上の積立不足(=数理債務-年金資産)が影響しますので、数理債務や年金資産の長期予測シミュレーションも必要になります。
このような現状分析を行ったうえで、財務戦略上のコスト負担許容レベルに収まっているか否かを確認するとともに、次回のコラムでお伝えする具体的施策(制度設計の見直し、年金運用体制の見直し、企業年金・退職金運営コストの見直し)による改善度合いを測ることが望まれます。