定年延長・継続再雇用を考える際に最初に問いかける5つの質問
70歳就業法の施行を契機に、定年延長を検討する企業や継続雇用制度の見直しを行う企業が増えてきています。
しかし、実際に社内で検討を進めていくためには、その必要性を経営に説明したり、プロジェクトメンバーを集めたりするだけでも一苦労です。また、これまで取り組んだことのない課題ということもあり、社内人材だけでは経験やノウハウがなく、途中でプロジェクトが進まなくなるケースは少なくありません。
実はプロジェクトの成功のカギは序盤にあります。ここでは、プロジェクトを停滞させず前に進めるためにプロジェクト序盤で何をしなければならないのか、その秘訣について解説します。
定年延長や継続雇用制度はあくまで手段だと認識しよう
プロジェクトのスタートにあたっては、定年を60歳から65歳に引き上げる所謂「定年延長」をとるか、定年は60歳のままで退職しその後希望する者と新たに労働契約を結ぶ所謂「継続雇用制度」をとるのかを決める必要はありません。むしろどちらか「ありき」で検討をはじめるのはお勧めしません。
定年延長も継続雇用制度もシニア社員を適切に処遇しエンゲージメントを高めるために用いる手段でしかありません。どちらが自社に合うのかは、シニア社員に期待する役割によって変わってきます。こうした期待する役割や活躍の議論が済まないうちにどちらか「ありき」で決めてしまうと、「定年延長するけど正直なところ60歳前と同じ報酬は出せない」、「60歳前と同じ働き方は期待できないので、違う仕事に就かせたい。でも処遇の変更は難しい」といった形で袋小路となり検討が進みません。
定年延長か継続雇用制度かはあくまでも「シニア社員の活躍を期待し適正な処遇で働いてもらうための手段」として受止め、シニア社員がどういった仕事に就くのか、どのような役割を期待するのか等、シニア社員が活躍する姿をイメージするところから議論をスタートさせましょう。
最初に問いかける5つの質問
シニア社員が活躍するイメージについて平場で議論していくことも難しいと思いますので、まずは次の5つの質問について共有し、その答えを持ち寄ってみてください。
✔️ シニア社員は60歳以降もそれまでと同じ仕事に就いて活躍することが期待できるか?
✔️ 活躍が期待できる人の方がそうでない人よりも多いか?
✔️ 60歳以降もキャリア(成長)が見込まれるか?
✔️ シニア社員がいることによって若手・中堅社員がポジティブになれる点は何か?また、その逆にネガティブになる点は何かあるか?
✔️ 60歳迄の報酬は提供される労働力に見合ったものか?
最初の質問では60歳を境にしてシニア社員の仕事を変える必要があるか否かを聞いていますが、意図するところは「仕事と年齢の関係性を明確にする事」にあります。 例えば、一定以上の体力や集中力が必要な仕事の場合、加齢によりこれまでと同じような活躍が厳しくなることも想定されますので、一定年齢を境に仕事内容を変えていくことが求められます。逆に、特に衰えはなく同じ仕事に従事できるという事であれば変えないことが合理的です。
実際は「仕事と年齢の関係性」だけではなく、最後の質問にある「労働と報酬のつり合い」や「若手・中堅への影響」というところも絡んでくるので、それぞれの質問から関連する情報を繋ぎ合わせ「誰に、どんな仕事を期待するか」を明確にしていきます。
著者 : 八丁宏志 (はっちょうこうじ)
クミタテル株式会社 取締役
1979年生まれ。専門学校卒業後、システム開発会社を経てIICパートナーズ入社。社内インフラの整備・運用からソフトウェアの開発・保守を手掛け、退職金・企業年金のコンサルティングにも従事。2020年7月、クミタテル株式会社設立とともに取締役に就任。人数規模、業種業態を問わず退職金制度を中心としたコンサルティングサービスを提供。