自己都合退職だと退職金はいくらもらえる? 自己都合退職と退職金の関係
初めての転職、ところで「自己都合退職」と何が変わるかご存じですか
転職を考えるとき、誰でも考えるのが「退職金はもらえるのかな?」という疑問でしょう。退職一時金であれば退職金規程、企業年金であれば企業年金の規約に支給の条件が書かれています。
このとき、ちょっと注意してほしいのが「退職事由」です。退職の仕方によって、実は退職金額が変わってくることがあるのです。
退職事由は大きく分けると
- ・ 自己都合退職
- ・ 会社都合退職
- ・ 定年退職
があります。
自己都合というのは、自分で辞表を出して、会社を辞めることを申し出、業務の引き継ぎなどを行い、退職をするパターンです。
会社の都合で「辞めさせられる」場合や会社が倒産して「辞めるしかない」場合の辞め方が会社都合、会社が定めた一定の年齢に達した場合、一律に対象となるのが定年退職です。
このとき、「会社都合」と「定年退職」については退職金額は定めのとおりもらえるのが基本です (リストラ時などは増額されることもある)。しかし、自己都合には受取額の差があるのが一般的なのです。
一般に「自己都合退職」は退職金が満額支給されません。企業年金も含まれます
自己都合退職は会社にとっては予定外の事態です。これからもっと活躍して欲しいと思っていた人材がいなくなることで、あらたな人材確保が必要になりますし、また研修等も行わなければなりません。
また、日本の退職金制度設計においては、自己都合で辞めていく若者についてある種の「ペナルティ」として減額することはおかしくないという考え方がありました。
あなたの会社の退職金規程や企業年金規約をチェックしてみてください。おそらく勤続年数等に応じて決まる「自己都合退職時の減額率」の表があるはずです。
一般には勤続年数が短い場合、減額率が高めで設定されており、ある程度勤続年数がある場合、減額率は低くなります。55 歳以降のように本音では離職してもらってもかまわないような年齢では、減額率がゼロ、つまり会社都合も自己都合も退職金額が同じ、というような設計もあります。
人によっては、「そもそもまだ退職金額も少ないのに、さらに 30 %も減らされるのなら、もう少しこの会社にいようかな」と考え、転職を保留するかもしれません。
会社は退職金規程にこうしたルールを加えることにより「若い人が会社にとどまろうとする動機付け」を与えているのです。
減額率は会社ごとに決められますが、3 年未満の離職は支給ゼロのことも
減額率には法律上の決まりがありません。各社ごとの退職金規程次第です。一般には勤続年数が短い場合に 20 〜 30 %ほど、勤続年数が長い場合は 10 %ほどの減額をする規程が多いように思いますが、自分の会社の定めを確認してみてください。
また、もうひとつ「入社 3 年」を一区切りとする定めもあります。これは「入社 3年で初めて退職金がもらえるようになる」というものです。今年の春に入社して年末に退職するような人、2 年目で辞めた人などは、30 %減額どころではなく、そもそも退職金がない、という定めが多いのです。
これらの定めは、退職一時金制度であれば「退職金規程」、確定給付型の企業年金制度であれば「企業年金規約」に書かれています。
こうした退職金関連規程は社内のどこかで縦覧できるようになっていますので (イントラネットなどにワードファイルや PDF ファイルで開示していることもある)、社内でチェックしてみるといいでしょう。
3 年がんばると、確定拠出年金なら 1 円も減らされず辞めることができます
こうした自己都合退職に関する減額ルールの例外となる制度があります。企業型の確定拠出年金です。
確定拠出年金制度は自己責任型の企業年金ということで運用判断は自分で決めなければなりません。そのトレードオフ、という感じで、毎月入金された掛金とその運用益については個人に帰属する財産であるという考え方があります。
そのため「自己都合」「会社都合」という切り分けがないのです。原則として全額をそのまま、転職しても持っていくことができます。
確定拠出年金制度を採用している会社の場合、退職金は離職理由にマイナスの影響は生じない、ということになるわけです。
ただし、勤続 3 年未満については退職金がまったく生じない会社が多いことから、確定拠出年金の規約に定めている場合のみ、減額することができます。
もし「掛金累計額 < 運用残高」である場合は、差額は自分のものとすることができます (金額はわずかかもしれませんが)。逆に「掛金累計額 > 運用残高」であった場合は差額を徴収されることはありません。
まとめ:転職を考えたときは、退職金規程も確認してみよう
あなたがもし、ぼんやりと転職を考えているのであれば、一度退職金規程を読み込んでいることをオススメします。
仮に勤続 2 年半で転職を急ぐくらいなら、3 年を過ぎてから決断してもいいでしょう。減額されたとしても退職金をもらえる可能性が高まります。
退職金が今後の勤続によって増えていくことなども理解できると、今のままもう少しがんばろうと考えることができ、自分のキャリアを見つめ直すきっかけとなるかもしれません。
もちろん、受け取り金額が下がってもなお転職を決断できる場合もあるでしょう。そうであれば、自分の転職の決意が揺るぎないことを確認することにもなります。
あなたのキャリアと退職金は実はつながっているのです。
よくある質問
自己都合退職とは?
自己都合というのは、自分で辞表を出して、会社を辞めることを申し出、業務の引き継ぎなどを行い、退職をするパターンです。
「会社都合」と「定年退職」については退職金額は定めのとおりもらえるのが基本です (リストラ時などは増額されることもある)。しかし、自己都合には受取額の差があるのが一般的です。
自己都合退職では退職金は支給されますか?
自己都合退職では退職金は満額支給されません。一般には勤続年数が短い場合、減額率が高めで設定されており、ある程度勤続年数がある場合、減額率は低くなります。
減額率には法律上の決まりがありません。各社ごとの退職金規程次第です。一般には勤続年数が短い場合に 20 〜 30 %ほど、勤続年数が長い場合は 10 %ほどの減額をする規程が多いように思いますが、自分の会社の定めを確認してみてください。
著者 : 山崎俊輔 (やまさき しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表
AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。中央大学法律学部法律学科卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職>金・企業年金制度と投資教育が専門で、厚生労働省社会保障審議会確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員として法律改正論議にも携わる。日経新聞電子版ほか、12本の連載を持つ人気FPのひとり。
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