企業年金・退職金の価値向上-1- 企業年金・退職金は眠れる資産?
掲載日:2015年9月25日
はじめに
『企業年金・退職金の課題解決を通じて、企業の成長発展に貢献したい』
・・・・このように考え続けていると、以下のような疑問が湧いてきます。
「企業年金・退職金をもっと企業経営に役立つものにできないか?」
「企業年金・退職金の価値を向上させるにはどうすればよいのか?」
ですが、一般的には、(企業)年金については、「レガシーコスト(負の遺産)」と表現されることもあるように、ネガティブなイメージを持っている方も多いように思います。
このネガティブなイメージは正しいのでしょうか?
私は、企業年金・退職金について、会社ごとに十分にそのパフォーマンスを発揮し切れていない「眠れる資産」であり、取り組み次第で、より経営に役立つ「価値ある資産」となるのではないかと考えています。
より経営に役立つ、価値のある企業年金・退職金を実現するためには、どのように考えるべきか、一つのアプローチをお伝えしていきたいと思います。
近年、公的年金のスリム化が確実視される中、「企業年金・退職金への期待あるいは相対的な価値」はますます高まっており、今後も一層の高まりを見せることが予想されます。
また、労働市場では、生産年齢人口の減少と景気回復等を背景に、失業率の低下、有効求人倍率の上昇が進み、業種ごとに濃淡はあるものの、「リストラ、人件費削減」がテーマとなる『守りのフェーズ』から、「人材不足、賃上げ」等がテーマになる『攻めのフェーズ』へと移りつつあります。
このようなタイミングだからこそ、今まさに、企業年金・退職金を「企業経営に役立つ、優れたしくみ」として見直すことが必要なのではないでしょうか。
企業年金・退職金の価値とは?
企業年金・退職金を企業経営にとって役立つ、価値のあるものとするため、まず「価値」の定義について、一つの考え方をお示しします。
(企業年金・退職金の)「価値」とは何でしょうか?
「価値」に関しては様々な考え方がありますが、たとえばバリューエンジニアリング(価値工学)の考え方(価値=機能/総費用)を参考にすると、以下のようにとらえることができます。
(*1)パフォーマンス・・・・・(企業年金・退職金を設けている人事戦略上の)目的の達成度
(*2)コスト・・・・以下(1)(2)に関する広い意味のコスト(変動リスクも含む)
(1)会計上の費用(退職給付費用、手数料等)の水準と変動リスク
(2)キャッシュアウト(掛金拠出額、一時金支払額、手数料等)の水準と変動リスク
トータルコンペンセイション(総額報酬)と企業年金・退職金の価値
人事戦略及び財務戦略上、トータルコンペンセイションを、給与・賞与・退職金・企業年金・その他の福利厚生費へどのようなポートフォリオで配分すれば、最適な人材の採用・開発・定着・モチベーション向上ができるのか、全体最適を優先的に考えることが重要です。
しかし、企業年金・退職金については、その専門性の高さ、難解さゆえに、トータルコンペンセイションの検討において、あまり深く議論されないケースも多いのではないでしょうか。本記事の内容に基づき、一旦、企業年金・退職金に関するコストパフォーマンスについて整理することにより、トータルコンペンセイションの検討にあたって、企業年金・退職金について議論する際の一助となれば幸いです。
次回以降、企業年金・退職金の価値を考えるべき理由でもあり、企業年金・退職金の価値に影響を与えうる環境変化の内容、そして、価値向上に向けてどのような取り組みが考えられるのか、順次ご紹介したいと思います。