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企業型確定拠出年金の設計 DC Design

企業型確定拠出年金(DC)の設計は、法令に基づき、実施企業ごとに決定していきます。 注:法改正により2020年以降、順次いくつかの制度改正が実施されます。詳しくは「70歳就業時代のDC制度設計~雇用・年金制度改正にどう対応するか」をご覧ください。

企業型確定拠出年金(DC)を実施する際には、実施事業所に使用される60歳未満の厚生年金被保険者全員を加入者とする(掛金の拠出対象とする)のが原則ですが、以下に掲げる「一定の資格」を満たす者を加入者とすることも認められています。

 

  • 一定の職種(研究職、営業職、事務職)に属する者
  • 一定の勤続年数以上(または未満)の者
  • DCを実施するときに「50歳以上の一定の年齢」未満である者
  • 希望する者(一度加入した者は任意に加入者資格を喪失することはできない。)

 

なお、上記のような加入者資格を定める場合には、DCの加入者とならない者について代替措置(前払いを含む他の退職給付制度)を講じる必要があります。ただし、嘱託社員やパート社員等、労働条件が著しく異なる者については、必ずしも代替措置を講じる必要はないとされています。
実際には、通常の退職金制度と同様に正社員のみをDCの加入者としている企業が多くなっていますが、その場合、正社員以外の従業員(60歳未満の厚生年金被保険者)に対しては、代替措置を講じるか、「労働条件が著しく異なる」ことを示す必要があります。

加入者は、資格喪失年齢に達したとき、その他退職や死亡等により加入者資格を満たさなくなったときに加入者資格を喪失し、掛金の拠出対象ではなくなります。資格喪失年齢は原則として60歳ですが、60歳以上65歳以下の一定の年齢で定めることもできます。ただし資格喪失年齢を60歳超とした場合でも、60歳を超えて新たに加入者となることは認められません。
資格喪失年齢に到達したことにより、または60歳以降に退職したことにより加入者資格を喪失した者は、資産の運用のみを行う運用指図者となり、老齢給付金の支給要件を満たしたときに給付を受け取ることができます。また、加入者であった者で障害給付金の受給権がある者も、自社のDCの運用指図者となります。
一方で、60歳未満で加入者資格を喪失した者については、障害給付金の受給権がある場合や死亡の場合を除き、原則として他の企業のDCまたは個人型確定拠出年金(iDeCo)に資産を移換することとなります。

【制度改正の動向】

現行の法令では、DCの資格喪失年齢が65歳である場合でも、60歳以上64歳未満で転籍となったときには、転籍先にDCがあったとしても加入を継続することはできません(同一企業要件)。60歳以降の継続雇用制度としてグループ企業への転籍を行っている企業では、この点がDCの資格喪失年齢を引き上げるうえでの障害となっていることから、次期法改正にて同一企業要件を撤廃するとともに資格喪失年齢を最大70歳とする改正案が示されています。

企業型確定拠出年金(DC)の加入者には会社が拠出する「事業主掛金」を必ず設定する必要があります(0円は不可)。事業主掛金の算定方法は以下のいずれかの方法により定めることとなります。

 

  • 定額(全加入者同一の掛金額)
  • 給与の一定率(全加入者同一の掛金率)
  • 定額と給与の一定率の合計

 

なお、給与の一定率については、原則として給与規程や退職金規程等に定められたものを用いることとされており、退職金ポイント等、DCのために別途定めた給与を用いることも可能です。実際、多くの企業では給与の一定率の方法により事業主掛金を設定しています。
また、DCの掛金(事業主掛金と、後述する加入者掛金の合計額)には以下のように上限(拠出限度額)が定められており、算定された事業主掛金がこれを超過する場合には、超過分を他の退職給付制度(前払いを含む)で支給する等の対応が必要となります。

 

DC掛金の拠出限度額(1月あたり)

iDeCoへの同時加入 認めない 認める(注1)
他の企業年金(注2)の加入者である者 27,500円 15,500円
他の企業年金の加入者でない者 55,000円 35,000円

注 1:制度上、DC(企業型)と同時に個人型確定拠出年金(iDeCo)にも加入できるようにすることが可能。この場合、本人がiDeCoに加入するかどうかにかかわらず、DC(企業型)の拠出限度額は上記のとおりとなる。
注 2:確定給付企業年金及び厚生年金基金

DCの掛金は原則として毎月拠出します(当月分の掛金を、翌月末までに資産管理機関に納付)。あらかじめ定めた月に2ヶ月分以上をまとめて拠出することも可能ですが、事業主掛金を毎月拠出以外の方法で拠出している例はほとんどありません。
事業主は、各加入者に対して継続して掛金を拠出しなければなりませんが、給与が支払われない休職等の期間については、例外的に掛金の拠出を中断する期間として定めることができます。
なお、各事業年度に支出した事業主掛金はその全額が損金に算入され、掛金の拠出時点では個人(従業員)の所得にもなりません。

企業型確定拠出年金(DC)では一度拠出された掛金は加入者個人の口座で管理され、懲戒解雇のような場合も含めて後から減額されることはありません。
しかし、勤続3年未満で退職したことにより加入者資格を喪失した従業員に対しては、事業主掛金に相当する額を返還させる規定を設けることができます(死亡や資格喪失年齢に達したことにより加入者資格を喪失した者は対象外)。
返還の対象となる勤続年数を3年未満より短い期間で設定したり、返還すべき退職事由を懲戒解雇や自己都合退職等に限定することも可能です。
事業主への返還額は原則として事業主掛金の総額となりますが、運用損失により資産額が事業主掛金の総額を下回っている場合は資産額が返還額となります。
また、資産額に事業主掛金以外を原資とする部分(具体的には加入者掛金や他制度からの移換金)が含まれている場合、返還の対象となるのは事業主掛金を原資とする部分に限定されるため、当該部分の按分方法をあらかじめ定めておく必要があります。

企業型確定拠出年金(DC)の掛金は事業主が拠出しますが、加入者が給与天引きにより掛金(加入者掛金)を拠出し、事業主掛金に上乗せできる仕組みが用意されています。この仕組みは一般に「マッチング拠出」と呼ばれています。
マッチング拠出を導入するかどうかは各企業ごとに決定し、導入する場合は加入者掛金の額を設定します。加入者掛金は具体的な金額により複数設定し、例えば「1,000円以上1,000円単位の任意の額」のように、各加入者が拠出可能な最大の範囲で設定するよう努めることとされています。
マッチング拠出が導入された場合にも加入者掛金を拠出するかどうか、及び加入者掛金としていくらを選択するかは各加入者の任意であり、加入者掛金の拠出を停止したり、再開することも可能です。また、加入者の意思による加入者掛金の額の変更は年に1回のみ行うことが認められています。
ただし加入者掛金の選択にあたっては以下の条件をいずれも満たす必要があり、事業主掛金がDC掛金の拠出限度額に達している場合には、加入者掛金を拠出することはできません。

 

  • 加入者掛金は事業主掛金以下であること
  • 事業主掛金と合計して拠出限度額を超えないこと

(注)事業主掛金が変更されたことにより加入者掛金の変更が必要となった場合の変更は、加入者の意思による年1回の変更にはカウントされない。

 

また、事業主掛金を毎月拠出以外の方法により拠出している例はほとんどありませんが、加入者掛金については賞与の月などにまとめて拠出できるようにしている企業も一部にあります。
企業型確定拠出年金(DC)の加入者掛金は税制上、小規模企業共済等掛金控除の対象となり、拠出額の全額が本人の所得から控除されます。マッチング拠出は、所得税・住民税の優遇措置を設けることで、本人の自助努力による老後に向けた資産形成を支援するための仕組みと位置付けられます。
マッチング拠出はDC実施企業のうち約3割で導入されており、導入企業における加入者全体の3割程度の加入者が実際に加入者掛金を拠出しています。

企業型確定拠出年金(DC)において加入者本人が掛金を拠出できるようにする仕組みとして、マッチング拠出のほかに個人型確定拠出年金(iDeCo)との併用があります。
自社のDCに加入している従業員がiDeCoにも同時に加入することを認めることで、従業員はiDeCoにも加入して自ら掛金を拠出することができるようになります。
DCとiDeCoを併用する場合には、iDeCoの拠出限度額の分だけDCの事業主掛金の拠出限度額が引き下げられることとなります。
一方、従業員はiDeCoの拠出限度額の範囲内で自由に掛金額を設定することができます。なお、マッチング拠出のように、事業主掛金以下でなければならない等の制約はありません。

 

DCとiDeCoを併用する場合の掛金の拠出限度額(1月あたり)

区分 DCの限度額 iDeCoの限度額(注1)
他の企業年金(注2)の加入者である者 15,500円 12,000円
他の企業年金の加入者でない者 35,000円 20,000円

注 1:iDeCoの掛金は月額5,000円以上1,000円単位で各加入者が任意に設定する。
注 2:確定給付企業年金及び厚生年金基金

なお、マッチング拠出を導入している企業ではiDeCoとの併用はできず、逆にiDeCoとの併用を認める場合はマッチング拠出は不可となっています。
また、本人がiDeCoに拠出した掛金は、マッチング拠出の加入者掛金と同様に小規模企業共済等掛金控除の対象となり、拠出額の全額が所得から控除されます。
iDeCoとの併用を行うと事業主掛金の拠出限度額を引き下げなければならないことなどから、実際に併用している企業は非常に少ないですが、事業主掛金が拠出限度額よりもかなり低い水準にある場合には、マッチング拠出よりもiDeCoとの併用のほうが、加入者はより多くの掛金を自ら拠出することができます(マッチング拠出では、加入者掛金は事業主掛金以下でなくてはならないため)。 

【制度改正の動向】

上記のとおりiDeCoとの併用を認めている企業は現在非常に少なく、DCに加入していることで加入者掛金の拠出可能枠を十分に活用できないケースもあることから、次期法改正にて規約の定めに関係なくiDeCoに加入できるようにする制度改正案が示されています。また、マッチング拠出を実施していても、加入者本人の選択により(マッチング拠出を利用せずに)iDeCoに加入することも認める方向です。
なおDCの事業主掛金が35,000円(他の企業年金の加入者である場合は15,500円)を超えている場合は、全体のDC掛金限度額から事業主掛金を控除した範囲内でiDeCoの掛金を拠出できることとなります。

企業型確定拠出年金(DC)実施企業において、入社等により新たに加入者となった従業員が以前に他社のDCやその他の企業年金制度等に加入しており、その資産等を自社のDCに移換することを申し出た場合には、移換金を受け入れることとなります。具体的には以下のような資産や給付が移換の対象となります。

 

  • 以前の会社で積み立てたDCの資産
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)で積み立てた資産
  • 以前の会社で加入していた確定給付企業年金または厚生年金基金の脱退一時金相当額
  • 以前に企業年金連合会に脱退一時金等を移換し、通算企業年金の原資となっている積立金

 

また、DC実施企業において他の退職金制度等の改定(他制度からDCへの移行)を行った場合には、以下のように他制度で積み立てた資産等をDCに移換することができます。

 

制度改定に伴うDCへの移換可能額

移行前の制度 移換可能額
退職一時金制度 移行前後の自己都合退職金額の差額(注1)
確定給付企業年金及び厚生年金基金制度 移行前後の最低積立基準額の差額(制度終了の場合は残余財産の分配額)
中小企業退職金共済制度(中退共) 解約手当金相当額

注 1:移換が終了するまでの期間に応じた利子相当額を加えることができる。
注 2:中小企業でなくなった場合、及びDCを実施する企業と合併等を行った場合に限り、退職金共済契約を解除してDCに資産を移換することが可能。

確定給付企業年金、厚生年金基金及び中小企業退職金共済からの移換については一括で行われ、確定給付企業年金及び厚生年金基金に積立不足がある場合には、そのうち移行割合に応じた額を制度移行時に一括拠出する必要があります。
一方、退職一時金からの移換については、制度移行を行う年度を含めて4~8年度の範囲で各年度に均等に分割して移換することとなります。
なお、積立不足のある確定給付企業年金及び厚生年金基金からの移行に伴う一括拠出掛金や、退職一時金からの各年度の移換金の支出は、その全額が損金に算入されます。
また、資産の移換時点では、移換金は個人(従業員)の所得にもなりません。

DCの中心的な給付は60歳以降に受け取る老齢給付金ですが、そのほかに障害給付金、遺族給付金、脱退一時金の各給付があります。これらの給付の支給要件は下記のとおりです。

 

DCの給付の種類と支給要件

給付の種類 支給要件
老齢給付金
  • 60歳に達したとき(資格喪失年齢が60歳超で定められている場合は当該年齢に達したとき、または60歳以降で退職したとき)。
  • ただし通算加入者等期間(注)が10年未満である場合には、下記の年齢に達するまで老齢給付金を受け取ることはできない。

・8年以上10年未満:61歳
・6年以上8年未満:62歳
・4年以上6年未満:63歳
・2年以上4年未満:64歳
・2年未満:65歳

障害給付金
  • 傷病によって以下のような障害状態に該当したとき。

・障害基礎年金の受給者
・身体障害者手帳(1級~3級の者に限る)の交付を受けた者
・療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた者
・精神保健福祉手帳(1級及び2級の者に限る)の交付を受けた者

死亡一時金
  • 加入者または運用指図者が死亡したとき(遺族に支給)。
脱退一時金
  • 60歳未満で加入者資格を喪失(退職等)し、かつ以下のすべての要件を満たしたとき(例外的な給付)。

・他のDC(企業型)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者または運用指図者でないこと
・資産額が15,000円以下であること
・最後にDC(企業型)の加入者資格を喪失してから6か月を経過していないこと

注 :60歳到達時におけるDC(企業型)とiDeCoの加入者及び運用指図者であった期間を通算した期間。他制度から資産を移換している場合は当該制度の加入期間等も合算する

上記のとおり、老齢給付金は遅くとも65歳には支給可能となり、年金、一時金、またはこれらの組み合わせにより受け取ることができます(法律上は年金での支給が原則であるが、通常は一時金での支給を選択できるようにしている)。

 

老齢給付金の支給方法

支給方法 給付の内容
年金(分割取崩)
  • 資産の運用を継続しながら、あらかじめ定めた期間及び方法により、定期的に(年1回以上)取り崩していくことで年金を支給する。
  • 年金の支給予定期間は5年以上20年以下の範囲で定める。5年刻み、1年刻み等の選択肢を設けることも可。
  • 各年の年金額を柔軟に設定できるような設計も可能だが、年金額は支給開始時の残高の5%以上50%未満の範囲で設定する必要がある。
年金(年金商品の購入)
  • 生命保険会社等が提供する年金商品の購入により一定の年金額を支給する(運用商品の中に当該商品がラインナップされている場合に限り選択可能な支給方法)。
  • 年金の支給期間は5年以上20年以下の確定年金または保証期間付終身年金として各商品ごとに定められる。
一時金
  • 請求時の資産を一括で支給する。

給付の支払いは本人からの請求に基づいて行われ、最長70歳になるまでは給付を請求せずに(資金を引き出さずに)運用を続けることができます。70歳になると自動的に裁定が行われ、あらかじめ定めた方法(通常は一時金)により給付が支払われます。なお、それぞれの給付に対する課税の内容は下記のとおりとなっています。

 

DCの給付に対する課税

給付の種類 課税の内容
老齢給付金(年金支給) 雑所得として課税。公的年金等控除の対象となる。
老齢給付金(一時金支給) 退職所得として課税。退職所得控除が適用される。
障害給付金 非課税
死亡一時金 相続税として課税。ただし法定相続人1人当たり500万円までは非課税となる。
脱退一時金 一時所得として課税。

【制度改正の動向】

DCに加入していた外国籍人材が帰国する場合、現行制度では資産額が15,000円以下という非常に少額でなければ脱退一時金を受け取ることができず、またiDeCoに加入して積み立てを継続することもできないことから、次期法改正にて通算の掛金拠出期間が5年未満である等の要件を満たした場合は脱退一時金の支給対象とする改正案が示されています。
また、老齢給付金の受給開始可能時期については、公的年金の繰下げ可能期間の拡大にあわせて75歳まで延長する方向です。
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