企業年金・退職金の価値向上-4- 企業年金・退職金の価値におけるパフォーマンスとは
掲載日:2015年11月9日
企業年金・退職金の価値の定義
(*1)パフォーマンス・・・・・(企業年金・退職金を設けている人事戦略上の)目的の達成度
(*2)コスト・・・・以下(1)(2)に関する広い意味のコスト(変動リスクも含む)
(1)会計上の費用(退職給付費用、手数料等)の水準と変動リスク
(2)キャッシュアウト(掛金拠出額、一時金支払額、手数料等)の水準と変動リスク
企業年金・退職金制度設立の目的とは
ではまず、企業年金・退職金を設けている人事戦略上の目的とは何でしょうか?
当然、企業によって様々な人事戦略上の目的があるはずですが、例えば以下のようなものが考えられます。
1.優秀な人材の採用
2.優秀な人材の定着
3.従業員のモチベーション向上・・・・etc.
実際に、下記のような調査データがあります。
◆ 人事戦略における対象給付制度の目的
1.優秀な人材を採用する・・・73%
2.優秀な人材の転職を防ぐ・・・67%
3.従業員の士気を高める・・・83%
4.従業員の老後の生活保障・・・95%
5.労働条件で同業他社と遜色ないようにする・・・85%
6.従業員の不祥事を防ぐ・・・20%
出所:年金シニアプラン総合研究機構「老後保障の視点から見た企業年金評価に関する研究(平成21年度)」における「退職給付制度導入の理由」データを基に、非該当及び無回答を除いた上で、肯定的な回答を集計
なお、上記において「4. 老後の生活保障」や「5. 同業他社と遜色ないように」といった回答が多くなっています。これらは、「1. 採用」、「2. 転職防止」、「3. 士気向上」といった人事戦略上の目的を達成するためのアプローチと考えることができるでしょう。
つまり、「4.老後の生活保障」という「従業員にとっての大きな報酬(或いはメリット)」を提供することにより、「1. 採用」、「2. 転職防止」、「3. 士気向上」といった人事戦略上の目的を達成することが可能になる、という整理です。
企業年金・退職金制度設立の目的は明確か
さて、みなさんがお勤めの企業では、経営環境を踏まえた、経営戦略、人事戦略における「企業年金・退職金を設けている目的」は明確になっているでしょうか。
目的が明確になっていなければ、あるいは制度導入時の目的が現在の経営戦略、人事戦略にマッチしていなければ、「人材不足、賃上げ」がメインテーマとなってきたこのタイミングで、目的を再設定してはいかがでしょうか。
制度導入時の目的という点では、高度成長期、運用環境が極めて良かった時代に、財務メリットを重視して企業年金を導入したというケースも多いかもしれません。しかし、財務メリットは、人事戦略上の目的達成度を意味する「パフォーマンス」側の要因というよりは、「コスト」を小さくする要因であると本書では整理します。
日本の企業年金は退職一時金制度の発展形として浸透してきている、という背景を考えると、その元となっている退職一時金制度には、何らかの人事戦略上の目的があったはずです。それが風化しつつあるのであれば、このタイミングで改めて検討し、再設定する良い機会ととらえることができるでしょう。
次回からは、具体的なパフォーマンス向上策についてお伝えしてまいります。