人口減少・高齢化社会における人材確保戦略
少子化による人口減少を背景として、人手不足や採用難は恒常的な経営課題になりつつあります。一方で、70 歳までの就業機会確保のための法改正が予定されている中、バブル時代の大量採用世代をどう活用し、処遇していくべきか、頭を悩ませている企業も多いことでしょう。
こうした状況において、企業はどのように人材を確保し、また活用していけばよいのでしょうか。
労働市場のレッド・オーシャンとブルー・オーシャン
以前に比べると転職や中途採用も一般的になってきましたが、日本ではまだまだ新卒一括採用が中心です。しかし新卒採用は売り手市場が続いており、計画の人数をなかなか確保できないという採用担当者の声がよく聞かれます。
周知のとおり、少子化が進んだことによって新卒採用の対象となる年齢層の人口は減り続けています。22 歳の人口は 10 年前と比べて 8 %減少し、10 年後には今よりさらに 15 %減少します。これだけ母数が減れば競争が激しくなるのは当然といえます。
こうした状況に海外企業との人材獲得競争という要素も加わり、最近では新卒を年収 1000 万円で採用するというニュースも見かけるようになりました。
これとは対照的に、60 歳の人口は今後どんどん増えていきます。10 年前と比べると 3 割減っていますが、今がほぼ底で、10 年後には逆に 2 割増加します。
さらに、60 歳定年で引退する人は今や少数で、70 歳くらいまでは就業を希望する人が多くなっています。シニアの雇用に積極的な企業は限られていますから、そうした企業にとっては採用のチャンスが広がることになります。
となると、国内の採用に関して人材獲得競争を勝ち抜き、一定のボリュームを確保するには次のいずれかの方策をとるしかありません。
1. 他社にはない魅力的な条件を提示して、競争の激しい新卒・若手の人材を確保する
2. 中高年を活用できる環境を整え、競争が少ないシニアの人材を確保する
2. に関しては、環境だけでなく、ビジネスそのものをシニア社員が主力を担えるような内容に転換していくという発想もあるかもしれません。さて、あなたの会社ではどちらの方向を目指していきますか? (それとも海外での採用に活路を見出しますか?)
どちらにしても必要なのは「差別化」
どちらの方向を目指すにしても、必要となるのは他社との「差別化」です。新卒・若手の人材を確保するには、応募者にとって他社よりも魅力を感じられる「何か」を提示しなくてはなりません。それは報酬に限らず、職場環境や将来の成長機会など様々なものが考えられますが、採用だけでなく、その後の定着にもつなげられるかが大事になるでしょう。
また、中高年の活用に関しては、他社で活躍の機会を失った社員を活かせる場を創出したり、環境を整える必要があります。重要なのは、報酬水準よりも、自分が同僚や取引先に対して役に立っているという実感かもしれません。新たに採用したシニア社員がやりがいを持って仕事をしている様子は、長年自社に勤めてきた同年代の社員にとっても刺激となるでしょう。
採用活動にあたっては、どのような要件を満たす人材が欲しいのか、ということについても他社とは違う形で明確にできるかがカギとなります。どこからも高く評価されるような人材はいくら好条件を出しても競争になりますが、ほかではあまり注目されないけれども自社では高く評価できるという要素があれば有利になります。
人材獲得競争が激しくなる中、商品やサービスだけでなく、人材の確保や活用戦略についても差別化が求められます。
出口 (イグジット) を見据えたシニア雇用体制の確立をしましょう
労働力人口の減少と高齢化が同時進行する中、雇用の入口にあたる採用、入社後の人材育成・開発に加え、出口 (イグジット) をどうマネジメントしていくかが、多くの企業にとっての課題となりつつあります。特に、バブル入社世代が続々と 60 歳を迎える 2020 年代後半に向けて、シニアの雇用をどう継続し、戦力として活用していくのか、あるいはいかに人材の代謝を促進するのか、速やかに自社における方針を策定し、施策を実行していくことが求められます。多くの日本企業における共通課題であるイグジットマネジメントの巧拙が、今後の企業の競争力を左右するといっても過言ではありません。
シニア社員を「遊休人員化」させることなく「出口」へと導くイグジットマネジメントを進めるために、まずは現状分析をおすすめします。
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