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その人材確保策は人材流出を招いていない? 「入りやすさ」と「出やすさ」は表裏一体

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その人材確保策は人材流出を招いていない? 「入りやすさ」と「出やすさ」は表裏一体

最近「アルムナイ採用」や「カムバック採用」を導入する企業が非常に増えているように感じます。これらの制度は自己都合により退職した社員を再び雇用することで、多様な人材を確保することを主な目的としています。今年に入ってからだけでも、日本通運や三菱電機、四国電力などがカムバック採用の導入や拡充・強化を打ち出しています。

以前は自己都合による退職者は「裏切り者」のように扱われ、再雇用を意味する「出戻り」に良いイメージはありませんでした。しかし、労働力人口の減少により採用が難しくなる中、一度退職した社員にも門戸を広げることで人材を確保するとともに、社外での経験を活かして新たな活躍を期待するされるようにもなってきています。

ところが、カムバック採用の導入が逆に人材の流出につながっているという声も聞かれます。「いつでも戻ってこれる」ことが転職の心理的ハードルを下げてしまい、辞める人が増えてしまったのです。

一方で、確保した人材を引き留めようと、社員が辞めにくい・辞めると不利になるような仕組みを設けることで、今度は新たな人材の確保が難しくなる、ということもあります。

私はコンサルタントとして数多くの退職金制度を見てきましたが、多くの会社では長く勤めた人や定年まで勤めた人に有利な設計になっています。極端なケースだと、定年前に退職した場合は、勤続年数が長くても金額が一律半分になってしまうような制度もあります。

会社の側も社員の側も終身雇用を前提に考えている場合は、長期勤続者に手厚い仕組みはお互いにメリットがあり、合理的です。しかし、転職が一般的になり、個人の選択肢が広がっているいま、中途退職者に対してペナルティを課すような仕組みがあるところには入社をためらってしまうでしょう。

同じようなことが企業の年金基金への加入についても言えます。確定給付型の企業年金には、個々の企業や企業グループが独自に実施する制度のほか、多数の企業が集まって共同で実施する「総合型基金」があります。独自の年金制度を持つことが難しい中小企業が多く加入しています。

総合型基金への加入の是非について相談を受けたときに、私が着目するポイントの1つが「脱退のしやすさ」です。これから加入しようとしているときになぜ脱退のことを考えるのかというと、長期的には年金基金の運営状況や会社の経営状況などは将来大きく変化していく可能性があり、今は加入することがベストな選択であったとしても将来にわたってそうあり続けるとは限らないからです。

過去には、年金基金から脱退しようにも多額の追加負担が生じたり、手続き上の問題などで容易に脱退することができず、悩まれている企業を数多く見てきました。基金からの脱退に強い制約がかかってしまうと、時に経営の大きな足かせとなってしまうことがあります。そのため、将来環境が 変わったときに脱退可能であることは、加入にあたっての重要な判断材料だと考えています。

こうした「年金基金と加入企業」の関係は、「組織と個人」に置き換えて考えることができます。出やすいところは入りやすい、出にくいところは入りづらい、「出入りは表裏一体」ということです。ですから、カムバック採用に限らず人材の確保や引き留めのための施策には、逆に人材の流出を招いたり、採用を難しくしてしまう側面があるということを認識しておくべきでしょう。

では、そうした中で人材確保のために本当に必要なものは何でしょうか。それは、出入りが自由な状態であっても人材が集まり、定着し、一旦出ても戻ってくるような魅力を備えているかどうか、ということに尽きるのだと思います。

その魅力がはっきりしないまま色々な施策を打っても、社員や求職者にあまり響かなかったり、かえって逆効果になりかねません。人材の確保や定着のための施策を検討するときには、まず社員目線で自社の魅力がどこにあるのか、どこに魅力を感じてほしいのかを見定めたうえで、そこに磨きをかけていくことを考えてみましょう。



著者 : 向井洋平 (むかい ようへい)

向井洋平

クミタテル株式会社 代表取締役社長

1978年生まれ。京都大学理学部卒業後、大手生命保険会社を経て2004 年にIICパートナーズ入社。2020年7月、クミタテル株式会社設立とともに代表取締役に就任。大企業から中小企業まで、業種を問わず退職金制度や高年齢者雇用に関する数多くのコンサルティングを手掛ける。日本アクチュアリー会正会員・年金数理人、日本証券アナリスト協会検定会員、1級DCプランナー、AFP。「人事実務」「人事マネジメント」「エルダー」「企業年金」「金融ジャーナル」「東洋経済」等で執筆。著書として『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』(経済法令研究会)ほか。

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